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12年前の教訓「日頃からのつながり」住民へ…阿蘇災害時の"司令塔"元自衛官

2024年6月7日 10:00
12年前の教訓「日頃からのつながり」住民へ…阿蘇災害時の"司令塔"元自衛官
阿蘇市危機管理監 黒岩久男さん
これまでに何度も大雨の災害を経験した阿蘇市にこの春就任した防災のエキスパートに密着。
取り組みから見えるのは「日頃からのつながり」でした。

「大雨洪水警報発表中です」

5月に阿蘇市役所で行われた災害対応訓練。約40人が参加しました。

■阿蘇市危機管理監・黒岩久男さん
「状況は変わりません。今から災害が発生する可能性がありますので、情報収集に努めてください」

指揮を執るのは、黒岩久男さん(59)です。黒岩さんの仕事は今年4月に新設された阿蘇市の危機管理監。警察や消防など関係機関と連携しながら災害時の司令塔となります。

これまで阿蘇市の訓練は防災情報課と関係機関のみで行っていましたが今回から阿蘇市の8つの課も訓練に加わりました。黒岩さんは関係機関と阿蘇市側との橋渡しをする大切な役目を担っています。

黒岩さんが危機管理監になったきっかけの1つが、2012年に起きた九州北部豪雨です。阿蘇市では午前3時からのわずか4時間で384.5ミリと、1か月に降る半分以上の雨が降り県内で23人が犠牲になりました。

■阿蘇市危機管理監・黒岩久男さん
「絶対太刀打ちできないと思いました。ほんと無力だなと思いますね。」

当時、自衛隊員だった黒岩さんは土砂崩れが起きた阿蘇市の三野地区で報道陣の対応を行っていました。

■阿蘇市危機管理監・黒岩久男さん
「ちょうど正面になるんですけど、そこに暗橋がありまして、そこに石が詰まってたんですよね。それを重機で引っ張り出して、隊員が入って行方不明の方を捜索する。また重機で石を出してまた捜索するという活動をずっと見ててですね。」

母方の祖父母が暮らしていた阿蘇市。幼いころから慣れ親しんだ地域の被害をなくしたいと考えた黒岩さんは、2020年に自衛隊を退官。合志市で災害対応の部署を経験した後ことし4月に阿蘇市の危機管理監になりました。

関係機関とのスムーズな連携を訓練で確かめた黒岩さん。一方で、梅雨入りを前に心配なことが…

■阿蘇市危機管理監・黒岩久男さん
「住民とお話をしまして、まだちょっと意識が低いところも見受けられましたので信頼関係をまず作ることですね」

住民の中には行政の呼びかけだけでは避難をしない人も…そのための対策のひとつが定期的な防災に関する講演会です。
そして地元の区長には住民に率先して避難を促すよう伝えます。普段から顔が見える関係だからこそ伝わることがあります。

さらに黒岩さんは、行政の訓練と別に高齢者等避難が発表された想定で住民の避難訓練を企画しました。
狙いは「住民自らが考えること」。一時避難所や川の位置はどこか。避難の時に助けが必要な人はどこに住んでいるか…。

坂梨地区の住民など100人あまりが参加し、防災マップを作りました。参加した人は…

■参加者
「災害に気をつけようと思いました」
「やっぱり改めて自分の地区のところを見直せられたし、ここに本当(危険な場所ね)というところを確認した」
「もう早めの避難というのが一番の大事なところかなと思って。 ああいう地図ができてくると、私たちの後の人たちも使えるから助かると思う」

■阿蘇市危機管理監・黒岩久男さん
「黒岩が言うことだったら逃げるとかですね、私が言うことだったら逃げようかとかそれで地域の皆さんが一人の犠牲もなくみんなで助かるという思いからですね、そういうところがお手伝いができればなと、協力ができればと思っています」

行政と住民の信頼関係をつくり、災害対応を「自分ごと」に引き寄せて命を守る。黒岩さんの挑戦は続きます。

いざというときに頼れる人と人とのつながりは平時のときに少しずつ築き上げていくもの。
間もなく梅雨も始まります今のうちから顔が見える関係をつくっておくことが命を守ることにつながるのでは…。