漫画「らんま1/2」から命名、『名古屋港水族館』水槽の底から“雌雄同体”の新種を発見!「生物学的に興味深い現象の発見が期待される」
海の生き物が展示される水族館の水槽。その底では、底砂などにまぎれて侵入した“故郷知れず”の小さな生き物たちも暮らしている。2009年、北海道大学大学院理学研究院の角井敬知講師が、愛知県名古屋市の『名古屋港水族館』で発見した“ある生き物”もそのひとつだった。
甲殻類に分類された“ある生き物”は、採集個体をもとに北海道大学内の角井講師の研究室で継代飼育。様々な研究に用いられてきたが、分類が非常に難しいグループだったため、これまで種名が確定されずにいた。
しかし、北海道大学大学院理学院・院生の松島吉伸さんらが観察を重ねていくなかで、既知の種のいずれにも該当しない「特徴」を有していることが判明。これらの研究成果をもって、松島さんと角井講師の研究グループは、“ある生き物”がタナイス目甲殻類の新種であることを発表。同種が有する「特徴」にちなんで、種名を「ランマアプセウデス」と命名した。
種名に含まれる、“ランマ”というワードに興味が湧く人もいるだろう。実は、「ランマアプセウデス」が新種の決定打となった特徴とは、“雌雄同体”であること。つまり、 1 個体が雌雄の生殖器官を同時にもつ種ということなのだ。
“雌雄同体”という特徴に、角井講師ら研究チームは、高橋留美子氏の作品「らんま 1/2」のリードキャラクターで、本来は男性ながら女性にもなりうる「早乙女乱馬」を想起。高橋氏に許可をとり、同キャラクターにちなんで名付けられたのが、「ランマアプセウデス」なのだ。
研究チームによると、種名が確定したことで、ごく近縁な種との比較などさらなる研究発展が可能に。タナイス類のほか、カニやシャコなど 4 万種以上が含まれる軟甲綱というグループにおいて、“雌雄同体”の種は非常に限られており、今回の研究成果は大きな前進となったという。
研究チームよると、実は『名古屋港水族館』のほかにも、タナイス類が水槽から見つかっている水族館は日本各地にあるという。研究チームは「今後未調査の水族館のタナイス類を研究することで、さらなる未記載種や生物学的に興味深い現象の発見が期待されます」と今後について語った。
『名古屋港水族館』の水槽の底で発見された、生物学を大きく前進させた雌雄同体の“新種”。水族館の水槽の底には、人類がまだ知らない未知の世界が広がっている。