視覚障害者が観光業で自立する道を 視覚をさえぎり視覚以外の感覚で楽しむ鵜飼い「まっくらうかい」
鵜飼いで有名な岐阜市の長良川で9月24日、視覚に頼らず聴覚や触覚を研ぎ澄ますことで鵜飼いを楽しむイベント「まっくらうかいin感覧船」が開かれました。視覚障害者が観光客を引率し、夜の鵜飼いに伴う音や温度などを視覚以外の感覚で観光客に楽しんでもらう企画です。
このイベントは、岐阜市出身で有限責任事業組合「長良川リバースケープ」の代表を務める宮部賢二さんが発起人となり主催。視覚障害者たちが観光の仕事に就けるようにと宮部さんが着想し行動に移したのが発端ですが、イベントを盛り上げていき岐阜市内の観光業の発展につなげたい思いが、宮部さんをはじめイベントに携わる主催者たちにはあります。
今回の「まっくらうかい」は、事前予約制で6人の観客が参加。アイマスクを着用し視覚をさえぎられた参加者を、視覚障害者の案内役や司会補佐が観覧船に誘導します。
日が暮れた夜の暗闇の中で、鳴き声を上げる鵜が水中に潜る音を耳にしたり、鵜匠の掛け声などを聴いたり、かがり火が灯る温かさを全身で受け止めるといったかけがえのない経験を、参加者は体感します。
宮部さんは「鵜飼いの新たな魅力を、多くの人が知る機会となれば」と期待を込め、今回の催しの意義を呼びかけています。
今年7月に開かれたぎふメディアコスモスでのプレイベントでは、施設内に「暗闇の中の長良川」という疑似空間を創りました。参加者からは「初めての経験で楽しかった」「真っ暗な中での鵜飼いの疑似体験は、新鮮で面白かった」といった声が上がり、イベントへの手ごたえを宮部さんは充分に実感しました。その結果、実際に長良川へ船で乗り出しての今回の鵜飼い観覧となりました。
今年11月からは長良川うかいミュージアム(岐阜市)で月2回、今回のイベントに類似した体験会の開催も予定されています。今後は開催回数を増やしていき、観光客が「まっくらうかい」を体験する機会を多くしていく計画ということです。
「『まっくらうかい』が観光客を呼び込めるエンターテイメントとして定着し、視覚障害者が観光の仕事で自立していく道を開いていきたい」と宮部さんは話しています。