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足で車の運転も「命は平等・自分らしく」脳性まひの男性が子どもたちに伝えたいこと

2023年12月16日 18:13
足で車の運転も「命は平等・自分らしく」脳性まひの男性が子どもたちに伝えたいこと

20年近く前、日本で初めて足による運転免許を取得した脳性まひの男性。長年、子どもたちに伝え続けているメッセージがあります。男性の変わらない思いとは。講演に密着しました。

11月27日、熊本県宮原町の宮原小学校。
■倉田哲也さん
「けがしたり、風邪ひいたりとかするよね?」
■児童
「はい」
■倉田哲也さん
「だからいつも健康な人はいないと思うので、健常者という言葉の方が僕にとっては差別的な言葉かなと思います」

小学生の子どもたちに語りかける倉田哲也さん(57)。
倉田さんは生まれた時、首にへその緒がからまったことで脳性まひになりました。腕や手を自由に動かせない倉田さん。代わりに使うのは、両足です。15年ほど前に講演したのをきっかけに、毎年、宮原小学校の4年生に講演を続けています。

差別との挑戦の連続

「体が不自由な人たちも、自分たちと同じだっていうことを考えるようになってほしい」と話す倉田さん。57年の人生の始めの頃は、差別と挑戦の連続でした。
例えば、就職。高校を卒業して一般企業に就職しようとしましたが、かないませんでした。そこで倉田さんは1985年、障害がある仲間2人と一緒に「くまもと障害者労働センター」を立ち上げました。当事者がこうした事業所を作ったのは当時県内で初めてだったといいます。

社会とのつながりを持ちたいと始めた取り組み。今では、お菓子の仕分け作業やカフェの運営など50人が働いています。誰もが地域の中で生きていくために障害のあるなしに関わらず働ける環境を整えることが、大切だと考えています。

国内で初めて「足でハンドル操作する運転免許」を取得

国内で初めての挑戦も。2004年、倉田さんは足でハンドルを操作する運転免許を取得しました。

■倉田哲也さん
「自分で行きたい時に行きたい所に行けるようになりたいという、一般的な人と同じ考えが大きかったですね」

倉田さんの車は特別仕様。座席は通常より高い位置にあり、右足でハンドルを、左足でブレーキとアクセルを使い分けます。何と、宮城県まで運転したことも。

■倉田哲也さん
「二度見されたこともあった、びっくりした様子で。自慢できている気分かな」

市販の車は運転できないため、免許を取る前に車を買って改造したり、教習中には2万キロ走行したりと様々な壁を乗り越えての免許取得でした。

あきらめなかったのは、周りに応援してくれる人がいたからと語る倉田さん。講演でも命は平等と訴えます。

■倉田哲也さん
「みんなも生きている限りは、命は平等だと思うんですよね。だから、いじめや争いがない社会にすることが大切だと思います」

「自分らしく生きてほしい」子どもたちへのメッセージ

質疑応答では…。

■女子児童
「どうやってお買い物しているんですか?」
■倉田哲也さん
「以前は店員さんにバッグから財布を出してもらってお金を払っていたんですけれど、今は…(足でスマホ持ち上げ)スマホでキャッシュレス決済」

そのほかにも、「今、頑張ってやりたいことは?」と聞かれた倉田さんは、「パラグライダーに挑戦したい」と回答。「人生は挑戦の連続!希望を持って生きてほしい」と話しました。

倉田さん本人と話すことで、理解を深めた児童たち。講演の後は、全員で給食です。足の指でスプーンをつかみ、自分で食べる倉田さん。驚いた様子の子どもたちに倉田さんは、あえて協力を頼みました。

■倉田哲也さん
「手伝いたいという気持ちは誰でも持っていると思うけれど、どうしていいか分からないっていう人が多い。だから一回体験しておけば、どうやって手伝ったらいいかというのが分かると思う」
■食事を手伝った児童
「お母さんの仕事がお年寄りの人の介護の仕事だったので、僕もやってみたいなと思ってやってみました」

一緒に過ごす中で倉田さんが伝えたかったこと。
■倉田哲也さん
「自分自身、周りと違うことは当たり前だから、引け目を感じることなく自分らしく生きてほしいし、助け合う気持ちを持ってほしいと思います」

「助けて」と声をあげる勇気と、互いに対する「思いやりの気持ち」を持つこと。それが、誰もが希望をもって生きていける社会につながると倉田さんは信じています。