23年前の開館以来初のリニューアル 研究成果を発信する「水俣病情報センター」
(東島大デスク)
水俣病情報センターの新しい展示コーナーです。以前より明るくなりました。
水俣病情報センターは、水俣病の最新の研究を紹介する環境省の施設として2001年、水俣湾を望む高台にオープンしました。
センターは、水俣市が造った隣の水俣病資料館と渡り廊下でつながっていて、訪れた人は一体の施設として見学できるんです。実際、毎年熊本県の小学五年生が全員ここを訪れています。
ただ、そうなりますと、資料館とはどう違うの?という疑問が生まれます。リニューアルを担当した国立水俣病総合研究センターの押田崇之さんです。
(国立水俣病総合研究センター 押田崇之さん)
実際、子どもたちからそういう質問が寄せられたこともありまして、そうしたこともリニューアルしようと考えた理由の一つです。
(東島デスク)
今回、オープン以来、実に23年ぶりとなるリニューアルでより役割分担がはっきりしたのでしょうか?
(押田さん)
隣の資料館は、水俣病の過去の歴史をいろんな資料から見てもらうのに対して、こちらの情報センターは最新の研究を紹介する、そういう位置づけです。
(東島デスク)
国立水俣病総合研究センターは毎年、年報を出して研究成果を公表しているんですが、基本的に論文・専門家向けで難しいですよね。
(押田さん)
やはり多くの方に知ってもらいたい内容ですので、できるだけ分かりやすく、かみ砕いた内容にしてこちらに展示したいと考えました。
例えばこちらでは、水俣病が発症するメカニズムが説明してありますが、ヒトの体が、体に必要な必須アミノ酸と勘違いして有機水銀を取り込んでしまうという比較的新しい研究結果が紹介されています。
(東島デスク)
この研究は大きな反響を巻き起こしました。特に母親の胎内で水俣病になった胎児性水俣病の患者は、赤ちゃんと毒から守るはずの胎盤をなぜか有機水銀が通り抜けてしまった初めての例として世界に衝撃を与えたんです。なぜ胎盤を通り抜けたのか長い間分からなかったのですが、この研究によってメチル水銀が赤ちゃんの体を作るのに必要な栄養素そっくりの形になってすり抜けてしまったという、あまりにも残酷な理由に愕然としました。
大幅なリニューアルということで、新たに展示されたものもあります。メチル水銀の実物です。よくニュースでもメチル水銀といいますが、実際にこういう形で見たことがある人は少ないと思います。
こちらは大きめなモニターが並んでます。触ると、画面が立ち上がります。
(押田さん)
デジタルサイネージといいまして、水俣病に関する最新の研究成果を展示しています。これまでは壁新聞スタイルだったので、情報を更新するには手間もお金もかかったんです。でもこれなら研究が更新されればすぐに展示の内容も新しくすることができます。
(東島デスク)
ここにさりげなく置いてあるのは脳磁計です。脳の細胞の働きを目に見えるようにする装置ですね。
(押田さん)
この脳磁計を使って水俣病を客観的に評価しようという、まさに最新の研究です。ここに詳しい記事を展示しています。
(東島デスク)
この手法を、水俣を中心とした不知火海沿岸に住む住民の健康調査の方法に利用しようという考えもあると聞いていますが?
(押田さん)
健康調査は、水俣病特別措置法でも実施するよう定められているものです。その手法を環境省や水俣病総合研究センターで開発しています。脳磁計も含めて研究していますが、まだ決まったものではありません。
(東島デスク)
そういう健康調査の手法などもこちらで発信していくのでしょうか?
(押田さん)
そうなると思います。
(東島デスク)
健康調査の手法にはいろんな議論あるのが現状です。以上、展示がリニューアルされた水俣市の水俣病情報センターからお伝えしました。