タオル産地・今治で70年…染色会社のアイデア商品が話題!ユニークな発想を生みだすヒントとは
全国に広く知られる「今治タオル」。時代とともに新しい商品が続々と開発されています。
その中で今回、タオル産業を下支えする染色会社に注目。
“染まるモノは染めてみる”がスローガンの会社が生み出す新商品とは。
先月、愛媛県庁で行われた21世紀えひめの伝統工芸大賞の表彰式。
この賞は県内の伝統工芸品や特産品など、美術的・市場的価値の高い商品の発掘と販路拡大を目指そうというものです。
オリジナル生地を使った「デニム風シャツ」 タオル製造の高度な技術と実用性が評価
次世代を担う技術者が製作した29作品の中から「大賞」に選ばれたのは…西染工の関原豪さんの作品、タオル織機で織ったデニム風の色合いのプルオーバーシャツです。
西染工 商品事業部 関原豪さん:
「今治タオルで培った染色技術を活かして出来上がった商品」
「今治タオル」の名で全国に広く知られる今治。市内には80を超えるタオル工場があり時代に合わせた新商品が次々と生みだされています。そんな今治で70年に渡り、タオル産地を下支えしてきた会社があります。
繊維製品の染色加工会社、西染工。関原さんはこの会社の商品事業部で、新商品の開発に携わっています。
関原さん:
「オーバーサイズシルエットというんですけど、柔らかくて涼しいデニム特有のごわつきがない。さっと着られるのを目指しました」
“なんでもやってみろ”精神で 欲しいモノを形に
作品のこだわりは生地に柔らかい風合いと適度な強度をもたせるために、あえて旧式のタオル織機を使用したこと。
関原さん:
「実際に自分で織った生地で商品を作りたいと思いがあり、僕が欲しいと思ったので作りました」
もちろん染色会社なだけに色にもこだわっています。
「(染色工程で)ムラになりやすい。それを均一に染めるところは現場の職人さんの技が必要」
"染まるモノは染めてみる"がスローガンの西染工。
その染色技術でデニム風の色合いに染め出来上がったのがあのプルオーバーシャツなんです。
関原さん、こだわりは分かりましたが…
関原さん:
「社長も特に売れるものを作れという指示はなくて、そもそも売れるものって僕もわからないしわかったらみんな作ると思いますし。ただ欲しいものを作りました」
"自由なアイデアで欲しいモノを形にする"それが西染工の企業風土のようです。
関原さんの上司、福岡さんもその企業風土に染まった一人です。
西染工 商品事業部 福岡友也部長:
「社風としてなんでもやってみろというのが許されていますので、ある程度常識の範囲で勝手にやっております」
廃棄される厄介者が 逆転の発想で大ヒット!
実は西染工、2年前ほど前にある取り組みで一躍名を馳せました。その中心人物だった福岡さん。
福岡部長:
「『THE MAGIC HOUR』というアウトドアブランドを立ち上げました」
商品の第1号がこちら。
「着火剤です」
「今治のホコリ」という商品名でおなじみとなりました。
乾燥して火が付きやすく、繊維製品を扱う工場では火災を引き起こす厄介者だったホコリ。その特徴を逆手に取り商品化しました。捨てるしかなかった綿ぼこりの量をおよそ70%削減できたといいます。
福岡部長:
「弊社は元々染色業なのでエネルギーを大量消費する。タオルを染めるためには生地を濡らしてそれをまた熱をかけて染色して、熱をかけて乾かすとエネルギーを大量消費する。かなり前から省エネ委員会を立ち上げてできる活動をしてきた。ブランドを立ち上げるのであれば、地球環境を考えた製品づくりをと考えていた」
環境に配慮した製品づくりが話題を呼び、去年トレンドを扱う雑誌の「地方発ヒット商品」の大賞にも選ばれました。
Q.給料アップですか?
福岡部長:
「残念ながら変わっておりません(笑)考えたものが形になるのはやっぱり楽しいことで、それができる環境はありがたい」
「今治のホコリ」に続き、今回関原さんが考案したプルオーバーシャツもエネルギーの使用量削減を意識しています。
社員一丸となって省エネ活動 環境負荷の少ない加工技術を導入
関原さん:
「染色工程で精錬漂白という生成のものを白くする工程の一部を省くことでエネルギーの削減に繋げています」
デニムの色合いを楽しめる製品にと、通常の染色工程を一部省きました。
関原さん:
「使っていくうちに色落ちしていく。その表情を出すためにそういう作業をしています」
その結果、従来の染色工程と比べ電気・ガス、水の使用量がそれぞれおよそ40%削減できたといいます。
西染工のブランド「THE MAGIC HOUR」のアパレル商品第1号となったプルオーバーシャツ。
福岡部長:
「彼のこだわりも入っているし染め方も染屋としてのこだわりがあったのでそこが受賞の理由かなと」
プルオーバーシャツは西染工のホームページで販売しているほか、来月中旬からおよそ1か月間、東京の大手総合雑貨店で期間限定で販売される予定です。
関原さん:
「僕が出したアイデアを採用してくれる上司なので作りたいものは今後も作っていきたいと考えています」
新しいアイディアの商品を生み出す染色加工会社。新しい発想の中に、企業が元気になるヒントがあるのかもしれません。