平均年齢80歳の出演者が輝いたランウェイ あすより若い『きょう』を全力で楽しむ
福岡県筑後市でファッションショーが開かれました。出演したのはいずれも高齢の方々で、平均年齢は80歳です。モデルに挑戦し、いきいきと輝く姿に注目しました。
ランウェイをさっそうと歩き、笑顔でポーズを決める女性に、コミカルな演技を交えながら会場を笑いで包む男性5人組と、75歳から91歳のモデルが輝く、特別なファッションショーです。
一気に秋らしくなった10月2日、福岡県筑後市の『蔵数地域デイサービス』に通う29人の高齢者がファッションショーの会場に集まってきました。
■出演者
「おはようございます。」
デイサービスの利用者に生きがいを感じてもらおうと企画されたファッションショーを手伝うのは、地元の九州大谷短期大学で福祉などを学ぶ学生たちです。出演者の衣装やヘアメイクをサポートします。
出演者の最高齢は91歳の中尾文子さんです。
■中尾文子さん(91)
「出来上がり?」
■メイク担当者
「舞台の上で顔がキラキラになるように、最後、粉かけときます。」
おしゃれをして、あすより若いきょうという日を楽しむことが、今回のショーのテーマです。
■スタッフ
「あーいい!バッチリバッチリ!」
■中尾さん
「こんな顔で、こんなの着せられて。背中が曲がっているから、こんなの着たら合わないよ。」
■スタッフ
「きれいよ、きれい。」
「大丈夫!」
ウエディングドレスに袖を通すのは初めてという中尾さんは、戸惑いを隠しきれません。
■中尾さん
「私たちの時代は(ウエディングドレス)なかったですから。」
64年前、中尾さんは、夫の和徳さんと結婚式を挙げました。夫婦とも旅行が趣味で、全国各地を旅して回ったのが、中尾さんの心に残っています。
13年前に他界した最愛の夫に、ファッションショーへの参加を報告したといいます。
■中尾さん
「この前、13回忌だったんですよ。見守ってください、失敗のないように、とお参りしてきました。」
「頑張ってこいって言われました。」
夫婦で参加する兼子公男さんと勝子さんです。ともに80歳で、連れ添って60年になりました。
■スタッフ
「お母さんの姿、どうですか?」
■兼子公男さん(80)
「かっこよかよ。」
■スタッフ
「お母さんは(お父さんの姿)どう?」
■兼子勝子さん(80)
「美男子。」
■公男さん
「ほれ直したよ。」
■勝子さん
「よか思い出、涙が出る。」
勝子さんが笑顔ののちに見せた涙にはワケがありました。
■勝子さん
「去年の5月か6月だったね、脳梗塞になったの。」
脳梗塞で倒れた後、一時は寝たきりの入院生活になりました。退院した今でも、週に1回、足の調子を取り戻すためリハビリに励んでいます。
■勝子さん
「(Q.歩けるようになると思ってました?)思わんやった。」
■参加者
「ファッションショー、成功させるぞ!おー!」
この日、会場には100人以上の観客が集まりました。
舞台袖には本番直前まで足を気にする勝子さんの姿がありました。
■勝子さん
「(Q.足は今大丈夫ですか?)今ここさ来たら落ち着いた。復活して良かった、無事にこうやってね。」
「足動く、みんなに支えてもらって。」
■司会者
「生き生きと輝く私たちをどうぞ最後までごゆっくりご覧ください。」
トップバッターを飾った勝子さんは、夫の公男さんと手をつなぎ、かた時も離れることなくしっかりとした足取りで歩きます。
■公男さん
「最初やっぱ(足)どうかなと思いよったばってんね。やっぱ楽しかったな。」
ホッとしたのか、勝子さんにも笑顔が戻りました。
■勝子さん
「よかった。涙出た。つけまつげが外れとる。サイコー!バッチリ!」
一方、最高齢の中尾さんは、笑顔で歩けるのか、直前まで不安が拭いきれないようです。
■中尾文子さん(91)
「ニコニコ笑いたいんだけど、笑顔が出ないわ。」
■司会者
「中尾文子さん91歳、ウエディングドレスに袖を通す日が来るなんて夢のようです。」
■観客
「中尾さーーーん!」
最初はひきつった表情でしたが、観客からの声援に思わず笑みがこぼれます。
■中尾さん
「皆さんがね、私の名前を呼んで、 手やら振っていただいたので、思わず私もね、笑顔も出ましたし、手も振りました。」
「主人も向こうの方から見て喜んでいると思います。」
生き生きと輝く出演者たちの表情は、観客の心をしっかりとつかんでいました。
■観客
「出演している人たちがうれしそうでした、楽しそうでした!!」
■観客
「若返っているみたい、皆さんね、 80歳とか90歳とかいっても、そんなこと全然感じなくてね。楽しかった!自分もあんなふうになりたい。」
ファッションショーはたくさんの笑顔と拍手に包まれ、あすより若いきょうという日を全力で楽しむことの大切さを、私たちに教えてくれました。