増加傾向にある学校での暴力行為 生徒から教師が受ける暴力の実態は【徳島】
実際に生徒から暴力を受けた教師に聞く
(教師A)
「蹴る殴るを複数回、腹だったり足だったり、暴力を受けた」
徳島市内の中学校に勤務する男性教師は、2023年の夏に一人の男子生徒から暴力を振るわれたといいます。
(教師A)
「医療機関の方で全治3週間程度の診断書をもらった」
授業を妨害するような行動を注意したことがきっかけで、この教師は生徒から暴力を受けました、その被害は一人では終わりませんでした。
(教師B)
「突き飛ばされたり、こかされたり、馬乗りになったり」
その生徒は、一度暴力を振るい始めると見境なく暴れ、なかなか止めることができなかったそうです。
被害は女性教師にも及びました。
(教師C)
「だいぶ強い力で押されたが、詳しいことはちょっと思い出したくない」
この生徒はクラスメイトに対しても殴る蹴るの暴行を加えており、女性教師はそれを止めようとして暴力を振るわれたそうです。
(記者)
「恐怖は感じた?」
(教師C)
「(記者:恐怖は感じた?)やはりショックだが、自分自身が教師という立場なので、やはり安全を守らなければというような思いだった。(記者:トラウマは?)ないと言えばうそになるかなと」
この学校では、合わせて7人の教師が同じ生徒から暴力を受けました。
ここ数年、学校における暴力行為は増加傾向にあります。
文部科学省の調査では、徳島県内の小中高校において、暴力行為は2021年度に470件でしたが、2023年度には約1.5倍の736件にまで増えました。
このうち教師への暴力は77件と、全体の約1割を占めています。
(教師D)
「体調を崩したり心をちょっと病んでしまい、休む先生がいたのも事実」
(教師C)
「(記者:自分の家族がそんな目にあったら、その生徒のことが許せるかなと)そうですよね。いろんな場面で、やっぱり自分の家族がいるという状況で、やっぱり安心してそこの職場に送られるかと言われたら、そういう状況ではないのが現状」
専門家の意見は
かつて法務省の法務技官として、大阪、福岡、徳島などの少年鑑別所で、更生に向けた心理面のアドバイスをしていた徳島文理大学の青木宏教授は、こうした暴力問題は学校だけでは解決できないと話します。
(記者)
「生徒から教師への暴力は、どう対処すべきか?」
(徳島文理大学人間生活学部心理学科 青木宏教授)
「暴力というのは、家の中でやろうが、家庭内でやろうが、学校でやろうが、路上でやろうが『暴力は暴力』。それで人をケガさせたなら、それなりの制裁を受けなければならないと私は思っている」
(記者)
「学校という場所での対処は?」
(徳島文理大学人間生活学部心理学科 青木宏教授)
「学校というのは、教育というものは万能じゃない。何もかも教育で解決できるとは思わない。学校というのは、暴力は排しておかないといけない場所だ。それが守れない人は、とにかくそこから外さないと。外して、違う所でやり直さないとしんどいと思う」
青木教授は、暴力行為が繰り返される場合は、適切な治療や対処が必要だと指摘します。
(徳島文理大学人間生活学部心理学科 青木宏教授)
「暴力というのも、人間は依存する。好きだから。暴力というのは人間、基本的に快感になるから。だから、テレビでも映画でも暴力場面が多いし、暴力というのは基本的に快感になる場合がある、自分がやられない場合は。やられない場合は快感になる場合があるので、快感があるところには依存につながる場合がある。そうすると、アルコール依存症の人は止められないのと同じように、もう途中までいくと自分では止められなくなる。アルコール依存の人は酒をあちらこちら探し歩くように、暴力ふるえる場面はないかなあと探すようになる。そうなると、自分の力では止められない」
生徒から暴力を受けた教師の訴え
(教師B)
「今度こういうことがあったらこのようにしますということを全職員に示してもらい、教員からではなく教育委員会からその加害生徒に申し渡すという形が、これはやっぱり欲しい。そうしないと全部、現場の教員がかぶることになる。やはり限界があると思うし、精神的にもやっぱりきついものがある」
(教師C)
「我々としては、手を出すということは絶対にしてはいけないと思っているので、それを何かがあった場合に、我々を守ってもらえるような制度であったり、教育委員会の方たちが何かしらの施策をとって頂けるのが、自分自身としてはやはり働きやすい環境になるのかなという風に考えている」
現場からの訴えに対し、徳島県教育委員会の担当者は
(徳島県教育委員会いじめ不登校対策課 福多博史課長)
「初期対応のマニュアルを作成する、または全教職員が一体になってそういった問題に対応していくというところで、共通理解を図りながら取り組んでいくことが必要だと思っている」
(記者)
「こういう事態が起こった場合、教育委員会はどう対応するのか?」
(徳島県教育委員会いじめ不登校対策課 福多博史課長)
「当然、傷害事件等の犯罪として扱われるような事案については、学校等については警察に通報相談をして毅然として対応していく。そういった体制作りを進めているところだ」
教職員の労働環境改善に取り組む県教職員団体連合会では、再発防止の制度作りを学校や教育委員会に求めています。
(徳島県教職員団体連合会 喜多正博委員長)
「子どもたちから保護者から、暴力や暴言、恫喝を受けた場合にしっかり守ってもらえる制度、または管理職が守る姿勢。また管理職から教育委員会の方へ報告があると思うが、その時に教育委員会からもしっかりと今回の件で終わらしていこうと、解決していこうと。起きたことについては、どのように解決したのかを先生たちに周知してもらえるような制度があると良いと思っている」
なお、加害側の生徒はその後、法的な処分を受け更生への道を歩んでいるとのことですが、教師のなり手が不足する中、どのように学校の安全や教職員の労働環境を守っていくのか、教育委員会や文部科学省には真剣に取り組んで欲しいと思います。