【県が中止命令を出す“条件”とは?福島市のメガソーラー問題】住民「全面的に賛成はできない」市は「ノーモアメガソーラー宣言」、事業者は「再発防止策を徹底」…溝は深まるばかり【福島県】
福島市で建設が進むメガソーラーの話題についてお伝えします。このうち吾妻連峰の一角の先達山ではメガソーラーの建設によって景観の悪化や大雨で泥水が流出する被害もあり、住民から心配の声が上がっています。これ以上、メガソーラーの設置を望まない「ノーモアメガソーラー宣言」を行った福島市ですが、建設に向けた動きはほかでも進んでいて、メガソーラーの事業者と地元との間で溝が深まっています。
■溝井貴美 記者 リポート
「JR福島駅西口にあるビルの展望ラウンジにきています。ここから10キロほどの場所に先達山があります。山肌の工事現場が確認できますね、いまメガソーラーの建設が進められています」
CO2の排出を抑えながら大規模な発電を行う「メガソーラー」。2011年の原発事故以降、再生可能エネルギーを推進する県内でも導入が進んでいます。ところが…
■福島市 木幡浩市長(2023年9月1日)
「山地の大規模太陽光発電の施設をこれ以上望まないことをここに宣言します」
メガソーラー建設が進む福島市西部の先達山では森林が伐採され、山肌の一部がむき出しの状態に。また、先日の大雨では建設現場付近から大量の泥水が県道に流出する被害も出ています。
■溝井貴美 記者 リポート
「福島市の郊外、先達山のより近くにやってきました。建設現場には緑の箇所が見える、植生シートを敷いて景観を戻す作業をしているということです」
先達山でのメガソーラーの建設はカナダに本社を持つ事業者が進めています。今回の事態を受けて「再発防止策を徹底し、景観を戻す作業をできる限り前倒しで行っていく」と説明しています。これ以上、メガソーラーの設置を望まない「ノーモアメガソーラー宣言」を行った福島市。ただ、建設の動きは別の場所でも進んでいます。
■福島市平石 佐久間 誠 区長
「この辺が太陽光のソーラーを計画されてるとこなので、木を伐採されたらたまんないですよね」
福島市南部の平石地区の山林では別の東京などの事業者がメガソーラーの建設を計画しているといいます。
■福島市平石 佐久間 誠 区長
「景観を損ねる、災害に対する弱点を考えると私たちは全面的に賛成はできないし特にこういった場所に建設するというのは反対という立場です」
住民からの声を受けて、福島市も「事業者が計画を断念するよう働きかけていく」としていますが、宣言には法的拘束力はなく、開発を止めるのは難しいのが現状です。建設を進める事業者と地元との間で深まる溝。メガソーラーの建設を巡るこうした問題を解決するためにはどうすればよいか。エネルギー技術に詳しい専門家は…
■福島大学 佐藤理夫教授
「ほとんど外部の資本で行われるのであれば少なくともその利益の一部が地域に還元されることが必須だと思う」「壊しすぎないような工夫をする、デメリットがあったら最小化をするような工夫をする、そういったことの積み重ねしかないと思う」
自然環境や地域社会と共生した再生可能エネルギーの導入を進めるためにも、事業者には地元への丁寧な説明などが求められそうです。
福島市は、これ以上、メガソーラーの設置を望まない宣言を行っていますが、実際の建設の許認可については市ではなく、県が判断することになっています。県はメガソーラー事業について災害の防止や環境の保全など4つの項目について審査し、2021年に開発の許可を出しています。
今回の先達山のケースでは、住民から景観の悪化を心配する声も上がっていましたが、この景観については実は、県の審査には景観に関する項目は無いんです。つまり、事業がこれら4つの項目をクリアしていれば県は許可を出さなければいけないんです。先達山のメガソーラー事業について、内堀知事は「住民の安全・安心の確保に向けて事業者を適切に指導していく」と述べるに留めていて、現時点では事業を止める中止命令などは出さない方針です。
一方、こうしたメガソーラーの建設について、隣県の宮城県や山形県や県内6つの市町村を含む全国275の自治体では独自の条例を設けています。事業者に対して住民説明会の開催を義務づけたり、景観を含む環境との調和を図るよう改善命令を出すこともできるといいます。地域社会と共生した再生可能エネルギーの導入をどう進めていくか、今後県内でも議論を深めていく必要があるかもしれません。