世代や国籍、障害の有無を超え…島出身の女性が目指す“誰もが住みやすいまちづくり”
地域福祉などの分野で貢献のあった個人や団体に贈られる南海放送賞。その受賞者を紹介しています。
きょうは、世代や国籍、障害の有無を超えて「誰もが住みやすいまちづくり」を目指す今治市の「Grian(グリアン)」を紹介します。
先月9日。愛媛県今治市伯方島で、あるイベントが行われました。世代や国籍を超えて様々な人が気軽に集まれる交流の場がリニューアルされたのです。
ここを拠点に活動するNPO法人創作クラブ「Grian」。
田窪良子さん:
「地域の人たちがこんなに集まってくれて本当にすごく幸せだなと思うし、こういういろんな方が来てくれる場所にするためにリニューアルした」
住む地域が違うだけなのに…帰ってきた故郷で抱いた思い
「Grian」の代表を務める田窪良子さんです。
伯方島で生まれ育ち、社会福祉士として横浜で発達障害者の生活をサポートしてきました。
創作クラブ「Grian」代表理事 田窪良子さん:
「都会では(障害者の)支援の体制づくりがされていてある程度行き渡っていたが、島に帰ってくるとまったくの手つかずで。同じ法律の中で生活しているのに住む地域が違うだけで『なんなんだろうこの不公平感は』と」
世代や国籍、障害を個性としてとらえ「誰もが住みやすいまちづくり」を目指したい。
2013年、田窪さんは島内の女性ら20人で活動を始めました。
誰もが元気になれる居場所を作りたい…経験活かし障害者の社会参加をサポート
ケルト語で太陽を意味する団体名の「Grian」は「ここに来るとホッとする元気になれる場所にしたい」との思いから名付けられました。
「Grian」の活動のひとつが、障害のある人が社会参加するためのサポートです。
参加者の由美子さん:
「プレリードックあとオジロワシワオキツネザルなどいろんな絵を描いています」
田窪さん:
「由美子さんに描いてもらったシマシマの猫。スケジュール帳に使わせてもらっています。ありがとうございます」
由美子さん:
「ありがとうございます」
田窪さん:
「大好評です」
建物の入り口や壁のイラストもこの活動を通して描いてもらったものです。
田窪さん:
「実は彼らをサポートするといいながらも、彼らにその場をより豊かな場にしてもらうように(私たちが)サポートを受けていると感じます」
もっと島に溶け込めるようにと、島で開かれるトライアスロン大会にボランティアとしても参加しています。
参加者の母親:
「ものすごい楽しそうで色んなことをさせてもらって。チャレンジができて、いろいろ日常のことを教えてくれていて私も助かっています」
放課後は“子どもの第3の居場所”として 自然と人が集まるように
結成から11年、Grianの活動の幅が広がってきています。
家庭でも学校でもない、子どもの第三の居場所づくりもその一つです。放課後に子どもと遊んだり勉強を見守ったり。
キューバ出身の父親:
「大人は(日本語の)勉強になるし、子どもたちは練習になる。ゆっくり話してくれたりどんな子どもでどんなパーソナリティを持っているのかすごく分かってくれている。セカンドスクールみたい。毎日あればいい」
和やかな雰囲気に誘われて、近所のお年寄りもここを訪れ子どもたちと遊んでくれるようになってきました。
地域ぐるみの活動が評価 今治市の地域子育て支援拠点に
2020年には、世代を超えて地域ぐるみで島の活性化に取り組んでいる活動が評価され、内閣府特命担当大臣表彰に選ばれました。
田窪さん:
「今までサポートしてくれているメンバーもそうですし、地域の方々に本当に感謝の気持ちでいっぱいでした」
そして去年からは今治市の地域子育て支援拠点となり、子育て家庭の親子が交流する場所を提供しています。
島の人たちが繋がり、支え合い世代や国籍、障害のあるなしを多様な個性ととらえて「誰もが住みやすいまちづくり」を目指す。「Grian」の活動は続きます。
田窪さん:
「伯方島なりの島づくりっていうのがあると思うので、国際色豊かにいろんなことを楽しんで進んでいける島でありたいと思います」