全国で広がる大学入試の「女子枠」とは? 理系女子の増加を目指す広島大学も設置 【テレビ派・長島カイセツ】
広島テレビの長島清隆解説委員が、注目のニュースを分かりやすく分析・説明する「長島カイセツ」です。今回は、大学入試で広がる「女子枠」についてお伝えします。
広島大学は2026年度入学の理工系・情報系の学部の入試で、女性の学生を増やすための「女子枠」を設けることを発表しました。人数は理学部が7人、工学部15人、情報科学部15人、合わせて37人を筆記試験と面接などで女子を選抜します。この3つの学部で女子だけの枠を設ける理由は、これらの学部で特に女子学生が少ないからです。広島大学全体では女子の割合が39%ですが、この3学部に限定すると、15%ほどしかありません。
女子を増やす狙いについて、越智学長は多様性を上げています。
■広島大学 越智光夫学長
「ダイバーシティという観点からは、特にこの分野にもう少し積極的に女性の方々が進出して頂いて、男性女性の視点が違うと、取り組みに幅が出てきたり大きく可能性が十分ある。」
社会で多様性が求められる中で、入学段階で理工系の学部に女子が少なければ、その先、大学院にも女子が少なくなってしまいます。また、企業で研究や製品開発をするのも女性の視点というものが欠けてしまうことになります。
4月に、広島大学や大学院に入学したばかりの新入生に、女子枠について聞くと、「賛成。男性にない意見を女性は結構持ってると思うから、そういうのを取り入れていけたらいいと思う。」「現状少ない中で、女性の方の社会 進出の機会になるんじゃないかなと思うので、女子枠は賛成。」という意見がある一方で、「工学や理学に行きたくて、頑張って勉強してきた人たちがいるので、平等に勉強して実力で入学者を決める方がいいと思うので、反対。」と、いう意見もありました。ただ、この取り組みが良かったかどうかについては、入学した学生たちが卒業して、社会で一定程度働いた後で評価が出てくるもので、長い期間で考えていく必要があります。
民間の財団の調査によると、「女子枠」は広島大学独自の取り組みではなく、国公立や私学を含めて広がりを見せており、2024年度の入試までに、全国では少なくとも40の大学が設けています。文部科学省が通知を出し、特に「理工系分野における女子」と具体的に言及して、多様な選抜を求めているということも背景にあります。
なぜ「理系に女子」というと、国際的に見ても日本は理系の女子が少ないことが理由に挙げられます。OECD(経済協力開発機構)に加盟している38カ国の中で、日本は最下位の17%しか理系の女性がいないということです。
そもそも、理系の女子が少ない理由に明確な答えを出すのは難しく、大前提として、男子と女子を比べて女子は理系が苦手というようなデータはありません。ただ、固定観念で、例えば工学は男子が学ぶものという思い込みや潜入感があると指摘されています。また、日本の場合、高校受験の準備をする段階で、文系や理系と明確に分けすぎて、それぞれの学問が融合する機会が少ないとも言われています。
広島大学の女子枠37人は、3つの学部の定員から計算すると、1学年につき、およそ4%程度となります。ただ、越智学長は数値目標を具体的に設けているわけではなく、女子枠を設ける意義として、「理系の女子枠を設けることで、広島大学がダイバシティー、つまり多様性を持ち続けている大学だということが伝われば、女子が理系を学びやすい大学だと考えて、受験者や合格者が増えてくるのではないか。」という影響を期待しているということです。理系に極端に女子が少ないのは、学問にも産業にも決してプラスではありません。人を育てるための取り組みに注目しましょう。
【テレビ派 2024年4月12日放送】