新進気鋭のシェフと生産者が交流 赤色のパクチー・スミノエガキ 県産食材の新たな可能性を探る 佐賀
“食”を通じた町おこしを目指す佐賀県が、県産の食材の魅力ついて、より多くの人に知ってもらおうと県外からシェフを招く取り組みが始まっています。シェフと生産者の交流で、県産食材に新たな可能性が生まれています。
佐賀県基山町のエミューの肉を使ったインド風のコロッケに、佐賀県白石町で育てられた牛肉のキーマカレー。
■吉村史織アナウンサー
「食事が作られているキッチンでは、食欲をそそるスパイスの香りが広がっています。」
佐賀の食材で腕を振るうのはシェフの引地翔悟さんです。東京・六本木の「東京ミッドタウン」で、日本食材を大切にしたモダンインド料理店の新進気鋭の若き料理長です。
■ニルヴァーナ ニューヨーク・引地翔悟シェフ
「東京出身で、地方や田舎とか(住んだことは)ないんですけど、 佐賀県はこんなに全部あるんだと思いました。」
引地さんが参加したのは、佐賀県が主催する「シェフ・イン・レジデンスSAGA」です。県外のシェフに1週間ほど佐賀に滞在してもらい、食材や器の産地をめぐるほか、レストランの視察などを行います。県産素材を活用してもらうことや、ゆくゆくは佐賀で店舗開業につなげることを目指しています。
■佐賀県 流通・貿易課・安冨喬博(たかひろ)さん
「佐賀という場所自体を知らない人はたくさんいる。佐賀に移住・定住など、料理人が外からたくさん来てくれる機会が増えると非常にいいと思っています。」
滞在中、引地さんは嬉野茶やミニトマトの産地など14か所を訪れました。佐賀県武雄市のパクチー農園では、畑でしか見られない珍しい食材と出会いました。
■引地シェフ
「おいしい。赤いパクチー面白い。」
一帯に広がる赤色のパクチーは、もともと緑色ですが、2月の厳しい寒さの影響で赤く変色したといいます。
■パクチー生産者・江口竜左さん
「食べられないものではない。逆に葉っぱが締まっていて、味が濃縮されている感じです。」
■引地シェフ
「全然ないんですか?販路とか。」
■江口さん
「売り物にはしていないです。たまに自分で食べたりするくらいです。」
気候の影響で変色したため、一般には流通できない珍しい食材に興味津々です。
■引地シェフ
「味の濃さ、パクチーなのにパクチーっぽくないのがすごく面白く感じて、自分なりにどうやって使えるか触ってみたいなと思いました。」
有明海では、“悩める生産者”との出会いもありました。ノリ漁師の橋間勝由さんは3年ほど前から、海苔漁の合間に干潟で天然のスミノエガキを収穫しています。
■スミノエガキを出荷・橋間勝由さん
「これがスミノエガキです。」
■引地シェフ
「大きいですね。」
■橋間さん
「これまだ小さい方です。」
スミノエガキは、全長20センチほどにもなる大きさや、えぐみのないまろやかな味わいで、これまでは地元を中心に生ガキで出荷されてきました。有明海の新たな特産品を目指す中、課題となっているのが販路だといいます。
■橋間さん
「(佐賀だと)値段がすごく安い。でも東京だと価値が分かる人がいるので、値段は高くして価値を高められる。」
引地さんは、加工した方がより流通しやすいとアドバイスします。
■引地シェフ
「甘い。このサイズ感だと、これで1個の料理にできるし、しやすいと思う。」
この日は、佐賀で出会った食材を使って試作し食材の可能性を探ります。
引地さんはスミノエガキを湯がき、スパイスを投入します。
■引地シェフ
「カキ自体に、スパイスのだしというか香りをまとわせてあげたいなと。東京だとこんなふうに出せるというのを見せたい。」
滞在最終日には、引地さんが腕を振るい生産者を招いて食事会が開かれました。招待客には、スミノエガキの販路で悩む橋間さんの姿もありました。
低温でじっくりと火入れしたスミノエガキは、スパイスの効いた豆のカレーが添えられたインド料理の一皿になりました。
これまで、焼きガキなどでしか食べたことがなかったという橋間さんは。
■橋間さん
「カレー味?みたいな。そういうやり方もあるんだなとびっくりしました。火を通して商品化すれば使ってもらえる店がたくさんあると知ったので、今からやっていこうと思っています。」
■引地シェフ
「まだ知られていないものがいっぱいあって、まだ販路に困っている人たちもいて、彼らの良さを僕は東京でお客さんに伝えていきたいと思っています。」
新進気鋭のシェフと佐賀が誇る豊かな素材の出会いで、食材の新たな可能性が広がっていきます。