【グップラ】「泡の消火剤」を開発 創業114年の石けんメーカー 初の女性職人が登場 北九州市
今週は地球のためにいいこと・人にいいことを考えるSDGsの1週間「グッド・フォー・ザ・プラネット・ウイーク」、略して「グップラ」です。今回は、半世紀にわたって、“人と環境にやさしい”製品にこだわり続けてきた企業です。
■消防職員
「この中に準備するものが泡消火剤。1%ということで、10リットルを注ぎ混合水を作ります。」
先週、北九州市の消防署を訪れたのはインドネシアの防災関係者です。熱心に見学していたのは「泡」の消火剤です。注目されている理由は、その消火能力だけではありません。
■インドネシアの消防隊員
「他の消火剤だと体につくと、かゆくなるのですが、この消火剤はかゆくなりません。」
■インドネシアの大学研究者
「この泡の消火剤は水の中に入れても、生き物が死なないんです。」
消火剤を開発したのは、創業から114年となる北九州市若松区にある石けんメーカー、シャボン玉石けんです。7年をかけて、自社で製造する石けんをもとにした消火剤を開発しました。
インドネシアでは、森林火災による被害が深刻で、対策が急務となっています。
シャボン玉石けんが開発したこの消火剤は、化学合成された消火剤に比べ、生物への影響が小さいとされ本格的な導入に向けて検討が進められています。
その開発の礎となったのは、半世紀にわたる無添加石けんの技術です。牛脂やパーム油など天然の油脂を原料に、香料や着色料、保存料などを加えずに作られます。
海や川に流れても短期間で分解され、石けんかすは魚や微生物の栄養源になるといいます。
■シャボン玉石けん・森田隼人社長
「私の父、先代社長が当時、原因不明の肌荒れに悩まされていたのですが、無添加石けんと出会って肌荒れ・湿疹がよくなった。父の経営者としての判断で一大決心をして、売れ筋だった合成洗剤をすべてやめた。」
石油由来の成分が入る合成洗剤の販売終了を決断した当時、売り上げはそれまでのわずか100分の1になったといいます。それでも、無添加の石けんにこだわり続ける企業姿勢は少しずつ浸透し、17年後に黒字化しました。
現在は固形石けんだけでなく、液体石けんやハンドソープなどさまざまな商品を世に送り出すまでに成長しました。
■森田社長
「石けんと合成洗剤の違いは一般的にはあまり知られていませんが、最近ではSDGsをはじめ、環境意識が非常に高くなって、当社としては追い風と感じながら、ちょっとずつ石けんの輪を広げてきた。」
伝統的な製法で、およそ1週間かけてじっくりと作られます。
■先輩職人
「まだ実は2年目の修行中の職人。」
いま創業以来初めての、女性の職人が修行中です。
■製造部・城戸玲乃さん(23)
「社会に出て仕事をする際に、自分が胸を張れる仕事がしたいと思った。体にも環境にも優しい石けん作りを行って、世の中に貢献できたらいいかなと思って職人になりたいと思いました。自分の与えられた仕事をしっかりと行って、世の中にもっと広めていけたらいいなと思います。」
50年にわたって培われてきた無添加への思いは、未来を担う職人の胸にも刻まれています。