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城西大は手術から“復活のエース”が杜の都を駆ける 支えてくれた仲間のために2度目の全日本へ

2023年10月29日 8:00
城西大は手術から“復活のエース”が杜の都を駆ける 支えてくれた仲間のために2度目の全日本へ
5月には手術を受けた城西大のエース高橋葵選手
第41回全日本大学女子駅伝が29日正午すぎに号砲を迎えます。昨年4年連続でシード権を獲得した城西大学を引っ張るのは、朝がちょっぴり苦手な2年生の高橋葵選手です。

仲間から「大事な大会の前はだいたい寝坊します」「駅伝当日の朝も電話で起きましたー」といじられると、高橋選手は「黒歴史ー!やめてくれー」と楽しそうに練習に向かいます。

昨年、大学駅伝デビュー戦となった関東大学女子駅伝では、1年生ながら区間賞を獲得。去年の全日本ではエース集う最長5区を任され、今季もエースとして期待されていました。

■突如おそった病に「死ぬかと思いました」苦しみから救った仲間の存在

順調に見えた大学生活。しかし、「2月後半からうまく走れなくなってしまって。原因不明みたいな…」とある異変が彼女を襲います。当時の練習日誌には、「胸が苦しくなり呼吸が速くなる」「意識が飛んで立ち止まってしまう」などの症状が書かれていました。

近くで見てきた同期の盛合凜華マネージャーは、「『葵!』って声かけても反応しないので、声かけに(近くまで)走って行って、『葵わかる?』って言っても『わからない』って言うのがけっこう続いて…」と当時の様子を明かします。

「走っていて、ぞくぞくしたり、気持ち悪くなってしまったり…」と高橋選手は苦しみます。突然襲った意識障害は、海綿状血管腫という病気。脳の血管がつまり、てんかん発作などを引き起こす病です。

5月に手術に臨みましたが、高橋選手は「死ぬかと思いました、想像していたのと違う。すごく痛くて苦しかったので、手術しない方がよかったのかなって。この先また普通に元気に生きられる自分が想像できなくて、もうだめなんじゃないかなって思った時もあって」と打ち明けました。

再び走ることができるのか。どん底で苦しむ中、支えとなったのは、プライベートもいつも一緒に過ごす、同期の存在だったといいます。

闘病中、写真にメッセ―ジを添えたカードが届きます。「メッセージカードをみんなからもらって、すごく勇気づけられた。すごくうれしくて、涙が止まらなくて」これが何よりの励みとなりました。

仲間たちは「『がんばれー!!』、『お願いだから早くよくなってー!!』って」と祈るような思いでメッセージを送ったことを明かします。高橋選手は「この2年生の存在があったから、絶対帰ってくるんだという気持ちで手術に臨めた」と当時を振り返りました。

■復活のエース、走る喜びを胸に2度目の全日本へ

手術からおよそ3か月経った8月。高地での夏合宿に励むチームの中に、高橋さんの姿がありました。

赤羽周平監督は「今は大きな異常なくやれている。苦しい中で頑張れた原動力の2年生選手3人と全日本を走りたい」と話し、その姿を見つめます。

練習が始まると、高橋選手は先頭でチームを引っ張ります。同期でキャプテンの金子陽向選手と共に、最後まで走り抜き、設定タイムもクリアしました。走り終えると、その目には思わず涙が。

金子選手は「泣いたの?」と一言声をかけ、高橋選手は「嬉しい、一緒に走ってくれる人がいるっていうのは」と涙ぐんで答えると、金子選手は「そうだよね、本当にそうだよね!」と明るく返しました。

仲間の支えで驚異的な回復を見せた高橋選手。迎えた9月、学生トップランナーが集う日本インカレで、各校のエースが出場する5000メートルにエントリーします。これが約9か月ぶりの復帰レースでした。

序盤から先頭集団につける攻めの走り。終盤は、苦しい場面もありましたが、応援を背中に受け、最後の力を振り絞って6位入賞でフィニッシュ。レース後、テレビ電話で仲間と「お疲れー!おめでとう、あおちゃん!」とねぎらわれると、高橋選手も満面の笑みで「ありがとう!」と伝えました。

手術からわずか4か月。2年生の仲間は、奇跡的な復活を遂げた高橋選手に勇気づけられています。

兼子心晴選手は「葵がいるだけで心強いというか、みんなを笑顔にしてくれるので。帰ってきてくれてすごくよかったと思う」と話し、盛合マネージャーは「葵がいてくれると、チームとしても安心して任せられるというか、全員で戦っていけたらいいなと思う」と前を向きます。また、金子選手は「葵が間に合ってくれてよかった、さらにレベルアップした城西で(全日本に)臨めたらと思う」と意気込みました。

苦難をこえ、帰ってきた不屈のエースは最長区間5区を走る予定。3区には兼子選手、6区には金子選手と、支えてくれた2年生たちは順当にエントリー。高橋選手は「支えてくれた3人の存在があったから乗り越えられた。自分の走りでチームに貢献できたらいい」と仲間とともに杜の都を駆け抜けます。

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