「半島や離島が多い長崎でも孤立状態の集落が多く発生する事態に」能登半島地震について防災の専門家分析《長崎》
多くの被害をもたらした能登半島地震。
防災の専門家は、県内でも今回を上回る規模の地震が起こる可能性があるとして日頃からの備えを呼びかけます。
元日に発生した石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震。
防災工学が専門の長崎大学の高橋 和雄名誉教授は、強い揺れによって様々な災害が発生したことで被害が拡大したと分析しています。
(長崎大学 高橋 和雄名誉教授)
「今回は建物の崩壊のほかに、火災も起こって津波も起こっている。斜面崩壊も起きているから、ある意味では地震で起こるものがすべて起こった。同時多発的に災害が起こると、行政機関も被害を受けるから、初動態勢が組めなかった。いろんなことが複合的に起こった」
一方、「地震が少ない」とされている県内でも、今回を上回る規模の地震が起こりうると指摘します。
(長崎大学 高橋 和雄名誉教授)
「最大クラスのときにはM7.7になって、そのときには建物の崩壊、火災、斜面崩壊が(起こりうる)」
最も懸念されるのが、雲仙の活断層群。
県の予測では、2つの断層帯が連動した場合、今回の能登半島地震を上回るマグニチュード7.7の地震が発生する可能性があるとしています。
家屋の倒壊や火災、斜面の崩壊のほか、津波も発生するとのシミュレーションもあり、この場合の死者は2150人にのぼると予測されています。
(長崎大学 高橋 和雄名誉教授)
「M6クラスの地震が過去から見ると、5~60年に1回起こっているのは間違いない。今から100年前に島原地震が起きた。そのときにM6.9と6.5の地震が1日に2回起きて、26人が亡くなった。九州で最大クラスの地震が島原半島では起こっている」
加えて、調査が進んでいない地域に新たな活断層が見つかる可能性もあるといいます。
(長崎大学 高橋 和雄名誉教授)
「もっとそういうことが起こる可能性がある活断層も見つかるかもしれないから雲仙だけではなくて、県下どこでも(地震が)起こると考えておく必要がある」
今回の地震では、道路が寸断されることで孤立状態となった集落が多く発生しました。
高橋名誉教授は、半島や離島が多い県内でも、同じような事態に陥ることが考えられると話します。
(長崎大学 高橋 和雄名誉教授)
「長崎も半島地域や島嶼部が多いから孤立しやすいところもある。地震の場合は道路のほかに港湾とか(被害が出て)、船でも(物資を)運べないことが起こりうる。そうすると空からヘリしかないから、非常に孤立しやすいところが出てくるのは半島離島の宿命」
また、今回の地震では、倒壊した家屋の下敷きになって亡くなった人が多いと考えられていることから、古い住宅の耐震化を進める必要があると指摘。
加えて、「地域の助け合い」によって被害を軽減できると話します。
(長崎大学 高橋 和雄名誉教授)
「1980年以前のいわゆる旧基準の建築基準法で建てられた建物は、被害が大きい。古い耐震基準の建物の耐震改修が必要。これが一番被害を減らす大事な観点だと思っている。もう1つは地域の助け合い。初期消火とか倒壊家屋からの救助は、だれがどこに住んでいて出てきていないとか、隣近所が一番よく知っているから、今、近隣の付き合いは減っているけど、災害のときに助け合うような仕組みが本当に今は大事だと思っている」