■松本茜記者
「きょう開所式が行われるTSMCの熊本工場前には、国の内外から多くのメディアが集まっています」
■台湾のテレビ局
「台湾では、TSMCは国を守る山と言われている。初めて開所するのがこちらなので意味が大きい」
■見に訪れた人
「台湾人なんですけど、貴重な日なので中には入れないが、台湾人として一緒にお祝いしたい」
TSMCのマーク･リュウ会長とシーシー･ウェイCEOが待っていたのは、TSMCの創業者、モリス･チャン氏です。半導体の受託生産を行う｢ファウンドリ業界｣の先駆者として、世界トップシェアの企業に成長させた人物です。
TSMCとして中国、アメリカに次いで3か国目の工場進出となる今回。
■松本茜記者
「多くの報道陣が集まるセレモニー会場に、関係者も続々と入ってきています。まもなくセレモニーが始まります」
海外を含め、集まった報道陣は100社以上。カメラの先に現れたのは、ソニーグループの吉田憲一郎会長やトヨタ自動車の豊田章男会長。TSMCの工場を運営する子会社｢JASM｣に出資する日本企業の関係者が顔をそろえました。
第1工場では、今、日本で生産されていない回路幅が12ナノから28ナノの｢先端ロジック半導体｣を製造する予定です。
■TSMC創業者モリス･チャン氏
「2019年に経産省から工場設立のお招きをいただき、実現に至ったことを感慨深く思う。日本における半導体製造のルネサンスの始まりになると期待している」
岸田首相はビデオメッセージで、TSMCが熊本県内への建設を発表した第2工場に対し、新たに財政支援を行うと発表しました。
その規模について、齋藤経済産業相は…。
■齋藤健経済産業相
「最大助成額として7320億円として、5G促進法に基づく計画認定を行った」
完成した第1工場への助成金最大4760億円に加えて、第2工場には新たに最大で約7320億円の財政支援を行う方針を明らかにしました。
2つの工場へのTSMCの投資総額は約3兆円。これに対し政府は、最大で1兆2000億円を支援することになります。
第2工場は第1工場の隣接地に建設されるとみられ、さらに高性能の6ナノや7ナノの｢先端ロジック半導体｣を製造する予定です。6ナノなどの｢先端ロジック半導体｣は、自動車の自動運転に関わる部品や、カメラのイメージセンサーなどに使われます。
10年間で20兆円にも上るともいわれるTSMC進出による九州への経済波及効果。齋藤経済産業相は、｢半導体製造能力の確保に向けて、世界各国が巨額の予算を投じる大競争時代になっている中、今後の産業の発展、経済安全保障のために重要だ｣と財政支援の意義を強調しました。
この日、半導体の製造設備を非公開とする一方、TSMCが報道陣に公開したのは、排水の処理やリサイクルを行う設備です。
TSMCは、半導体の製造に欠かせない、地下水を1日あたり8500トン採取する計画です。排水の75％を再利用するとともに、採取量よりも多い地下水かん養を行うとしています。
■視察した蒲島郁夫熊本県知事
「県民の皆さんが一番心配しているのは地下水の問題。自然との共生、環境との共生、経済との共生のベストバランスをやって欲しいが、どちらかと言えば環境地下水にものすごく力を注いでいると感じた」
■JASM堀田祐一社長
「ものづくりとして高品質のものを作っていく。それ以上に熊本の地域の自然との共生を図っていきたい」
世界が注目するTSMCの新工場。今年中の生産開始に向け、いよいよ動き出します。
【スタジオ】
着工からわずか2年足らずで工場を完成させるというスピード感。日本の技術の高さはTSMC側から高く評価されました。のべ6500人が工事に携わり、24時間体制で進められたということです。
今後着工する第2工場とあわせて3400人以上の雇用が見込まれていて、経済の活性化も期待されています。さらに気になるのが、第3工場の行方です。熊本への進出の可能性について台湾メディアに直撃しました。
■台湾メディア
「第3工場は建設するというプランを立てていると聞いている」
Qそれは熊本に?
「そうですね。多分熊本県内の方。台湾から熊本への注目はだんだん高まっていくと思う」
■台湾メディア
「台湾では新竹や台南に、たくさんTSMCの工場が立ち上がったので、第3工場は第1工場と第2工場に近い可能性が高いと思います」
台湾メディアの方の話を聞くと、熊本に進出するのではという期待が高まります。国がどれだけ支援するかもカギとなりそうです。
