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【追求】なぜ騙されてしまう? 「SNS型投資詐欺」と「ロマンス詐欺」が急増中…巧妙化する手口とは

2024年6月14日 19:46
【追求】なぜ騙されてしまう? 「SNS型投資詐欺」と「ロマンス詐欺」が急増中…巧妙化する手口とは

全国的に急増しているSNSを使った詐欺。中でもここ最近、被害が目立つのが、「SNS型投資詐欺」と「SNS型ロマンス詐欺」だ。

一度は、テレビや新聞などで耳にしたことがあるのではないだろうか?

警察庁の統計によると、全国では去年一年間で「SNS型投資詐欺」と「SNS型ロマンス詐欺」の被害が合わせて3846件確認され、被害総額は約455億円あまりに上った。

愛媛県内で見ると「SNS型投資詐欺」が43件、「SNS型ロマンス詐欺」が33件の合わせて76件。被害総額は約5億6000万円に上る。(令和5年・愛媛県警調べ)

さらに「SNS型ロマンス詐欺」を詳しくみると、実は最終的に「投資」名目でお金をだまし取られたケースが25件、その他の名目が8件と結局、最終的に被害者の多くが「投資」名目でお金をだまし取られている。

■巧妙化する手口

愛媛県警によると、こうしたSNS型の詐欺は被害が長期的かつ、高額なのが特徴だという。以下は県内で被害件数の多い「SNS型投資詐欺」の被害の一例。

被害者は松山市に住む40代の女性。県内で最多の被害額となる現金約8500万円をだまし取られた。(※県警が「SNS型投資・ロマンス詐欺」として統計を公表して以来)

女性はSNSで知り合ったAから投資の勧誘を受け、その後、Aに紹介されたBから教えられた投資アプリをインストール。捜査関係者によると、女性はまず相手が指定した口座に50万円ほどを振り込んだという。すると、その後女性はアプリ内で利益が出たことを確認。これを信用した女性はネットバンキングなどで十数回にわたり約6100万円を振り込んだ。

そして、女性がお金を引き出そうとすると…相手から「口座が凍結されており、解除のためにも検証金が必要だ」などと言われ、さらにあわせて約2400万円を振り込み、被害総額は約8500万円に及ぶ事態となった。

■騙されるワケ

ではなぜ、騙されてしまうのか?

捜査関係者によると、上記の被害例の中で紹介されたアプリは実在する有名投資アプリを装ったもので、名前や内容も同じだったという。さらに利益が出ているように見えたのは、犯人側が意図的に操作していた可能性が高いとみられるという。ここで重要なのは、「投資」名目が前提であること。

この手の詐欺で被害に遭った人は少なからず、素直な気持ちで投資し、お金を増やしたいという気持ちだっただろう。その中で、アプリ内で利益が出ていれば疑わないことは無理もない。さらに「投資」であることから、すぐにお金を出金するよりは、アプリ上でまとまった大きな利益が出てから引き出そうとするケースが多くなるだろう。これがSNSを使った2つの詐欺の手口の巧妙さを物語っている。まさに被害が長期化し、高額となる要因の一つである。

日本証券業協会が行ったNISA口座開設・利用状況調査結果では、NISAの総口座数の推移は年々増加傾向にある。こうした、投資への関心が高まる社会情勢も犯罪グループは巧みに利用しているのかもしれない。

■警察の対策急務

こうした状況を受け今、愛媛県警は様々な対策に乗り出している。

5月27日。県警は松山市の商業施設でSNS型詐欺を中心に被害防止を呼び掛けるイベントを県内で初めて行った。

「だまされん診療所」。SNSやインターネットの利用などに関するアンケートに答えてもらい、結果に応じて処方箋ならぬ啓発チラシを配布した。

診断を受けた県民からは「テレビを見ていても他人事だが、ここで聞くと俺も危ないかなという気持ちになった」などと感想が寄せられ、自分事として感じてもらうのには効果的な活動だと取材した記者は感じた。

そして、きょう。県警本部の会議室には県警の山浦親一本部長をはじめ、刑事部門の幹部ら50人ほどが集まった。議題は「特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺、匿名流動型犯罪グループへの対策強化」。

対策強化が急務であることが伺える。

冒頭、県警の山浦親一本部長は急増するSNS型投資・ロマンス詐欺について、「これ以上の被害の拡大を食い止めるため、効果的な広報・啓発、あるいは投資詐欺サイトに誘導する偽広告対策、抑止対策についても取り組んでいただきたい」と訓示した。

被害は今年に入り、さらに深刻度を増している。会議で明らかにされたSNS型投資・ロマンス詐欺の速報値は5月末までで合わせて69件、被害総額は約6億3000万円。記事の冒頭で示した去年一年間の県内の被害総額約5億6000万円をすでに上回っているのが現状だ。

全国すべての警察では今年4月、SNSを使った詐欺や匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」に対応するため「特殊詐欺連合捜査班」が設置された。広域で犯罪を続ける詐欺グループに対し、全国の警察が一体となって捜査を行い、摘発する仕組みだ。

全国、そして県内でもこれだけの被害が相次いでいる今、警察の総合力、愛媛県警の意地に期待したい。と同時に、私たちも今一度、自分の投資口座、SNSやインターネットの利用環境を注意して確認したり、「投資勧誘」についてより慎重になりたい。