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「ここにたどり着けない人もいる」3年で1万食提供の“子ども食堂”で…見えてきた課題と目指す支援 #令和の子 #令和の親

2024年4月21日 18:00
「ここにたどり着けない人もいる」3年で1万食提供の“子ども食堂”で…見えてきた課題と目指す支援 #令和の子 #令和の親
こども食堂「Mitsu想」で提供1万食目を受け取る男の子

愛媛県松山市三津にある子ども食堂「Mitsu想 ミツオモイ」。

コロナ禍で行き場を失った子どもたちの居場所を作ろうと、河﨑元(かわさき・はじめ)さん(45)が2021年に開設し、週に一度、近所の親子連れやお年寄りを中心にお弁当を提供してきました。

オープンから間もなく3年を迎える先月、累計提供数は1万食に達しました。1万食目を受け取ったのは、近くに住む廣川奏太くん(6)。「ここのお弁当はおいしくて好き」と笑顔を見せます。

ギタリストの父親・叔哉さん(46)は「夫婦共働きでまだ小さい子どももいるので、こうして時々お弁当を頂けるのは非常に助かりますし、息子も楽しみにしています」と話します。

この日、用意されたお弁当は60食。河﨑さんの母親・豊田みちるさんがメニューを考え、朝からご近所さんと3人で丹精込めて作っています。開設当初は1日30食限定でスタートしましたが、すぐに予約でいっぱいとなり、用意する数も徐々に増えていきました。

みちるさん:
「自分の孫たちに作っているような感じです。色々入れたら喜ぶだろうなと思いながらあれこれ作ってしまうので毎回赤字ですが、子どもたちの笑顔を励みに、できるだけ続けていきたいですね」

子どもは無料、大人は300円と格安のお弁当。60食のうち半分は子どもたちに手渡され、近所のお年寄りなども多く購入していくといいます。

子ども食堂が開催される木曜日以外も、飲食店として軽食やドリンクを提供する「Mitsu想」。放課後や休日になると、自然と近所の小学生たちが集まってきます。

河﨑さんが「Mitsu想」を開設したきっかけは、小学校のPTA会長を務めたことでした。地域の情報を得る中で、不登校、引きこもり、貧困、自殺など、子どもたちを取り巻く様々な問題を知ったといいます。

「自分にできることは何か…」と始めた毎朝の通学路の見守り活動は、今年で8年目となりました。当時、子どもたちに覚えてもらうために新調したという白い縁の眼鏡は、河﨑さんのトレードマークになっています。

その後コロナに直面し、休校や公民館の閉鎖が相次ぐなか、「Mitsu想」を子どもたちに開放。今では河﨑さんを“おいちゃん”と慕い、ゆるやかに集う子どもたちの確かな“居場所”となっています。

全国の子ども食堂の数は過去最多を更新するも…経営は厳しく

全国の子ども食堂を支援する「認定NPO法人むすびえ」は2023年度、全国の子ども食堂の数は9131か所で過去最多を更新したと発表。コロナ禍を経て、地域のつながりを取り戻していこうという意識が高まっています。

河﨑さんは「各小学校区に子ども食堂がひとつあることが理想だと言われる中、松山市には現在53校の小学校があるのに対し、子ども食堂はおよそ30か所。8校あるのに子ども食堂は1か所だけという地区もある」として、もっと増やしていきたい考えです。

しかし一方で、今後は収入を得る仕組みを考えていかなければ、継続した運営や新たな開設は難しいと言います。

子ども食堂が広く知られるようになり、お米や野菜を寄付してくれる企業や農家も出てきました。

また、河﨑さんは月に一度、提携しているスーパーの「フードドライブコーナー」に寄付されたものを受け取りに行きます。食用油、レトルト食品やお菓子類などが多く、子ども食堂で活用されるほか、利用者たちに手渡されています。

しかし、まだまだ子ども食堂の運営は厳しく、Mitsu想では普段の飲食店営業や弁当販売の売り上げなどで運営費を賄っているのが現状です。松山市から年間12万円の補助金が支給されていますが、一回分の材料費だけでも1万円以上かかるといいます。

河﨑さんは、自分たちの力だけで継続していくには限界があるとして、今後、企業と連携した「企業型子ども食堂」の開設や、松山市と連携し、子ども食堂の運営を事業化していくことを目標にしています。

Mitsu想で出会ったシングルマザーたち

その中でも、河﨑さんが注力していきたいというのが「ひとり親家庭」の支援です。

Mitsu想では、これまで約50組のひとり親家庭が子ども食堂を利用していて、取材した日も複数のシングルマザーたちに出会いました。

アヤカさん(仮名・30代):
「歯科衛生士です。離婚して、小5と5歳の子どもを一人で育てています。今、仕事から急いで下の子を保育園にお迎えに行ってきた帰りで…ここは時々利用させてもらっていて、いつも助かっています」

マリナさん(35):
「私は現在求職中です。高2と中1の子どもがいます。実家で父と暮らしながら飲食店で働いていましたが、去年子どもが不登校になったのがきっかけで、仕事を辞めてしまって。最近父が亡くなり、親戚に援助してもらいながら何とか暮らしていますが、いつまでも頼ってばかりいられないので。悪いことは重なるものだなと落ち込むこともありますが、周りに助けてもらっているので頑張っていきたいです。ここに来るのは2回目で、お菓子も色々頂いて…本当ありがたいです」

一番の課題は 「本当に必要としている人にどれだけ届けられているか」

河﨑さん:
「ひとり親家庭の親御さんは特に遠慮しがちです。『私なんかが行っていいのかな』と、まだまだハードルの高さを感じているようです。『お弁当は子どもの分だけで良いです…』という人もいます。それでも、この食堂に来てくれるだけ、まだ安心しています。ここにたどり着けない人もいるんです。特にしんどい思いをしている若いお母さんがいる、ご飯を食べられていない子どもがいるというのも聞きます。そういう人には、こちらから出向いていきたいと思っています」

河﨑さんは2025年度から松山市や児童相談所と連携し、市内のひとり親で支援が必要な家庭を対象に月6000円分の食料を自宅に届けるなど、食を通じた新たな支援事業のスタートを目指しています。

「子ども食堂の一番の課題は、“本当に必要としている人にどれだけ届けられているか”ということ。ただ、実際に対象を制限するのは難しいので、別枠でそれに特化した活動を始めようと。今まで利用している人が利用しづらくならないよう、毎週木曜の子ども食堂は継続しつつ、並行して支援活動をしていく必要がある」

松山市でのモデル事業となることを目標に、まずは近隣の30世帯を対象に支援を届けたいという河﨑さん。

「児童相談所や行政が家を訪ねてもなかなか顔を見せてくれない家庭が多いのも現状です。そういう方たちには専門的な知識をもったスタッフが、必要としている食料を事前に聞き取ったうえで訪問し、扉を開けてもらう、地域との接点を持つきっかけにしていきたい」

ここに来るハードルは低くていい

また、「子ども食堂に行く=貧困」だと思われるのでないかと懸念し、利用をためらう人は少なくありません。河﨑さんはそのようなイメージを払しょくし、誰もが気軽に利用できるオープンな場にしたいと話します。

「私自身、コロナ禍で収入が減り苦労しました。その中で“助け合い”の必要性を強く感じたんです。ひとり親でも、たとえ両親が揃っていても、週1回はご飯を作らない日があってもいいですよね。お弁当を食べながら、家族でゆったり団らんできる時間を持ってもらえればいいなと思っています」

(取材・文 / 津野紗也佳)

※この記事は、南海放送報道部とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。