バスケ協会批判に波紋広がる 八村選手苦言の真相 現地の専門記者に聞く
この夏のパリオリンピックで日本代表のエースとしてプレーした八村塁選手が日本バスケットボール協会に苦言を呈し、波紋を広げています。
発言に至った経緯について八村選手を10代の頃から取材しNBAをよく知る人物に話を聞きました。
事の発端となったのは今月14日。バスケットボール協会に対する八村選手の発言でした。
■八村塁選手
「僕としてはあまり 言いたいことではないんですけど、日本代表のやり方というか、そういうところがあまり僕としては 嬉しくないところがあって」「強化というか、子ども達のためとか そういう日本のバスケを強くしていくためにやってきた感じは僕はあったが 日本代表の中でその目的ではなく少し僕が思うには お金の目的があるような気がする」
慎重に言葉を選びながら、代表チームの活動の在り方について苦言を呈しました。
この事態を受け日本バスケットボール協会も八村選手の代理人に聞き取り調査を行い今月20日、説明の場を設けました。
■日本バスケットボール協会 渡辺事務総長
「オリンピック前の代表戦、その前後を含めてコミュニケーションを取らせていただいた中でハッキリ言うと、我々の中でミスコミュニケーションがあり、彼に負担をかけてしまったということがある」
八村選手から飛び出した協会批判。その真意はどこにあるのか。
八村選手を10代の頃から取材し30年以上にわたって現地でNBA取材を続ける宮地陽子さんです。
先の記者会見にも出席していた宮地さんが感じたこととは。
■宮地陽子さん(ロサンゼルス在住のスポーツライター 30年以上にわたりNBAを現地取材)
「八村選手からすると、ずっと前から言っていたのに 自分が出なきゃいけないような。ファンに対して、すごい申し訳ないような、そういう立場に立ってしまった。八村選手からすると、テレビ局だったり、スポンサーだったり、お金を払っている方への配慮の方を自分のコンディショニングより優先したというふうに、受け止めたんだと思うんですね」
八村選手が「お金目的」と批判した協会の対応。
その一例がパリオリンピック前に行われた国内での強化試合です。
八村選手はコンディション調整のため早々に「出場できない」と協会に伝えていたにも関わらず協会が欠場を発表したのは試合当日でした。
協会側は、「商業目的で八村選手欠場の発表を遅らせたことはない」と釈明していますが、こうした対応に八村選手は不信感を募らせたとみられます。
■宮地陽子さん
「代表活動のためにスポンサーが必要だったり、色々お金が必要だったりするのは分かるけれども、思いきりプレーできて、チームが強くなれば自然とお金は入ってくるって、そういう循環ができるはずなのに、その選手を大事にする部分を忘れているんじゃないかっていうのが八村選手の意見、提言だったと思います」
そして、もう一点。八村選手が指摘したがチームの指導陣についてです。
■八村塁選手
「やっぱり日本代表に相応しいコーチ、今まで僕らは日本代表の男子のトップのプレーヤー達なので、男子のことを分かっている、プロとしてもコーチをやったことがある、そういう人がコーチになってほしかった」
協会はホーバス監督とともに4年後のロサンゼルスオリンピックを目指す方針としています。
この指摘については。
■宮地陽子さん
「八村選手から見ると、トムホーバスHCは女子のヘッドコーチとして、ずっとやってきた方で、本当に男子のコーチができるのかという、ちょっと懐疑的な見方をしているみたいで、ホーバスHCの練習とか、そういったものに参加してみて、ちょっとこれは違うと思った面もあったんだと思います」
波紋を広げた協会への苦言。
その根底には日本のバスケットボール界への思いがあると宮地さんは指摘します。
■宮地陽子さん
「八村選手が本当に代表のことを考えている。日本代表を大事にしていて、日本が強くなるっていうことを、八村選手なりに考えている。スケジュールの問題とかでワールドカップに出場できなかったりとか、そういったことはあるけれども、八村選手なりにアンダー世代の時から代表のユニフォームを着て、国際大会に出場してきた日本代表にはすごく関わりが深い選手なので、そういったことに対する自負もあるので、自分はこれだけやってきた。その日本代表をこれからも、もっと強くしていきたいっていう気持ちが、その協会に対するいろんな意見を言うもとには、あったというのをすごく囲みの取材でも感じました」
■八村塁選手
「日本代表を子どもたちも見ているので、そういうところで僕もNBAで頑張って、日本のバスケを強くなるように頑張っていきたい」
八村選手は、おとといの試合後にも「プレーヤーファーストの精神が見られない。そういう方針の日本代表ではプレーしたくないしそういう団体とはやりたくない」と話すなど改めて協会に対する不信感を露わにしました。
協会との間に亀裂が生じ今後の代表活動への参加が見通せない中、八村選手が再び日本代表のユニフォームを着ることはあるのでしょうか。
■宮地陽子さん
「その質問を、実は会見で私もしたんですけど、八村選手としては出られないという風に、協会の方が変わらないと出られませんという風に言ってました。ただ、出たいという気持ちは今でも持っているというのも言っていたので、そこもすごく大事なところ。八村選手は単に協会に文句を言って突き放してるんじゃなくて、本当は出たいんだっていう気持ちも語っていました」
現地で取材を続ける宮地さんは久しぶりに八村選手の心の声を聞いたと話していました。
代表のユニフォームを着てプレーする姿を再びみられることを願っています。