契約延長の長谷部 練習が日々愛おしい
サッカー元日本代表の長谷部選手が所属するドイツ1部リーグ、フランクフルトは今月9日、来年6月までの1年契約を、新たに長谷部選手と結んだことを明らかにしました。
長谷部選手は日本時間の10日夜、所属クラブで会見を行い、契約更新に対する考えや、今年で発生から10年を迎える東日本大震災への思いを語りました。
※会見全文の前編です。
ーー数年前から今季がラストといっていた中で、今コンディションもパフォーマンスも上がってきている要因とは
長谷部
「自分自身驚いている部分がある。ここ数年はずっとリベロでプレーしてきて、中盤でのプレーはインテンシブも高くきつく感じることがあった。しかし監督が試合の始めから僕を使ったりなど、さまざまな経験が今の良い状態につながっている。既成概念として年を取ればプレーの質が落ちるということが頭の中にあったが、それも自分の中で少しずつ変わってきている。色々な経験から得られる落ち着き、サッカーを知ることなどが良い方向に持っていってくれている」
ーー今シーズンプレーする中で、いつ来季もプレーできると感じたのか
長谷部
「今年に入って中盤でプレーして、自分の中でこんなにできるんだっていう感覚はここ1、2か月のこと。チームとしても若返りをしなければいけないという話はあったし、自分自身も感じていた中で、自分がまた中盤で出て、チームで存在感を出せると思っていなかった。契約更新の話もここ数週間の話だった。僕自身は契約更新をする・しないという焦りは全くなく、なるようにしかならないと思っていた。ただサッカーをする喜びと楽しみを日々感じていた。そこに(来季のプレー)関しては焦りもなかったし、この数週間で状況が変わったという感覚」
ーー改めて今感じる長谷部選手にとってのサッカーの魅力とは
長谷部
「サッカーの楽しみ、プレーする喜びは若い頃とは違う感覚。若い頃は楽しい感覚だったが、今に関していえば自分がプロの高いレベルでできるかできないか、引退する年齢に近づいてきている中で、サッカーをそういうプレッシャーとともに楽しんでいる感じ。プレッシャーがあるからこそ練習を日々愛おしく、サッカーを大切に思える。終わりが見えるとより今の時間サッカーができるという喜びをかみしめている」
ーーそのプレッシャーが今のプレーに及ぼした変化はあるのか
長谷部
「今はある意味、開き直っているというか、背負うものはクラブだったり、もちろんチーム内でのライバル競争もあるので、そういうプレッシャーもある。でも、ここ数年は今シーズンが最後だと思いながらシーズンをスタートしているので、自分で勝手に肩にのせていた重りは取りながら、気分良くプレーできている。経験や落ち着き、こんなにもサッカーが上手くいくんだというのも感じているし、この年になっても新しい発見だらけで楽しい」
ーー東日本大震災から10年経った今、被災地への方々に向けてコメントをお願いします
長谷部
「僕自身も昨年はコロナの影響で行けなかったが、2011年から2019年まで毎年南三陸の方に足を運ばせていただいた。現地に行かないと分からないこと、現地の方々と話をして感じることはやっぱりあって、もちろんインフラなど10年が経って復興したものもあれば、被災地の方の心という部分ではまだまだ時間が必要であったり、被災していない僕らが言葉を発するというのはすごく軽く聞こえてしまうので、僕自身言葉に詰まる部分もあるが、この10年という時にもう一度被災者・被災地に思いを寄せて、僕もドイツで遠く離れているが10年前のことは忘れていないですし、個人的にも継続的に被災地に足を運んで何か感じさせていただきそれを発信できたらいいなと思っている」
ーー契約更新に対しての周りの反応は
長谷部
「家族は基本的にほとんど何もいわない。僕が決めたことに対してついてくるというスタンス。小さなお祝いとして妻と娘がケーキ作ってくれた。家庭は変わらず穏やかな日々を過ごしている。チームではこの年齢になって契約を延長するとここ数年毎年だが、基本的には常に冷やかされる。いつまでやるつもりだよ、そんな稼いでどうすんだよといわれる。でも若い選手、僕の下の年齢だと30代や20代前後の選手も多いので、一緒に生活しながら勝負の世界にいられる幸せは何物にも代えがたいので今の時間をすごく楽しんでいる」
※会見は後編に続きます。
写真:(C)Eintracht Frankfurt