地元で愛された食材を守るため大学生が「救い隊」を結成! 生産量が激減した「ヒシ」で新メニューを 佐賀
こちらは、佐賀県神埼市の特産品として古くから親しまれている「ヒシの実」です。作り手の高齢化に加え、コロナ禍などで生産量が激減する中、地元の大学生がヒシを活用した町おこしに取り組んでいます。
3月、佐賀市で、キッチンカーなどが集まるグルメイベントが開かれました。
■大学生
「ヒシの実が入ったギョーザです、 いかがですか。」
会場の一角で販売されていたのが、佐賀県神埼市で収穫される特産のヒシを皮に練り込んだギョーザです。
■吉村史織アナウンサー
「皮がもちもちでおいしい。ヒシ自体がちょっと甘みがあるということなので、 このギョーザも噛むほどにほんのり甘みを感じる気がします。」
ヒシの実ギョーザを企画したのは、佐賀県神埼市の西九州大学3年の樺嶋颯明さん、池田圭佑さん、仲田昂右さんの3人です。
■西九州大学3年・樺嶋颯明さん
「ヒシがいま、神埼市で栽培量が減っていて、ヒシをみんなに知ってもらおうと思っています。」
ヒシは日本各地の池などに生育する水草の一種で、古くから食材として親しまれてきました。
神埼市は全国有数の産地で、多いときには数十軒が生産し「ハンギー」と呼ばれる木のおけに乗って収穫する様子は、秋の風物詩となっていました。
大学で栄養学などを専攻する3人は、地域に根ざした食材としてヒシについて学び始めると、作り手の高齢化や需要の減少などで生産量が減り、今シーズン出荷する農家がわずか4軒という厳しい現状を目の当たりにしたといいます。
■樺嶋さん
「時代の移り変わりで食べられなくなっていくのは不思議なことではないと思うが、しょうがないで終わらせたらいけないかなと思っています。」
“絶滅の危機”にひんする貴重な町の資源を救いたい。3人で結成したその名も「菱(ひし)救い隊」はまず、新たに畑を作りたいと生産現場を訪れました。
最近は作り手の負担を減らすため、先に水を抜いて落ちた実を集める方法に変わってきています。それでも、収穫を体験すると。
■樺嶋さん「このだけの敷地があるので、腰がさすがにもう痛くなっている。」
若い世代の活動に生産者も期待を寄せています。
■ヒシ生産者
「新しい分野に挑戦していただきたい。ヒシを使ったスイーツとか、ぜひ挑戦していただきたい。」
■樺嶋さん
「かなり参考になりました。実際にやっていらっしゃる方を見せていただく機会は、いい機会になりました。」
神埼市ではこれまで、ヒシの主な加工品として焼酎を製造していました。しかしコロナ禍の需要低迷で生産中止となってしまいました。
ヒシの新たな消費先として、3人は加工品の開発を企画しました。熱意に応えメニュー開発を進めたのは、佐賀市でギョーザ店を経営する加藤均さんです。
ヒシのほんのりした甘さを生かせるよう皮に粉末を練り込み、さらに黒っぽいヒシの実をイメージして、竹炭を加えたものも作りました。
打ち合わせを重ね、今回の試作は8度目です。菱救い隊の学生たち3人が試食しました。
■試食
「いただきます。おいしい」
「(ヒシが)いますね、いる。分かる気がします。」
「香りもヒシっぽい。」
「舌触りもあるかも、おいしいです、すごく。」
以前はヒシの粉で食感がざらついていましたが、配合を調整し、ほどよい滑らかさになりました。
■加藤餃子研究所・加藤均 店長
「若い子たちが食べ物に興味を持つことはすごく大事なことだと思うので、彼らが楽しんでこういうことをやっていける手伝いができれば一番いいと思います。」
■西九州大学3年・池田圭佑さん
「めちゃくちゃうれしい。」
■樺嶋さん
「合計200セット売るので、200人はこの餃子でヒシを知ってくれることになるのかなと思うと胸が高鳴ります。」
イベントで初めてお披露目されました。
■購入した人
「すごくおもしろそうだったので、初めて聞いたので食べてみたいなと思って。」
「ヒシは昔、佐賀の堀にいっぱいあった。ヒシが懐かしかったもんで。」
用意したギョーザは2日間のイベントですべて売り切れました。
■樺嶋さん
「みんながヒシを知ってヒシを食べておいしいって言ってもらえるようになったらいいなと思います。神埼を盛り上げて、そのまま佐賀を盛り上げたいなと思います。」
もう一度、ヒシが“ひしめく”神埼市に。大学生の挑戦が地域の歴史をつなぎます。