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【山岳救助の最前線】21歳の新人女性隊員が挑む!富士山での過酷な救助現場に密着(every.しずおか特集)

2024年1月24日 13:55
【山岳救助の最前線】21歳の新人女性隊員が挑む!富士山での過酷な救助現場に密着(every.しずおか特集)
コロナの制限が緩和された2023年、多くの登山客で賑わう富士山では遭難者からの救助要請も増加。その現場に急行し緊急事態に対応するのが、静岡県警・山岳遭難救助隊。ベテランの男性隊員にまじり遭難者を乗せた担架を運ぶのは、新人女性隊員の杉本瑞歩巡査・21歳。

山岳救助隊に憧れ、警察官になって3年。大好きな山で人を助ける仕事がしたい!2023年、富士山でデビューした女性・山岳遭難救助隊員に密着しました。

幼いころからの憧れ“山岳救助隊”

静岡県側の富士山で山開きがあった2023年7月10日、山岳遭難救助隊の臨時派出所が開設され、出発式が行われました。その中に、ひとり、女性の姿が。

2023年に山岳遭難救助隊としてはじめて富士山での任務についた、御殿場警察署の杉本巡査です。

(杉本瑞歩巡査)
「山が好きだったので、そこで人を助けるっていうかっこいい仕事があると小学校のときに憧れて。好きな場所で仕事ができるというのが魅力」

静岡県警の山岳遭難救助隊は、山の経験や知識が豊富な66人で構成され、年間100件以上の山岳遭難に対応しています。杉本巡査は御殿場警察署で唯一の女性隊員です。

静岡市出身の杉本巡査は、小さいころから登山やキャンプをする機会が多く、そこで山岳遭難救助隊に出会い、山で人を救う姿に感銘を受け「いつかは自分も」と憧れるようになりました。

(杉本瑞歩巡査)
「警察官って悪い人捕まえるイメージだったんですけど、山岳救助隊を知って、かっこいいでずっと追いかけてきた」

そして、救助隊になるための第一歩として、3年前に警察官となり、御殿場警察署の原里印野交番に配属されました。

(杉本瑞歩巡査)
「落とし物や道案内を主に仕事としている。毎日仕事の内容が違うので、事案にあった対応をするのが大変」

警察の山岳遭難救助隊になるためには、自ら立候補してその意思を示すとともに、上司からの推薦が必要となります。厳しい環境での救助は強じんな体力と精神力が求められるため、杉本巡査は警察官になってからも地道なトレーニングを重ねてきました。

(杉本瑞歩巡査)
「山岳救助隊があるところに行きたいというのはあったので、きつくても乗り越えたら救助隊になれると思って、それが頑張れる材料というか」

こうした努力が実り、2022年の秋、憧れの山岳遭難救助隊に指名されました。2023年の夏山シーズンは、交番勤務の傍ら富士山須走口5合目の臨時派出所でも勤務にあたります。

初任務での試練

富士山で初めての勤務となったこの日は、須走口6合目まで、遭難している登山者がいないか声がけしながらパトロールを行います。救助に使う道具をつめたリュックを背負いヘルメットをかぶると、一気に気持ちが引き締まります。

ベテランの男性隊員に歩調を合わせて、力強く登って行きます。しかし…

(杉本瑞歩巡査)
「気づけばどんどん広がっていく」

先輩隊員に後れを取りながらも、なんとか6合目に到着しました。しかし、まだ呼吸も整わないうちに先輩隊員のもとへ緊急連絡が!

(隊員)
「砂走り下山中、26歳女性、糖尿病、場所はどこですか?」

なんと初日から救助要請が入ったのです。

(隊員)
「どう容態は?もう歩けないって言ってるから、背負って行こうか」

まだ実際の救助を経験していない杉本巡査の顔にも緊張が走ります。現場へ急行する隊員たちはパトロールのときよりもスピードがあがり、杉本巡査との差はどんどん広がっていきます。

先輩たちから遅れようやく現場に到着すると、そこには、座り込んでいるアメリカ人女性の姿が。友人と登山中、8合目付近で体調が悪くなり登頂を断念し下山していましたが、その途中で動けなくなってしまったというのです。

(隊員)「富士山は初めて? 2人とも初めて?」
(友人)「そうです」

過酷な山岳救助の“リアル”

女性の容態を見た隊員は、急いで下山する必要があると判断。隊員が交代で背負って下山することになりました。

(隊員)
「気持ち悪かったら早めにいってください」「1、2、3、ゆっくり!」

杉本巡査も、同じ女性としてそばに寄り添います。滑りやすく、足場が悪いため細心の注意を払いながら一歩ずつ慎重に進みます。

しかし、人を背負いながらの下り坂は訓練を積んだベテラン隊員でも過酷な道のりで、時によろけて倒れこんでしまうことも。

ベテランの男性隊員でさえ四苦八苦する救助作業…現場には緊迫した空気が流れます。その中で、杉本巡査も、自分にできることを探し積極的に救助に参加します。

途中、連絡を受けて5合目から登って来た消防隊も合流。持ってきた担架に女性を寝かせて、みんなで持ち上げ搬送していきます。これには杉本巡査も先頭に立って加わります。

(隊員)
「1、2、3、行けそう?」「あともう少し!がんばれ!」

普段は1時間ほどの道のりを、3時間かかってようやく下山することができました。女性は待機していた救急車で病院に搬送され、その後、無事に退院して残りの旅行を楽しむことができたそうです。

自分の役割と新たな決意

初めての任務を終えた杉本巡査。御殿場警察署で唯一の女性隊員として、自分を生かす方法を見つけたようです。

(杉本瑞歩巡査)
「体力面で追いつけない場所でも、女性ならではの悩みなどで、そこで自分はもっとカバーできたらと思います。もっともっと志を強く、山岳救助隊として頑張っていきたいと思いました」

(静岡第一テレビ every.しずおか 2023年7月24日放送)