まもなく開幕「おわら風の盆」伝統の橋渡し役担い「思いをつなぐ」
富山市八尾町では今度の日曜日(9月1日)からおわら風の盆が始まります。地域で進む少子高齢化により祭りの担い手が減りゆくなか、伝統をつないでいこうと取り組む男性がいます。助田記者の取材です。
宮野小学校 清水優作教諭
「ちょちょちょんのちょんひーふのみ、右、左…」
29日の富山市の宮野小学校。6年生が「おわら」の踊りを体験する特別授業が開かれていました。踊りを教えるのは担任の清水優作さん25歳。八尾町の福島地区でおわらの踊り手をしています。
宮野小学校教諭 清水優作さん
「先生がおわらを踊る中ですごい頑張っているのは、全員で踊りをそろえることです」
授業では、「おわら風の盆」の魅力を丁寧に伝えていました。
「おわらの魅力的なところはどこかというと、静かなところ。音をほとんど出さずに楽器のきれいな音色とか踊りの力強さ、手のしなやかさがよく分かるお祭りです」
富山市八尾町に秋の訪れを告げるおわら風の盆。父は地方の三味線、母は元踊り手の”おわら一家”で生まれ育った清水さんは、踊り手の中心的な存在として地区の若手をまとめてきました。
清水優作さん
「もうちょっと止まれる?そう!そうそうそうちゃんと止まって次の動作に」
踊り手は二十代半ばで引退することがほとんどで、清水さんも2025年を踊り手最後の年としています。後輩たちに伝統を引き継ぐため練習には熱が入ります。
清水優作さん
「福島のいいところって、踊りがすごく揃っているところだと思うんですね。音とか手の幅とかすごい揃ってきているので、そこが気持ちいいなと思っています。一番上の世代なので、後輩につないでいくというか、真似してもらえるような踊りを胸を張ってできたらいいなと思っています」
後輩を指導する一方、清水さんは踊り手引退後を見据えた取り組みを始めています。この日、閉店後の理容室に清水さんの姿がありました。
手にしているのは胡弓。踊り手引退後は、地方としておわらに携わろうと今年から胡弓の稽古を始めました。
「このテンポやちゃの。ちょっとリズムが少し悪いところがあるね。最終的に三味線と合わせんにゃあかんからで、唄を生かしてかんなんから」
師匠は伯父の清水茂幸さんです。
清水茂幸さん
「彼が最初に胡弓やりたいと言ったときに『お!ついにきたか!』と思ったんです。親父が三味線やってるから、胡弓やるんだろうなと思ってて」
江戸時代から300年以上続くおわら風の盆ですが、八尾地域では少子高齢化が進み、担い手不足が心配されています。新興住宅地のある福島地区は、他の地区に比べ若者は多いものの、伝統の継承は容易ではありません。
清水茂幸さん
「同じ町内でやってるし、ましてや甥であり、私は伯父であり、おわらに関して次に伝えられるというのは…うれしいですよね」
始めたばかりの胡弓はまだまだ一人前とは言えません。しかし、2026年の本格デビューを見据え、2024年には初披露したいと意気込んでいます。
清水優作さん
「おわらって、ずっと続いてきて先人が後継者に繋いできたお祭りで、伯父さんも自分におわらというもの、胡弓というものを繋いでくれようとしているので、それをしっかりと胡弓だけじゃなくて、思いも受け取って自分が弾けるようになって、先の話ですけど自分がまた繋いでいければいいのかなと」
踊りを後輩たちへつなぎ、自らは胡弓を受け継ぐ。そうやって守られてきた地域の祭りがあることを子どもたちにも伝えたい。清水さんは伝統の橋渡し役を担う考えです。
清水優作さん
「それぞれの地域にいろんなお祭りとか文化ってあるなって、いろんな学校に行って思うんですね。それってとても大事なことで、若者が八尾に来たときにこんな楽しいお祭りあるんだとか、自分もやってみたいなって、きれいだなって思ってもらえるように、自分たちも頑張って3日間踊りぬきたいなと思っています」