【特集】相次ぐクマ被害をどう減らせるか…秋田と北海道の現状と専門職員の奮闘
北海道に生息するヒグマは、本州に生息するツキノワグマに比べると、身体はだいぶ大きく、体重は2倍から3倍あるといいます。
このヒグマも、ツキノワグマと同じく、市街地への出没や人への被害が社会問題となっています。
一方、去年全国で発生したクマによる人身被害のほとんどはツキノワグマによるもので、その約3分の1にあたる70件は、秋田で起きました。
被害を減らすために、秋田では県庁に、北海道では小さな村に、クマ対策を担う専門職員がいます。
最前線でクマと向き合う職員の奮闘を追いました。
渡邉颯汰さん
「利用者がいるのであれば、バンガロー、結構(クマが)通りそうだなと思ったんですけど、サクラもあるし」
近藤麻実さん
「沢になって(クマが)動きそうな感じがするよね」
今年度2人が増員されて、3人体制となった、県のクマ専門職員。
渡邉さん
「クマが来る木を伐採しておくのはひとつの手ですよね。ここは本当にクリが多いですし」
例年、クマの目撃が相次ぐ、秋田市仁別の公園で、どのような対策が有効か助言を求められました。
県の専門職員が指摘したのは、クマを寄せ付ける可能性のある、ゴミの管理です。
近藤さん
「(クマが)開けられないにしても、においがしてしまって、近くに来る可能性があるので、そもそも置かないで」
4年前、相次ぐクマ被害を受けて県に設置された、ツキノワグマ被害対策支援センター。
その核となるのが、専門知識を持った職員の採用でした。
近藤さん
「ずっと東北のクマの事故が多いのを気になっていて、私が現場にいたら絶対に現場検証に行くのになって、本当に思っていたんですよね。なので、今回この話を聞いた時には、『はい!行かせてください』って」
獣医師の資格も持つ、近藤麻実さん。
採用前は、北海道の研究機関で、クマの調査・研究に携わっていました。
近藤さん
「ツキノワグマから走って逃げようとしたらダメです」
「いくら足の速い人が走っても、ツキノワグマからは逃げ切れません」
「正しく恐れる」をモットーに、各地で開いてきた出前講座。
これまでの4年間で、約1万5千人がクマの生態や対策を学びました。
去年、人里近くで相次いだ、クマの出没。
県内では、全国最多となる70人がクマに襲われるなどしてケガをしました。
近藤さん
「今年はものすごく出てきておりますので、いつでも・どこでも・誰でもクマにあう可能性が高い」
近藤さんがこれまで培ったクマの専門知識がいかんなく発揮されているのが、被害の分析と、その分析をもとにした呼びかけです。
近藤さん
「これまで秋田県で起きたクマの事故を分析してみると、割合はこんな感じです。もうほとんどクマがびっくりしちゃって起きている事故。もう近くで人にはって会って、わーびっくり、逃げなきゃ、倒して逃げるっていう。なので、クマにここに人がいますよっていうことを教えてあげてください。避難している時間もない、もうやられそう、ダメだなってなった時は、これ、防御姿勢というのがあります。顔や頭を守る、そんなポーズです。クマの攻撃は首から上に来ることがすごく多いです」
人が襲われた場所は、直接確認。
可能な限り、被害者からも状況を聞き取り、再発防止の呼びかけに繋げています。
近藤さん
「しっかり調べれば、やっぱりこういうことだったよねということが分かってくるので。どう避けていいかも分からない、どんな事故か分からないと対策が立てられないじゃないですか。こちらに来て、調査をさせてもらうようになって、かなり私も自信を持って呼びかけができるなっていうふうに思います」
北海道に生息する、ヒグマ。本州に生息するツキノワグマに比べると、身体はだいぶ大きく、体重は2倍から3倍あるといいます。
高齢化などにより、対峙するハンターが減少する中、北海道で、ある取り組みが行われています。
札幌から約90キロ離れた、北海道占冠村。
この村には、ヒグマに向き合う専門の職員がいます。
ハンターの資格を持つ、浦田剛さん。
浦田さんは、職務としてクマの駆除を担う「ガバメントハンター」です。
先月、村で行われた、市街地での出没対応訓練。
発砲が難しい場所と判断した浦田さんは、追い払いをするべく、無線機を手に指揮します。
浦田さん
「少し車を出してください」
ハンター
「了解です。前進し圧力をかけていきます」
ハンターが連携をとりながらクマを取り囲み、住宅が少ない山の方へ追いやりました。
訓練の最終段階は、クマの駆除です。
浦田さん
「ゆっくりクマの動きを見つつ、射線に入ったらすかさず撃つ。かなり接近戦闘が予想される、基本的には2人1組でバックアップをとりながら声をかけながらやっていきたい」
先陣を切ってクマがいる茂みへと向かった浦田さん。
そして…。
北海道では、地域おこし協力隊の一員としてクマの駆除を担う人もいますが、浦田さんのように、自治体の専門職員の立場で駆除も担当するのはまれだといいます。
ハンター
「最終的に判断する、特に発砲に関わることを判断してくれる人がいる状況で動くっていうのは、指示を出される側としては非常にやりやすかったなというふうに思いました」
浦田さん
「鳥獣専門員を置いて仕事をさせてもらってるっていうのは、ある意味では地域社会の住民のひとつの決意でもありますし、地域を動かしていく、そういうトリガーになれたらなというふうに思ってます」
相次ぐクマの出没は、目に見える被害だけでなく「いるかもしれない」という恐怖によって、日常生活にも影響を及ぼしています。
クマとの距離が近づいてしまったいま。
どうすれば被害を減らせるのか?
また軋轢を生まない適度な距離感を取り戻すことができるのか?
クマの知識を持った専門職員に、大きな期待が寄せられています。