【判決】「マンション購入がうまくいかず口論に」「突発的だが強固な殺意」小学校教諭だった妻を殺害して1か月にわたり自宅に放置 夫に懲役16年 福岡地裁
福岡県久留米市で小学校教諭の妻を殺害し、遺体を放置した罪に問われている夫の裁判です。夫は殺害を否認していましたが、福岡地裁は21日、「突発的ではあるものの強固な殺意に基づく」と指摘し、懲役18年の求刑に対し、懲役16年の判決を言い渡しました。
福岡県久留米市の無職、渡辺司被告(42)は去年9月、当時の自宅だった久留米市のマンションで、小学校教諭の妻・彩さん(当時35)の首を圧迫して殺害し、遺体をおよそ1か月間放置したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われていました。
殺人について無罪を主張していた
これまでの裁判で、渡辺被告は死体遺棄については認める一方、殺人については「自殺した可能性が否定できない」として無罪を主張していました。また、弁護側は「被害者が自分で自分の首をビニール袋で絞めて自殺した可能性が高く、これを否定できるような証拠はない」として、執行猶予付きの判決を求めていました。
これに対し検察は、マンション購入をめぐり「被害者に虚偽の説明をしたことが原因で強く叱責されるなどして、殺害した」と指摘し、懲役18年を求刑していました。
また、彩さんの父親も法廷に立ち「死人に口なしが通る結果ではなく、正義ある判断を望みます」と求めていました。
裁判長「突発的ではあるが強固な殺意」
裁判は殺害が認められるかが争点でした。21日の判決で岡本康博裁判長は、殺害を認定しました。
動機について、渡辺被告が否認していることから判然としない部分はあるものの、証拠によって認められる経緯や2人の関係に照らすと、彩さんに対する以前からの鬱憤(うっぷん)に加え、マンションの購入がうまく進まなかったことなどをきっかけに口論となり殺害に至ったと考えられるとしました。
そして殺害は短絡的で強い非難を免れず、突発的ではあるものの強固な殺意に基づいていると指摘しました。
腐敗が進むまで放置 発見を遅らせようと
さらに遺体を1か月という長期間、腐敗が進むまで放置し、発見を遅らせるため姉の死を知らない彩さんの弟を巻き込む形で、勤務先に虚偽の説明をさせるなど悪質だとしました。
死体遺棄を認め、法廷で遺族に対し謝罪の言葉を述べたものの、殺人については自殺だとする不合理な弁解に終始しているとして、懲役18年の求刑に対し懲役16年を言い渡しました。