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消えゆく「部活動」と進む「地域移行」…地域に根差したスポーツクラブは課題解決のカギとなるか

2023年12月2日 8:30
消えゆく「部活動」と進む「地域移行」…地域に根差したスポーツクラブは課題解決のカギとなるか
スポーツの普及を下支えしてきた“部活動”はどうなるのか

時代とともに幅広い世代に親しまれてきた“スポーツ”。そのスポーツの普及を下支えしてきた“部活動”が今、大きく揺らいでいます。

消えゆく部活動…いかにして地域移行を進めるか。愛媛のスポーツ現場でのモデルケースから、その可能性を探ります。

全校生徒425人の川之江北中学校です。

四国中央市立川之江北中学校 森実直人校長:
「一年生が4クラスあったのがもう(今年)3クラスになって来年も30人くらい減る見込み/以前もここに勤務していたがその時は7クラスあったので」

人口およそ8万2000人の四国中央市。県の推計では2060年には、およそ半分の4万1200人にまで落ち込んでしまうとされています。

森実校長:
「前回ここに勤務していた時代からいうと部活動の数は変わっていない、変わっていない中で子供も減って、先生も減って今の(部活動の)数を将来的に維持できるかといったらもう維持できない状態が必ず来ると思うので今どうしていくかが大きな課題」

“部活動が消えていく…”

その現実に、子どもたちは。

女子生徒:
「普段はかかわれない先輩とか後輩とかと積極的にかかわれる機会なのでそこはいいと思っている」

サッカー部所属の男子生徒:
「(部活動がなくなるのは)いやですね。みんなと一緒に部活する時間が楽しいから」

陸上部顧問の“原点”は地域のスポーツクラブだった

午後4時すぎ、部活動が始まりました。陸上部の顧問を務めるのは鈴木真衣先生。自身も短距離選手として中学・高校時代、陸上に打ち込んできました。

鈴木教諭:
「やっぱり感慨深いものはあって、慣れ親しんだ今いるこの北中が母校になるので。自分が今度は教えて子どもたちの未来を作っていける立場であるというのはすごい誇りに思う」

そんな鈴木先生が陸上を始めたのは…

鈴木教諭:
「小学校の高学年の時に地域の川之江の陸上クラブの練習は参加していた」

原点は“学校の部活動”ではなく、地域のスポーツクラブである「川之江陸上クラブ」にあると言います。

ヨーロッパの制度に感銘受け設立 3歳から70代まで1800人が在籍してきた陸上クラブ

四国中央市の妻鳥小学校でてきぱきと準備作業を行う石川幸雄さん(62)。30代の頃、石川さんがこの地に設立したのが「川之江陸上クラブ」です。

石川さんと子供たち:
「駅伝出たい人こっち希望の区間、長さが違うから駅伝でたい人こっちね」

やりたい競技を、やりたい時に。一人一人の自主性を尊重するのがクラブの方針です。

石川さん:
「ひょっとしたら中には愛媛県のトップレベルに行けそうな子もいるが、そればっかりを考えてやるのではなくて、何が楽しいかで試合の練習をするのが楽しい場合もあるし、遊ぶのが楽しい場合もあるしそれぞれの思いで色々やれる幅を持っている」

そしてもう一つ、このクラブの大きな特徴が…

石川さん:
「100mの県の(マスターズ75歳以上の部)記録保持者です」

幅広い年齢層です。現在クラブ最高齢となるこちらの70代の女性。

70代の女性:
「もう孫みたいなものですからねみんな」

3歳から70代まで。クラブには創設以来、これまでに1800人以上が在籍してきました。

大学生の頃、ヨーロッパで古くから地域に根付いているスポーツクラブの存在を知った石川さん。オリンピック選手が地域のお年寄りや子どもたちと一緒にスポーツに励んでいることに深い感銘を受けたと言います。

石川さん:
「自分が作ったら全部その場で解決というか対応できるかもしれないということで(愛媛県の)端ですけど頑張っていったらみんなが元気になれるのかなと思うが自分にやれることなんか限られているけど自分としては川之江を強くしたいという思いはもともとありましたので」

愛媛の東の端、川之江から愛媛の陸上を盛り上げたい。強い信念のもと立ち上げたあの日から23年。石川さんが作り上げた“地域に根差したスポーツクラブ”が課題解決のカギを握る時代がやってきました。

2022年に国がガイドライン策定 「休日の部活動」の地域クラブへの移行目指す

講師:
「生徒が地域においてスポーツを行う機会を確保するためには質・量ともに十分な指導者が不可欠であると」

11月中旬、松山市内に集まっていたのは県内のスポーツ指導者たち。議論されていたのは‟部活動の地域移行”についてです。

県スポーツ協会 尾和祝専務理事:
「地域が面倒を見る、複数の小学校や中学校が集まって教育活動をしていく、そういう方向にならざるを得ないと思う。地域の人が一緒になって盛り立てていくというのは(地域の)コミュニケーションというか交流にとっても非常にこれからは大事になってくる」

公立中学校の部活動をめぐって去年、国は生徒数の減少や教員の長時間労働などを受け、休日については地域のクラブなどへ移行することを目指すガイドラインを策定。

愛媛県でも今年9月に、独自の方針などを盛り込んだ推進計画を策定しました。

トップアスリートに聞く 地域移行を成功させるために必要なことは

この、時代の大きな流れをトップアスリートはどのように受け止めているのか。

土佐礼子さん:
「本当にこの堀之内は外のお堀の周りもよく走っていたし、城山の山の中もよく走っていた ので思い出深いです」

女子マラソンで2度のオリンピックを経験し、現在は三井住友海上陸上競技部のアドバイザーを務める土佐礼子さんです。

土佐さんが陸上競技に打ち込むようになったのは、松山商業高校時代に陸上部に入ったことがきっかけでした。土佐さんにとって、部活動はまさに陸上人生の礎です。

土佐さん:
「やはり部活だからやっていたというところがあるかもしれないので、部活動がなくなってしまうとスポーツから離れてしまっていくというのも心配なところもある」

土佐さんは、地域移行を成功させるためには“地域の子どもは地域で育てる”という意識が不可欠だと訴えます。

土佐さん:
「ボランティアというので続けていくのが難しいのなら有料、資金面で補助があって、(地域に)受け皿があってそこに子どもがパッと行けるような環境を整えてあげないといけない」

いかに「クラブの活動費や遠征費などの資金」を確保するのかも課題に

県内で先進的に部活動の地域移行を進める松山市の小野地区です。

小野中学校の軟式野球部を指導するのは、総合型地域スポーツクラブ「ONOスポーツクラブ」の篠原昌也さんです。

小野中学校では2018年から土日や祝日の軟式野球部の活動をこのクラブが担うスタイルをとってきました。監督や保護者らと連携を図りながら指導にあたります。

ONOスポーツクラブ 篠原昌也クラブマネジャー:
「子供たちの成長のために何が必要かということを先生と僕たち外部の指導者が認知認識を共有して指導に当たることが必要」

ただ、理念や熱意だけでは地域移行を成し得ることができないのも事実です。

篠原さん:
「やっぱり活動していくうえでスポーツは特にお金というのが必要になるので」

大きなネックとなるのが、日々のクラブの活動費や遠征費などの資金です。ONOスポーツクラブは地元の企業から支援金という形での援助を受け、ユニフォームや道具類の購入にあてています。

篠原さん:
「保護者の負担を減らす意味でも、地元の企業がこうやって子供たちのためにと応援していただけるというのがすごくありがたいし感謝している」

皿ヶ嶺の冠雪が観測され、県内に真冬の寒さが訪れたこの日…再び川之江陸上クラブを訪ねました。

女性ランナー:
「楽しいですね、走ることが」

川之江陸上クラブの長距離チームのメンバーが朝練を行っていました。

同じ頃、小学校の体育館では…

清家記者:
「今、みなさんウォーミングアップ中なんですが、本当に幅広い世代の人がスポーツを楽しんでいます」

石川さん:
「いつも通り歩きます、スタート!手を振ってー」

石川さん指導のもとおよそ60人のメンバーが体を動かしていました。走ることだけにはこだわらず、縄跳びやボールを使ってスポーツの基礎を養います。

中学生:
「色々な運動ができて楽しいです」

60代男性:
「楽しいです。学生時代にやる本格的な競技と違って色々楽しみながらできるというのが、孫と一緒にできるというのがいいですね」

中には…

菅原大我さん(クラブ歴21年):
「(今年は)4m80cmという記録だが、インターハイで言ったら8位(入賞)するくらい」

棒高跳びのマスターズ30代の部で愛媛県記録をもつ現役アスリートも。

菅原さん:
「続けていくことが生きるという力になっている。陸上を人生の生涯スポーツにしようかなと思ったきっかけになったクラブチームですし、こういう小さい子たちに逆に今度僕らが教えてあげられる」

スポーツを愛する地域の大人たちが、子どもたちがスポーツに打ち込める場を提供し、その魅力を伝えていく。部活動の地域移行のモデルケースとなり得るひとつの“カタチ”がここにありました。

石川さん:
「今の子どもたちが昔のように色々な遊ぶ場や運動する場を要求しているのでその子たちの期待に応える。色々な形を変えてでもそういったことがもっと充実するような両面ですよね、 強化と普及を目指して川之江陸上クラブの挑戦ということでやっていきたいと思う」
 
地域のスポーツクラブの活動の現場には子どもたちの、そして地域の人たちの笑顔があふれていました。

地域の住民:
「夜でも昼でもね、子どもが次々来てくれると嬉しい」

未来を担う子どもたちのために。

土佐さん:
「あ、これやってみようと思ったのがどんどんのめり込んでいって世界に羽ばたいていく選手もいると思うので、きっかけって大事だなと思うので、そのようなきっかけを子どもたちに大人が与えてあげるというのも大事」

その地域ならではのスタイルで。

篠原さん:
「子どもたちを守り育てるための手段としてこういう場をこれからも地域の皆さんと一緒に残し続けたいなと思っている」

石川さん:
「子どもたちが部活動がない時代になったけど、自分はそのスポーツができるよというそのようなことがたくさんできる地域や時代になっていくようにできたらなと」

“消えゆく部活動…”そして進む地域移行。

それは、人口減少の時代にスポーツの力で地域にコミュニティを存続させていくチャンスなのかもしれません。