体操男子8年ぶり団体金の快挙も「どこか喜びきれない」ライバル国のメンバー事情
■ミスをカバーし金メダル獲得…それでも口にした意外な言葉
4種目めの跳馬では、空中感覚と脚力に長ける南一輝選手が高難度・ロペスの着地を止め、チームトップの15.000をマーク。チームを勢いづけ、暫定1位に躍り出ます。
最終種目の鉄棒では3選手が着地を止め、全体トップの41.932をマーク。合計255.594で8年ぶりの世界選手権金メダルを決めました。
試合後のインタビューで選手たちは口々に喜びを表しましたが、チームのキャプテンを務める萱選手からは「どこか喜びきれない自分がいる。来年だぞ」とパリ五輪に向けて油断を見せない発言が。
■長年のライバル中国は、自国開催のアジア大会を優先
日本にとって長年のライバルとして挙げられるのは中国。北京・ロンドン五輪で団体連覇を果たし、2022年の世界選手権でも団体金メダルを獲得しています。
今大会では蘇イトク(イは火へんに韋、トクは徳の異体字)選手が鉄棒で2度落下。銀メダルを獲得した中国は日本との差が『1.8』であったため、落下による『2.0』の減点が勝負を分けたとも言えます。
それに加えて無視できないのが、中国のメンバー事情。
実は世界選手権直前に行われていたアジア大会に、2021年の個人総合金メダリストの張博恒選手、東京五輪個人総合銀メダリストの肖若騰選手、五輪と世界選手権を合わせ平行棒で4度世界一に輝いている“平行棒の神”こと鄒敬園選手らが出場。自国開催のアジア大会を優先させる施策をとっていました。
アジア大会に出場した選手で世界選手権に出場したのは、ケガで離脱した選手に替わった林超攀選手のみ。今大会はベストメンバーではない布陣でした。
また今回の団体決勝、日本選手の演技構成は、予選から難度を抑えた安全策も随所に見られました。当然、チームメートの演技内容や、ライバルとの点差を考慮し、確実に金メダルを狙ったことは結果を見れば作戦勝ちと言えます。しかし中国のメンバーを鑑みると、パリ五輪では各選手が持っている最も難しい構成が求められ、その中でいかに失敗しないか、という点がさらに重要になってきます。