×

目撃情報は年間1000件以上、足をかまれるケースも…山口・周南市の野犬問題はいま

2023年10月18日 7:30
目撃情報は年間1000件以上、足をかまれるケースも…山口・周南市の野犬問題はいま

 山口県周南市の大きな課題として野犬問題があります。捕獲が続けられているもののいまもなお、市内の至る所で野犬の目撃情報が相次いでいます。野犬の実態を取材しました。

 周南市緑地公園は市内で最も野犬の目撃情報が多い場所です。

 昨年度、市に寄せられた野犬の目撃情報は1000件を超えます。山口県内で昨年度捕獲された野犬1069頭のうち、およそ半分が周南市…

 なぜ、周南市には野犬が多いのでしょうか?

(周南市の職員)
「昔遺棄・飼えなくなった犬を捨てていたのではないか緑地があるところで住み着きやすいところで住み着いてしまって増えていったのでは」

 さらにもう1つ、野犬が増えた要因があるといいます。

 それは、エサやり行為。市は10年以上前から条例によって野犬への「むやみなエサやり」を禁止しています。しかし、未だ人気が少ない時間帯にエサをやる人がいるといいます。

(パトロールの人)
「エサやりが来たと思って犬が飛び出してくるときがある、様子を見に来るエサをくれるかどうかまず普通の野犬と違って小さいときから餌付けされているからここは人間のエサ頼りで生きている」

 その結果、この場所に居着く犬は、人目のつかない場所ではなくエサをもらえる場所の近くに巣を作りそこで子を育てると野生らしからぬ特徴があるといいます。

 人間を恐れない野犬。ここ数年、野犬に足をかまれる咬傷事件や野犬に追われる事案が相次いでいます。今年7月にも、新南陽で散歩中の女性が3頭の野犬に出くわし左足の膝の裏をかまれています。

 周南市は4年前、県や警察と連携し連絡協議会を立ち上げ、捕獲檻の設置や餌やりを注意するパトロール、巣穴の撤去など野犬を少なくする取り組みを進めてきました。

 また、捕獲を担当する保健所では、去年からITを活用した大型捕獲檻を導入。檻に取り付けたカメラとスマートフォンを連動させリアルタイムで中の様子を確認、遠隔で檻を操作し捕獲できるようになりました。これにより、警戒心が強く夜間に行動する成犬を効率的に捕獲することができ、捕獲後すぐに保護できることから野犬への負担も少なくなるといいます。

 市内での、野犬の捕獲数は2019年度、841頭をピークに。昨年度はおよそ500頭と数は徐々に減少しています。

■「殺処分を防ぎたい」民間の動き

 防府市の住宅から離れた所にある保護犬のシェルター「まあくんハウス」。およそ120頭の犬が保護されています。

 この施設の代表理事を務める岡本裕二さん(66)。「殺処分になる犬を助けたい」と4年前、周南市で捕獲された犬の引き取りを始めました。 

 捕獲された野犬は健康福祉センターや動物愛護センターで一時的に保護されますが、期限を過ぎても譲渡先が見つからない場合殺処分の対象に。子犬はすぐに里親が見つかるそうですが成犬は期限までに見つからない事が多いと言います。

(岡本さん)
「ここに居る子達をうちらが(引き取らなければ)この世にいない子達です」「周南の保健センターに収容されている姿すごく恐怖におののいている姿を見てなんとか助けないといけないという思いでしょうね殺処分させてはいけないという」

 去年はおよそ100頭を受け入れその半数が新しい飼い主と出会いました。県によりますと2013年度、県全体で殺処分された野犬は1200頭。しかし、昨年度は35頭とこの10年間で大きく減少しています。

「犬の命をつなぐ施設」=まあくんハウス。

 エサなど物資は全国から支援がありますが光熱費やスタッフの費用などは岡本さんの貯金を崩したりお金を借りたりしてまかなっています。

(岡本さん)
「やめるにやめられなくなった、自分ももう年ですし、若い人に後次いでほしいけどこれは誰かが続けていかないといけない仕事と思っています」「自分の老後はどうなるんだろうというよりこの子達の寝る場所の方が先になりますね」

 周南市熊毛地区。岡本さんは、いま新たな保護犬のシェルターを建てる計画を進めています。周南市民に少しでも野犬の現状を知ってもらうためです。

 人を呼び込むイベントも計画していて年内の稼働を目指しています。建設の費用などは、クラウドファンディングで集まった資金を活用。

 運営費に、市のふるさと納税制度を活用できないかと考えています。

 いまだ市内各所で目撃される野犬。市民の安心安全を守るための捕獲。そして、犬の命をつなぐための保護。野犬をこれ以上増やさないための活動が続けられます。