地球上に7000種以上…でも研究者は世界で数人!?謎だらけの“発光生物”に魅せられた大学生
ご覧ください、この光。実はコレ、イルミネーションではなくて、生き物から放たれた光なんです。この”魅惑の光”で、世界へ飛躍しようとしている愛媛の若き研究者を取材しました。
南條さん:
「おっ!青く光ってますね。しかも、結構採れてるかもしれない」
「この沢山泳ぎ回ってるのが全部ウミホタルですね」
記者:
「すごい光ですね」
人気のない夜の海岸で笑みを浮かべるのは…愛媛大学理学部4年生の南條完知さん。
南條さん:
「何とも言い難い…魅惑の光ですね。僕はもうこれの虜になってますね。というか、もはや憑りつかれているのかもしれない」
これまでに75種類の発光生物を調査 世界初の発見も
彼が研究しているのは…?
南條さん:
「これが、イソコモチクモヒトデ。磯にいて子を持つので、コモチクモヒトデ。これも緑色に光るんですけど、けっこう美しいですね」
「これヨコスジタマキビモドキってすごい長ったらしい名前をしています。これも実は殻の内部が光るんですね」
発光生物!!
クラゲに、キノコ、ヤスデまで…全て、光るんです。
南條さん:
「大体75種くらいの発光生物をこれまでに生きたもので見ています。手当たり次第色んな生物を暗闇でつついて光るかどうか調べてます」
地球上には分かっているだけで、およそ7000種の発光生物が存在するそうです。
その一方で、国内で発光生物について専門的に研究する人はほんの数人。その生態や種類などについてはまだ謎が多いのだとか。
大学生になって発光生物の研究を始めた南條さんですが、すでに、すごい発見をしています。
南條さん:
「3種類のクラゲが実は光ることを世界で初めて発見しました。存在は知られてたんですけど、そのクラゲが光るということは 誰も調べてなくて、試しに刺激したら光ったので驚きました」
南條さん:
「全部光ってるじゃん!嘘でしょ!?」
「名前はまだ言えないです。今後公表するので是非楽しみにしといてください」
発光生物はどこにでもいる!?大学のキャンパスで見つけたのは
南條さんは4年間、日本各地で生き物を採集しては光るかどうか確認してきました。
南條さん:
「ほんとにどこでもいて。ちょっと土が出てて陽が当たらないような、苔が生えてるようなところがいいですね」
…どこにでもいて?その言葉を裏付けるようにこの日、発光生物を探していたのは…なんとキャンパス。
南條さん:
「大学内に普通にいる、光るミミズを探しに行きます」
“ホタルミミズ”
日本各地に生息していて体長は3~4センチほどと小さく、寒い時期に発見されることが多いそうです。
南條さん:
「こういう感じに黄緑色に光ります」
記者:
「これ体じゃないですよね?」
南條さん:
「光る粘液を出すんです」
外部から刺激を受けると黄緑色に光る粘液を出します。
ただ、何のために発光するのかは分かっていません。
南條さん:
「盛り上がってるフンの山がタワーみたいになってることがあって。その下にいる可能性が高いので、 少しスコップで掘ると見つかるかもしれないです」
実は南條さん、3年前に愛媛県内で初めてホタルミミズを確認したんです。発見場所は、理学部のゴミ倉庫の前。
南條さん:
「めちゃくちゃテンション上がって、でも光るまで分からないじゃないですか、ホタルミミズか。ちゃんと家に持って帰って、カーテンを閉めて暗くして、つついたら光ったのですごい嬉しかったですね」
南條さん、発光生物に魅せられたきっかけは??
南條さん:
「当時僕高校生だったんですけど、特に大学でやりたいこととか決まってなくて、その1冊の本をきっかけにこれだ!面白い!と思って研究を志しました」
役に立つかどうか 分からないからこそ面白い
オワンクラゲから「GFP」というたんぱく質を分離して紫外線を当てると緑色に光ることを発見し、2008年にノーベル化学賞を受賞した海洋生物学者・下村脩さんの研究を知ったことがきっかけです。
GFPを使ってアルツハイマー病にかかった脳の神経細胞が壊れる過程を観察できるなど、いまや医学や生物学の研究に欠かせないものとなっています。
南條さん:
「新しい発光生物を見つけたいですよね。例えばオワンクラゲも、光ることが知られていたから研究できたんですよね。新発見をすることで人類の知恵の輪が広がって。広がったことによっていろんな活動が見えてくるので、すぐ役に立つかどうかは分からない。役に立つかどうか 分からないからこそ面白い」
夜の海岸。南條さんの姿がありました。
南條さん:
「色々試してみたんですけど、ここが一番よく取れました」
夜行性の甲殻類「ウミホタル」を採集するためです。
「この穴からレバーの匂いを嗅いだウミホタルが入ってくると。可愛い名前してるんですけど肉食で、死んだ魚とかも骨だけにしてしまうような…獰猛な動物です」
記者:
「こんな風に泳ぐんだ」
南條さん:
「結構素早いですよね。こうやって刺激すると青い液を出します。上唇腺という分泌腺から黄色の発光物質を出して、これが海中の酸素と反応するとこうやって光が出ます。この光を見ると、研究のモチベーションになりますね」
今年、大学を卒業後県外の大学院に進学してさらに研究を深めるという南條さん。
南條さん:
「普段目をかけないところにも実は面白い生き物がいて、それにはまだまだ分かっていない謎がたくさん満ち溢れているので、光ったら、是非僕に教えて下さい!」
人類の更なる飛躍へ!南條さんの飽くなき探求の道を発光生物が照らすかもしれません。