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「伝統を守り次の代に」阿蘇神社に大しめ縄奉納 高齢化進む伝承会に待望の若手メンバー

2024年12月5日 20:08
「伝統を守り次の代に」阿蘇神社に大しめ縄奉納 高齢化進む伝承会に待望の若手メンバー
阿蘇神社に奉納されるしめ縄は毎年、地元の伝承会が手がけています。しかし高齢化が進み、伝統の技の継承が課題となっています。そんな中、新たに加わった若手メンバーの思いを取材しました。

「一の宮町大注連縄伝承会」の小田瑠樹さん(35)。去年伝承会に入り、今年2年目を迎えました。

伝承会では毎年、大きなもので長さ7.5メートルにもなるしめ縄を阿蘇神社に奉納。今年もしめ縄づくりが始まっています。

初日の11月18日に行ったのは「菰編み」と呼ばれる作業。7人が横一列に並び、水で湿らせたワラの束をしめ縄の芯の部分に巻き付けていきます。
■伝承会の女性
「若いから覚えが早いです。うまいですよ。お上手です」
■小田瑠樹さん
「褒めていただいてうれしいです。頑張ります」

出身は熊本市 伝承会に入った理由は

小田さんは熊本市出身。東京の飲食店などで働いていましたが、自給自足の生活に憧れ、4年前に祖父母の家がある阿蘇に移住しました。現在はトマト農家として生計を立てています。そんな小田さんが、なぜ伝承会に入ったのでしょうか。きっかけは、阿蘇神社にしめ縄を奉納するニュースでした。

■小田瑠樹さん
「高齢な方たちがみんなで作っていたが、若い人は誰もいないけれど大丈夫かなとちょっと心配になった。皆さんの技術を教えていただき、貢献できたらと思いました」

伝承会が設立されたのは約40年前。現在のメンバーは70歳から93歳の18人と、年々高齢化が進み、後継者の確保が課題となっていました。35歳の小田さんの存在は非常に大きいといいます。

■一の宮町大注連縄伝承会 古澤義則会長
「後継者はなかなかいないですよ。なるべく人員を増やしてもらって、後継者をつくっていただきたい」

作業が進む阿蘇神社のしめ縄づくり。11月25日は、3本の縄を1本にまとめます。しかし…。
■伝承会のメンバー
「あ~、こりゃいかん!もいっちょ解体。ちょっと解体」

両端の長さが揃わず、"縄をまとめては解体"を繰り返していきます。1本の縄の重さは約50キロ。一番太いところの胴回りは90センチもあります。持ち上げた状態でねじりながら絡ませていくのは、まさに“匠の技”です。何度も繰り返し、ついに完成しました。

■小田瑠樹さん
「この太さになるとすごく力がいります。頭もいっぱいになって力も抜けませんし、力を離せば緩みますので。緩んだらまたやり直しということになりますので。難しいですね。これがずーっと何十年も作られ続けてきたことがすごいです。本当に」

作業を行う日には、みんなで昼食を囲むのが伝承会の昔ながらのルールです。この日の食卓には、おでんに白和え、漬物など手作りの品が並びました。
■小田瑠樹さん
「いやー、もう美味しいです。僕も料理するので、真似して作ってみたり」

待望の若手にメンバーも期待

先輩達から伝統を受け継ぐ一方、「伝承会のために自分が力になれることはないか」…そんな思いで小田さんが取り組んだことがあります。それは、一般の家庭向けに販売するしめ縄のチラシです。作り手の顔が見えるよう集合写真や紹介文を載せました。

■一の宮町大注連縄伝承会 古澤義則会長
「これ一つあればね、伝承会が作っているてね、売り上げが伸びる」

伝承会のメンバーも小田さんから刺激を受けています。
■一の宮町大注連縄伝承会 古澤義則会長
「彼はできるんですよね。インターネットとかあれば。あれが僕らはできんのですよ」

■一の宮町大注連縄伝承会 服部清実さん
「やっぱり若いもんがおらんとですね。助かってます」
Q服部さんの熟練の技に近づくまでにはどれくらい?
「あー、まだまだ!(笑)あと2・3年ですね」

■小田瑠樹さん
「阿蘇神社の伝統を守っていける。 先代から僕よりさらに下の代までずーっと続く伝承ができたら、僕はそれでうれしいです。(参拝した時)手を合わせる前に、香りとかもすごくいいと思いますので、五感で楽しんでいただけたらとてもいいと思います」

受け継がれてきた伝統を次の世代へ。伝承会のしめ縄は12月9日、阿蘇神社に奉納されます。

最終更新日:2024年12月5日 20:08