箱根初出場の駿河台大 徳本監督の熱い言葉
年明け2日、3日の第98回箱根駅伝で、初出場にして最後まで襷をつないだ駿河台大学。
その原動力となったのが、チームを率いる徳本一善監督が選手にかける熱い言葉でした。
◆徳本監督のチーム作り
徳本監督は現役時代、法政大学のエースとして箱根駅伝に出場。しかし、4年生の時には肉離れのため途中棄権となり、襷をつなぐことができませんでした。
それから20年。今度は監督として駿河台大学を箱根初出場に導きました。
そんな駿河台大学のチームウエアのデザインは徳本監督が考案。
「スイミーという絵本、大きな敵を倒すのに小魚たちが集まって大きく見せて退治しようみたいな。ほかの大学さんって本当に大きな敵なんで、僕からしてみれば」と、小さな戦闘機が集まったデザインが施されています。
◆初出場の箱根“起爆剤”は31歳
大舞台に向け、徳本監督がチームの“起爆剤”と語るのが、31歳の4年生・今井隆生選手。心理学を学ぶため、中学校の体育教師を休職し、駿河台大学へ編入。かねてからの夢だった箱根駅伝で、4区に起用されました。
その今井選手が襷をつなぐ5区には、教師時代の教え子・永井竜二選手(3年)。
かつての教え子に襷をつなぐ今井選手は、「2人だからこそやっぱり粘れる部分は絶対あると思うので、最後それを追い風にして、笑顔で襷リレーできたらと思っています」と、特別な思いを胸に箱根路に挑みました。
◆初の箱根 監督のゲキ“教え子”との襷リレー
2日の往路で19位で襷を受けた今井選手は、10キロ付近で専修大学に抜かれ、20位に後退。
すると監督車から徳本監督が鼓舞。「今井、お前意識あるんだろな。何か見せないといけないんじゃないの」
さらに残り3キロ、苦しい表情の今井選手に、「ラスト3キロだからね。お前が思い残すことはここに全部おいていけ。ここからは気持ち。あきらめないことだけがお前の“とりえ”なんだからいくぞ」と、激励。
今井選手も「シャッ」と声を上げ、勢いを戻します。そして残り1キロ、徳本監督から最後のゲキが飛びます。
「お前の残された時間はあと3分だよ。しっかり見届けてやるよ。2年間楽しかったこと思い出せ。俺は楽しかったぞ。1秒大事にしろ。永井に1秒でも楽させないと」
最後の力を振り絞り、教え子の永井選手に襷をつないだ今井選手に対し、徳本監督は「2年間ありがとう。俺に謝ってきたらぶっ飛ばすから」と感謝。
その言葉に涙を見せた今井選手は、「本当にここに立つまで、監督といろいろあった。最後監督に『ここに置いていくものを残すな』と言われて、監督があってこの挑戦ができたので、本当に感謝しかないです。徳本監督に学んだ1番弟子として、4月1日からこの思いを胸に教壇に立ちたいと思います」と、涙ながらに感謝と決意を語りました。
今井選手から襷を受けた教え子の永井選手。監督からの「ここがスタートだからね。ゴールじゃない。最後まで胸はってゴールするよ。しぼり出さないと来年につながらないよ」という言葉を受けて、往路20位でフィニッシュ。
襷をつなぎきり「まさか本当につなげるとは思っていなかった。人生で奇跡って呼べるものは数少ないと思うので、本当にいい経験になった」と、特別な思いを口にしました。
その夜、寮に戻った今井選手を訪ねると、永井選手に電話している姿が。
今井「もしもし」
永井「もしもし。お疲れ様です」
今井「お疲れさん。本当に襷つなげて、俺はうれしい部分もあった」
永井「よかったです」
今井「ここからが永井にとって本当の戦いだと思うので、応援しているので頑張ってください」
永井「頑張ります」
◆襷をつなぎきった笑顔の駿河台
そして翌日、繰り上げスタートにならず、最後まで襷をつなぎ、総合19位、笑顔でフィニッシュした駿河台大学。平成以降の初出場校では、史上4校目の快挙となりました。
熱い言葉で選手を後押しした徳本監督は、「選手はすごいキツそうだなと思いながら、俺も20年前はそっち側だったなと思いながら、感慨深く選手たちを見ていました。遊び倒したので楽しかったです」と、充実した笑顔を見せました。