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大切なのは「共助」のチカラ…大規模災害で長期化する避難生活を見据え 進む“日頃の備え”

2024年2月2日 18:53
大切なのは「共助」のチカラ…大規模災害で長期化する避難生活を見据え 進む“日頃の備え”
愛媛県内で進む“日頃の備え”

発災から1か月、今もなお石川県ではおよそ1万4000人が避難所などで避難生活を送っています。

大規模災害が発生すると避難生活も長期化するため、日頃の備えが重要です。愛媛県内で進む「備え」を取材しました。

避難所開設前にトイレを確保せよ 防災士たちが臨む「リアル避難所運営」

松山市で行われた「リアル避難所運営ゲーム」。災害時に実際に使う避難所や備品で訓練を行います。参加者は全員、防災士の資格を持つ市民。

松山市防災・危機管理課 門田侑子さん:
「避難所の開設と運営の手順を、みなさんで実際にやってみます」

まずは「避難所に到着してやること!」

松山市職員:
「⑦トイレを準備します⑩避難者を建物内に誘導します。これが全部終わって初めて避難所が開設できます」
「トイレの設置は、上から木が倒れてこないとか上から物が落ちてこない何かが倒れないという場所。安全な場所を選びましょう」
「どこが入り口ですか?これでは潜って入るしかない」
「どれが入り口?」

避難所を開く前にトイレの準備を整えるのにも理由があるようです。

日本防災士会愛媛県支部 小國恵子副支部長:
「避難所の中の安全が確認されるまでは中に入れない。それまでに人はトイレに行きたくなる。あちらこちらでトイレをされたら今日のような雨だと土壌汚染にもなる。地下水も汚染される。そのまま避難所に入ると感染源になるおそれ」

続いて、体育館の中では「住居エリア」「救護エリア」などそれぞれのスペースが分かるようにブルーシートを敷いていきます。

松山市防災・危機管理課 二宮達司副主幹:
「これができていない状態でやるぞとなったらなかなか、どこに何のスペースを設けるか とか、そこから話し合わないといけない。いかに事前の準備をしておくか」

外国人、赤ちゃんやペット連れなど様々な避難者を想定しながら課題を探る

避難者を受け入れる態勢が整うまでにかかった時間は1時間。

ここからは、運営スタッフと避難者の2つのチームに分かれてのリアル避難所運営ゲーム、スタートです。

仕掛け人チーム:
「これ、みなさんの演技力にかなりかかってますのでぜひ役になりきって。5番の方、ベトナム人になりきって、これを読んでください」

外国人役やペット連れなど、様々な人に扮した避難者が避難所へとやってきます。

順調に受け入れが進んでいるように見えますが…

参加者たち:
「できたら校舎の3階に持っていかないかんので、この状態で持って行って最後そこで完成した方がいい」
「ここで完成するとまずい?」
「ぐちゃぐちゃになる」
「ここじゃないんですか」

参加者たち:
「授乳したいんですけど、このテント借りていいですか?」
「持っていきましょう」
「いや、更衣室の中だと思うけどテントでするんですか?」
「そのためのテントではないの?」

テントを更衣室に運びますが…

「これ入らんやん。中で組み立てないかんしこれを何に使うかというのを」
「入れてみよう」

いざ、運営してみると、どこに何を設置するのか、どんな備品がいるのか…なかなかスムーズにはいかないようです。

避難生活では「共助」の力が重要 訓練を通して実感したことは

さらに…

「人が倒れて苦しそうにしている!救護班の方ちょっと来てください!」

救護を要請するも、みなさん目の前の作業に夢中で誰も気づきません。何度も大きな声で呼び続け、ようやく駆けつけてくれました。

さすがは防災士、駆けつけたあとは見事な連携で救命措置を行い、訓練は終了!

参加者:
「実際にしてみるとほんとに難しくてうまく動けないものだなと」
参加者:
「繰り返し訓練をすることが非常に大事になるということを実感」

松山市防災・危機管理課 竹場登副主幹:
「あらかじめこんなレイアウトにしておこうとか、誰がどの班をやるのかなど決められることは決めておいて、その上で訓練を重ねておくことが必要」

能登半島地震直後に被災地に入り、自治体のサポート業務にあたった愛媛県の佐々木一光さんは避難生活には“共助”が重要だと話します。

県防災危機管理課 佐々木一光さん:
「命が助かるのは『自助』でも、命が助かった後生活を続けるにはやっぱり『共助』の力がないと一人では生きていくのは難しい」

災害時の野菜不足解消へ 避難所近くに作った「備蓄畑」

かわって、こちらは宇和島市津島町。

Q.これは何を植えている?
BISAI-FARM 林昭子代表:
「ブロッコリーとキャベツとカリフラワーと20種類くらい植えていたが、収穫が終わったものもある」

この畑で行われている“備え”が…

「これはもう採れ頃ですけど、まだ何日か置いてはおけるかなというものなので、その間に災害が来た時用に置いています」

実はこの畑、災害時用の野菜を育てているんです。

Q.ギリギリまでこの畑で蓄えておく?
「そうです。だからここが備蓄している畑」

ギリギリまで収穫をせず畑に備蓄し、災害時には炊き出し用に使用するとのこと。

普段は、子ども食堂や一人親家庭に提供しています。

この“備蓄畑”には災害時のある課題が背景にありました。

林代表:
「災害が起きたときに野菜が不足しているということをいろんな所から聞いたので。東日本大震災の被災地の視察に行った時にもやはり野菜が不足していた。それが災害関連死につながるのではないかと思った」

去年、東日本大震災の視察ツアーに参加した林さん。避難生活での栄養の大切さを学び、地域の人に畑を借りて備蓄専用の野菜作りを始めました。

「西日本豪雨のときに吉田町で避難所生活をしていた人の弁当も野菜の比率が少なかったというのも被災者の方から聞いた。野菜が不足すると体調管理がなかなかできなくなるし便秘も起きやすくなるので野菜をとにかく摂っていただきたい」

日本栄養士会は、災害時すぐには生鮮食品などが届かず、タンパク質やビタミンなどが不足し、栄養バランスが崩れるおそれもあるため、野菜ジュースや機能性食品などの栄養補給を考えた備蓄を呼びかけています。

林代表:
「耕作放棄地がたくさんあるそれを利用しながら地域の人も入れてこういう農園ができていったら災害時に野菜不足は解消できるのではないか」

耕作放棄地の面積が全国で4番目に多い愛媛県。炊き出しなどに使えるよう避難場所に近い耕作放棄地を使用することで、農業が抱える課題も解決できればと考えています。

林代表:
「多世代交流も含めてそこからこうするんだよと、年配の方から子どもたちに教える。交流の仕方も顔の見える関係性ができてくるので助け合いができるというも考えている」

愛媛県の想定では南海トラフ巨大地震が発生した場合、発災から1か月後の避難者は県内で55万9000人近くにのぼるとされています。

県防災危機管理課 佐々木一光さん:
「(事前の備えは)誰にでもできます。本人がやる気、地域がやる気になれば絶対にできる今日からでいいので1歩2歩少しずつ前に進めてほしい」