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「仕事が好き」従業員の3分の2が障害者 例えば「ゴミ箱の場所」改善を提案して働きやすく 法定雇用率は4月に引き上げへ 北九州市

2024年3月19日 18:55
「仕事が好き」従業員の3分の2が障害者 例えば「ゴミ箱の場所」改善を提案して働きやすく 法定雇用率は4月に引き上げへ 北九州市
働きやすさとは

企業が雇用しなければならない障害者の割合、法定雇用率が、4月から引き上げられます。北九州市に、30年前から障害者の雇用拡大に取り組んでいる企業があります。障害がある人とともに働く上で大切なことがあるといいます。

■従業員
「私たちTOTOグループは、様々な提案を通じ、お客様の期待以上の満足を追求します。」

北九州市小倉南区にあるサンアクアTOTOは、福岡県と北九州市、TOTOが共同で出資して1993年に設立されました。

145人の従業員のうち93人、およそ3分の2が障害者です。

勤続20年をこえるこちらの男性には知的障害があります。

■従業員
「おはようございます。」
Qきょうはどういう作業をされているんですか?
「これを剥いでいく作業です。30個たまるまで、これに入れていくんです。」
Q仕事は毎日どうですか?
「楽しいです。僕はこの仕事が好きなので。」

段ボールを素早く組み立てるこちらの女性は、ここで働き始めてから30年になります。

■従業員
「聴覚障害があります。話し方からみたらわかると思いますが、聞こえないです。耳が聞こえない私でも働きやすい環境ができているので、30年続けてこられたんだと思います。」

取扱説明書の作成やアンケートの文字起こしなど、TOTOグループから受注する業務は多岐にわたります。年間売り上げおよそ30億円のうち、9割を占めるのが、水栓金具などを製造する部門です。

■従業員
「よろしくお願いします。」

急な体調不良や欠勤があっても部品の生産が滞らないように、さまざまな技術を身につけています。

■従業員
「別のメンバーが体調不良で来られなくなったので、急きょ応援で入ることになりました。今まで慣れまくっていましたので、 感覚は覚えてます。不安はありません。」

サンアクアTOTOで作られる製品は、技術と品質に国からお墨付きを得られるJIS認証を取得済みで、働く人たちは「ものづくり」の一翼をしっかりと担っています。

やりがいのある職場を目指して取り組んでいるのが、毎月、各チームが提案する改善報告会です。

■サンアクアTOTO・田中江美社長
「現場のメンバーがいろいろと自分の作業手順を『改善』してくれているので、その一つ一つのテーマを聞いて評価したいと思います。」

このチームが提案したのは、ゴミ箱の場所の変更についてです。

■従業員
「あちらからこちらまで、だいたい18秒ぐらい、往復でかかっていました。稼働日が20日と考えたら、360秒かかっていることになっています。これを作ったことにより月に3回、ゴミをまとめるだけで良くなったので、だいたい54秒ぐらいの時間になりました。」

障害がある人たちがより働きやすく。みずから提案できる仕組みが、やりがいを生んでいます。

■従業員
「結構助かるという声はちょっとあったりはするので、結構やりがいは感じています。またいろいろ思い浮かんでいるので、またすぐちょっと改善しようかなと思ってます。」

さまざまな個性が集まるサンアクアTOTO。それぞれの違いを受け入れることが、働きやすさにつながっています。

■従業員
「僕は一応、知的障害者なので、人と違って覚えるのが苦手なので、人の名前とかもそうなのですが、仕事は楽しくないとやっていけないのかなと思うので、朝から笑顔でいろんな人と会話しながら頑張っています。」

■従業員
「発達障害があります。」
Q会社に行きたくないことは?
「あ、あります。とりあえず朝になったら、あー行きたくないなって。」
Q良いところは?
「みんな優しいところです。働きやすい。自分に合った仕事ができるとか、 そんな感じです。」

企業が雇用しなければならない障害者の割合、法定雇用率は、現在2.3%と定められています。福岡労働局によりますと、去年6月の時点で法定雇用率を達成した福岡県の民間企業は52.5%で、半数あまりにとどまっています。

障害者雇用がなかなか進まない中、法定雇用率は4月から2.5%、再来年7月からは2.7%と、さらに引き上げられます。

サンアクアTOTOの田中社長は、障害者の雇用で大切なのは「対話」だと話します。

■田中社長
「簡単に言えば『遠慮なく対話すること』かなと思います。障害のある方も、自分がどんな個性なのかということをきちんとお話してくれないと、我々もサポートをしっかりできないところもあるし、お互いに対話をしっかりしていくことで、遠慮なくやり取りをしていくことで、お互いの壁を外していくという作業が大事なのかなと思います。」

見えない壁をなくすことができるかどうか。障害がある人、ない人がともに働く社会の実現への鍵となりそうです。