未就学児からパリ五輪種目「ブレイキン」を安全に!ライセンス取得した指導者
パリオリンピックの新種目ともなったブレイキン。子どもたちが安心して挑戦できるように。熊本で初めて安全指導のライセンスをとった指導者を取材しました。
ブレイキンのダンサー、熊本市の村上智史さん。
■熊本のダンサー 田中大揮さん
「熊本のブレイカーの顔的な存在ですね」
■熊本のダンサー 大内裕貴さん
「アニキみたいな存在ですよね。下の世代を今めっちゃ活性化されている第一人者っていうイメージです」
その村上さんが、今年1月、ダンススタジオをオープン。熊本で初めてブレイキンを未就学児から教えるキッズブレイクダンスクラスを始めました。
■村上智史さん
「一般的にみて、ブレイクダンスを小さい時からやらせるのは怖いって親は思うと思うんですよね。小さな子にブレイキンを教えたいというよりは、始めたいけど危ないから始められないというのが僕の中では良くないなと思ってるんですよね」
パリオリンピックの新種目ともなり、近年、子ども達の間でも人気が高まっているブレイキン。ただし、ちゃんと練習を積まないとケガにもつながりかねないアクロバティックな技も多く含まれています。
■山本明路さん(5)
「かっこいいのできるようになりたい」
■角田栞奈さん(7)
「頭で回ったりするとかが好きです。痛いけど頑張ってやると楽しいですl」
子どもたちはやる気満々。しかし、親は….。
■母・角田瞳さん
「大丈夫かな…頭打たないかなとかですねー」
■母・上田梢さん
「家でも練習していたら、手とか結構ゴキッとなったりとか、ドキドキ、ヒヤヒヤしながら見てます」
■村上智史さん
「僕がブレイクダンスを始めた時は、ケガしてナンボみたいな感じだった。傷だらけになって、血だらけになりながら練習してたんですけど、まあ今、僕も子の親になって思うんですけど、レッスンに通わせて子どもがケガして帰ってきたら、どんな教え方してんだよってやっぱり思うじゃないですか。だから、やっぱりそのケガのリスクを理解して教えるっていうのは、インストラクターとしては重要だなと」
そこで村上さんが門を叩いたのは、NPO法人ブレイクダンス青少年育成協会。全国で唯一、ブレイクダンスのインストラクターに安全指導のためのライセンスを与える団体です。設立したのは、石川県で20年指導をしている草野真澄さん。長年、ブレイキンの指導者にも資格制度が必要だと感じてきました。
■草野真澄さん
「ヘッドスピンなど相当危険ですね。一歩間違えると首の骨は折れるし、やりすぎたら頸椎ヘルニアにはなりますし、やっぱり子どもたちに楽しい事でケガと向き合っていかなきゃいけない人生とか僕たちも嫌なので」
実技指導と試験官を務めるのは新垣和泰さん。ブレイキンの日本を代表するダンサーの1人です。
■新垣和泰さん
「ライセンスを作るっていうのが一番安全性を基準に考えていたので、僕らの役割はそういうのをしっかり構築してあげることなのかなと」
■熊本のダンサー 田中大揮さん
「カズヒロさんっていう方は、もうほんとレジェンドっていうか…その方から学んでるっていうのはかなり貴重だと思います」
レジェンドから学んだ、安全な指導方法。長年ブレイクダンスをやってきた村上さんにとっても、目からウロコが落ちるような体験だったといいます。
■村上智史さん
「チェアーっていう技があるんですけど、その技を3歳児や4歳児に教える時に、いきなり無理なんですよね。だから補助のやり方があって、これは僕は教えてもらった時、結構衝撃を受けて、全く知らなくて、そんな補助があるってことは」
(講習の現場)
■講師「…で、あとはこっちから押さえてもらうのが一番安全なやり方です」
■参加者「すげえ…」
(熊本のスタジオ)
■村上智史さん
「こないだ教えたベビーチェアを教えまーす」
指導者資格のA級ライセンスを取り、熊本に帰って、早速実践です。
■村上智史さん
「押さえるよ、はい、そうです」
必要なか所を補助して、子どもたちに、技ができた感覚を覚えてもらいます。すると…
■山本明路さん(5)
「ねえねえ、ベビーチェアできたよ」
■村上智史さん
「お、まじでできるやん!(パチパチパチ)拍手!」
何と、すぐにできるようになりました。
■村上智史さん
「お、すげえ!完璧やん!」
■上田紺護さん(6)
「難しそうとは思った。足を上げるところが難しかった」
もし、この補助の仕方を知らなかったら?
■村上智史さん
「かなり時間がかかたと思うんですよね。何か月もかかったと思います。全くできてなかったんで」
(レッスン)
■桑原結さん(7)
「これ俺は一生無理かもしれん」
こういう子にも…。
■桑原結さん(7)
「練習してきたんだけど、無理かもしれん」
■村上智史さん
「無理かもしれん?じゃあ、先生の補助いる?」
■桑原結さん(7)
「先生のポニョ?」
■村上智史さん
「…もういいって!大喜利じゃないんだけんね!」
ポニョ、いや、補助をして、身体のどこに力を入れたらいいか、要領をつかんでもらいます。
■村上智史さん
「やっぱり脚で体重を支えるのと違って、手で支えるっていうのが慣れていないので、初めてやる子は手首を痛めたりとか、そういうのがあるので、注意をしながら」
■桑原結さん(7)
「多分できそうじゃないです、足が浮く所が難しいです」
(仲間ができているのを見て)
「(拍手)まあまあ悔しいです」
でも、その一週間後…
■村上智史さん
「みんな見てケイ君、みんな見て!」
何と、できるようになりました!
■村上智史さん
「すごい!」
■桑原結さん(7)
「これから百倍頑張る!」
■母・桑原紫織さん
「涙が出るくらいうれしいですね。一緒に成長した気分になります」
■母・上田梢さん
「オリンピック競技にもなったから、やるからには上を目指してほしい」
■母・角田瞳さん
「本人がもっともっとって思うんだったら応援しようと思ってます」
■父・山本光彦さん
「ヘッドスピンをやってほしいですね、見たいです」
■村上智史さん
「ストリートダンスの色んな他のジャンルありますけど、その動き自体は、うまい下手は置いといて、何となく真似してできたりするんですけど、ブレイクダンスだけはまねてできないんですよね。これができるようになったから、次はこの技をと練習して習得するっていう、この習得するっていう感覚っていうのはブレイキンにしかないんですよね。それが難しくもあり、醍醐味でもあるなという…じゃ安全面どうなんだとか、指導者のスキルっていう所も求められる時代になってきた」
ブレイキンは比較的新しいダンスなので、練習の仕方や教え方の手順などの基準がありません。どういうケガが起こりやすいかといった経験則も不足しているそうです。五輪種目採用で競技人口が増える中、指導の現場ではライセンスの必要性が高まったということです。