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愛媛県の教員志願倍率が過去最低「2.1倍」に…なり手不足に新たな一手!高校で行う県内初の取り組みとは

2023年11月29日 17:50
愛媛県の教員志願倍率が過去最低「2.1倍」に…なり手不足に新たな一手!高校で行う県内初の取り組みとは
高校で行われている県内初の取り組みとは

「2.1倍」これは、今年の夏に実施された来年度の県内の公立学校の教員採用試験の受験倍率です。9.6倍だった10年前の5分の1ほどにまで低くなっていて、記録のある1992年度以降、‟過去最低”となりました。

愛媛県は、「教員志願者の増加」を目指して、県外の試験会場を開設や、一次試験が免除される推薦特別先行枠を拡大。

また、今月新たにいま不足している‟講師”の希望者を増やそうと、教員免許を持ちながら、教職についていない、いわゆる‟ペーパーティーチャー”を対象にした研修会を実施。研修会には76人の参加があったそうです。

さらに今、“高校”でも将来の教員を育てようという動きが始まっています。松山市内の高校で行われている県内初の取り組みを取材しました。

東温市立北吉井小学校。

子どもたちと一緒にトランプで遊んだり…掃除をしたりするのは学校の先生?ではなく…

女子児童:
「私にはお兄ちゃんがいるけど、 お兄ちゃんより大きいから、すごい年上の人と遊ぶのは初めてですごく楽しかった」

来春開設「教員養成講座」に向け 教職めざす高校生たちが実習へ

松山聖陵高校の生徒たちです!

松山聖陵高校特進コース2年 中林想さん:
「古典や漢文をやる楽しさを自分が子どもたちに教えられたらいいなと思って」

松山聖陵高校特進コース2年 梶岡咲良さん:
「お話を沢山聞いてあげたいので 話し掛けてもらえるような雰囲気の先生になりたいです」

来年度、松山聖陵高校が開設する『教員養成講座』の準備期間として、今年5月から月1回、小学校で実習をしているのです。

『教員養成講座』の対象は、将来、教員や保育士などの‟教職”を志す特進コースの生徒。「総合的な探究の時間」などを利用して、保育園や小学校など実際の教育現場で行事の手伝いや授業の支援などにあたります。

例えば…

松山聖陵高校特進コース3年 公原亜季歩さん:
「考えた跡とかを書いてる子もいて、こうやって考えたんだなと分かって楽しいです」

普段、先生たちが授業の合間をぬって行う宿題の丸つけ。

東温市立北吉井小学校 渡部謙吾教頭:
「その時は、サービス!とかって書いてあげると喜ぶと、やっぱり嬉しいと思うよ、次は頑張ってねとか」

女子生徒:
「花丸があんまり綺麗にかけないので、にこちゃんに」

渡部教頭:
「いつもとは違ったコメントをもらったり、可愛い丸をつけてもらったりすると、受け取った子どもたちも嬉しい気持ちになるのかなと」

子どもたちも…

1年生 女子児童:
「一緒に遊んでくれて楽しい」
1年生 男子児童:
「楽しい来てくれたら。一緒に遊んでくれるけん。走るのも速い!」

東温市立北吉井小学校 石丸敬二校長:
「高校生たちが将来教員になろうと活動している姿を高学年が見ているというのは、自分のキャリアについて考えるすごくいいモデルを見てて、いいきっかけをもらってるなと感じています」

特進コースの生徒約100人のうち4割が「教員の仕事に関心あり」

『教員養成講座』の狙いは大きく2つ。

実際の教育現場での‟体験”を通して自分が教師に向いているかどうかを確かめ、高校生のうちにキャリア意識を高めてもらうこと。 

そして、将来的な‟教員のなり手不足”の解消です。

松山聖陵高校 八木俊博校長:
「早い段階でしっかりとした目的意識を持って1人でも多くの教員を育てていきたいということでスタートしました。教員というのは非常にブラックというようなイメージが定着しつつあるんですけども、そうではない本質的な教員の魅力を生徒たちが学んでくれたらいいなと思っています」

松山聖陵高校が特進コースの全生徒に行ったアンケートによると、およそ4割の生徒が「将来教員を目指している」または「教員の仕事に興味がある」と回答したそうです。

現在、松山市の平井保育園でも実習を行っているほか、4年前からは月1回土曜日に、地元の中学生を対象にした『土曜塾』を開講。

特進コースの生徒たちがボランティアで宿題などの学習支援を行っています。

中2男子:
「年代が近いから親近感が湧いたり、テストの点数上がりましたね。教え方が分かりやすいなって」
松山聖陵高校1年 渡部允さん:
「嬉しいです。めっちゃ嬉しいです」

特進コース1年 西元星月さん:
「自分の力にもなるし、教えることで中学生のみんなにも分かってもらえる時とか嬉しい」

「自分が教壇に立ったら…」教員になりたい気持ちが強まった生徒も多く

この日の実習は、若手教師の授業見学。

公原さん:
「児童が発表したことに対してのひとつひとつの反応とか、そういうところがすごく勉強になって、自分が将来あの立場になったらどうやってやるかな?とか想像することができています」

熱心にメモを取っていた高校3年の公原さん。教師を志したきっかけは、中学3年の時の担任の先生の存在です。

公原さん:
「私が悩みを抱え込んでしまう性格だったのもあって、すごくその度に優しく声をかけてくれる先生の存在が私が学校に行き続けられた理由だと思ってるので、私にしてくれたみたいに一人一人に時間を注いで、皆に寄り添える先生になりたいなというのがきっかけです」

実習を始めて半年。北吉井小学校で実習に参加する生徒16人にアンケートを行ったところ、14人が「教員になりたいという気持ちが強まった」と回答したそうです。

公原さん:
「今日は鬼ごっこで、逃げる側と追いかける側が人数が同じではなくて、人数違ったやん!と怒る子がいて。そういう時になんて声掛けしてあげたら納得いくのかとか、瞬時に考えて反応してあげるということが私にはまだ無理だなと思って、すごいなと思いました」

「しんどい事ばっかりじゃない」2年目の教員が高校生たちに伝えたいことは

この日は、教師2年目の先生2人との座談会。高校生たちから、次々と質問が投げかけられます。

教師2年目 田中理紗子先生:
「(1年目は)何が自分が分かってないのか、何ができているのかも分からなかったのでそれが一番つらかったです」

高校生:
「学生時代にしとったらよかったなと思う事はありますか?」
田中先生:
「遊ぶこと!私は大学生の時に47都道府県のうち、30くらいいったんですよ旅行に。その体験を、例えば社会の授業のときにその都道府県のことを話したりできるので」

5年松組を受け持つ、田中先生。

田中先生:
「Bはたたみ10枚子ども5人。どっちが混んでいるといえますか?」

田中先生:
「できとるじゃん!」
児童:
「いえーい」

教育実習先で授業をする楽しさを知り、教師になることを決意しました。

男子児童:
「ちょっと厳しいところもあるけど、よく授業内容を詳しく分かりやすく説明してくれるいい先生だと思います」

女子児童:
「一番話しやすい」

女子児童:
「ちょっと宿題は多いけど、優しくていい先生です」

1週間に受け持つ授業はおよそ20時間。土日は趣味の岩盤浴でリラックスしながら、翌週の授業の準備をしているそうです。

今、教師を志す高校生たちに伝えたいことは…?

北吉井小学校 田中理紗子教諭:
「(講座は)すごくいい経験になると思うし、それが判断材料になると思うので、積極的にやってもらいたいなと思います。しんどい事ばっかりじゃない。普段から子どもの成長をずっと見られるから、楽しいところもやりがいもしんどい所以上にあるので、それを感じてほしいなと思います」

11月10日、高校生たちの姿は体育館に。

保護者向けの音楽会を翌日に控えた6年生から高校生へ、演奏のプレゼントです。

高校生:
「明日は本番で人もたくさん来るので緊張すると思うけど、小学校最後の音楽会なので楽しんで下さい」

高校生:
「合唱から合奏にうつる時の足音とか楽器を準備する音をもうちょっと静かにできたらいいんじゃないかと思いました」

演奏後の児童への講評も、先生になるためのトレーニング。

6年生:
「皆さんに的確なアドバイスをもらって、次の日に対するモチベーションを作ることができました」

6年生:
「自分たちの家族にかっこよく見せたいと思います。ありがとうございました」

子どもたちにも、しっかり伝わったようです。

松山聖陵高校の『教員養成講座』は来年度、特進コースの希望者を対象に開設され、3年後、伊予高校など2校の県立高校でも教員養成コースを開設する予定だということです。

松山聖陵高校特進コース2年 中林想さん:
「子ども達と触れ合って元気をもらったりして(仕事は)大変だと思うけど、なりたいなという思いも強くなりました」

松山聖陵高校特進コース3年 公原亜季歩さん:
「(先生たちは)こんなところにやりがいを感じているんだなとか、ほんとに大変なことがいっぱいあるんだなというのを感じて、更に教師という仕事に対して尊敬の気持ちがすごく出てきて。児童ひとりひとりの存在を肯定してあげられるような教師になりたいなと思ってます」