自慢の肉も仕入れ減少 ドライバー不足が表面化 物流を守る試行錯誤 2024年問題・北海道
ことし4月から、トラックドライバーの残業規制が強化されました。
輸送力の不足が懸念される「2024年問題」が現実のものとなり、物流業界は対策に躍起です。
“経済の血液”とも言われる物流を維持するための、トラック業界の試行錯誤を追いました。
ドライバー不足で仕入れ回数減少
札幌市清田区のスーパーに次々と商品が運ばれてきました。
この店のウリは「肉」!
豊富な品ぞろえが自慢で、さらに値段も…
(買い物客)「肉はすごく安くて、いつも買いに来ています」
(買い物客)「いろいろ工夫して安くしてくれているので、ありがたいと思います」
(金澤記者)「100グラム当たり55円の鶏もも肉など価格の安さが自慢ですが、2024年問題の影響を受け始めているといいます」
3月までは週5回だった仕入れ。
4月からは週3回に減らさざるを得なくなりました。
はやくも忍び寄るドライバー不足の影響です。
店側も手をこまねいているわけではありません。
まとめて仕入れやすい冷凍肉に力を入れ、効率化を進めていますが、先行きを尋ねると…
(カウボーイ北野店 真島佑衣店長)「不安なところはたくさんありますけど、お客さんの価格に転嫁しないように、自社のコスト削減なりいろいろ取り組んでいきたいと思っています」
物流の「2024年問題」。
運送業の残業時間が年間960時間に制限され、その結果、人手不足が深刻化する問題です。
輸送力も低下し、わずか6年後には道内の荷物の27%が運べなくなるという試算まであります。
規制開始から1か月が経った5月。
“経済の血液”の流れを止めるな…
札幌市清田区の飲料工場です。
この道14年・ベテランドライバーの津崎洋介さんが積んでいるのは、北見行きの荷物ですが…
(記者)「きょうはどちらまで?」
(幸楽輸送 津崎洋介さん)「きょうは旭川まで行きます」
え?北見行きの荷物なのに旭川まで?
これこそが注目の対策、「リレー輸送」です。
札幌から往復で9時間を超える北見市ですが、旭川で荷台を切り離し、別のトレーラーと交代。
リレーのように荷物を受け渡します。
札幌には別の荷物を旭川から運ぶため、無駄がありません。
(幸楽輸送 津崎洋介さん)「やっぱり楽ですよね、大体半分の距離で済むので。家族と過ごす時間が多ければ多いほどいい」
勤続14年。
言葉の端々に、物流を中心で支えるベテランドライバーの誇りがにじみます。
(幸楽輸送 津崎洋介さん)「物流無くして世の中成り立つとは思えない。だからこそもっと物流業界が盛り上がって、若い人やいろいろな人がトラックドライバーになりたいよねと、そういう風になればいい」
札幌を出発してから3時間20分。
津崎さんは旭川の流通拠点に到着しました。
ここからがリレー輸送の真骨頂です。
津崎さんのトレーラーが荷台から離れると、すでに待機していた別のトレーラーが荷物をバトンタッチ。
この車が旭川から北見まで運ぶのです。
運送会社は、業界のイメージアップに効率化は不可欠と認識しています。
(幸楽輸送 不動直樹社長)「とにかく寝ないで走って収入を得るんだというドライバーが昔は多かったが、毎日家に帰れたりちゃんと自分の働き方、残業時間も管理してくれることを、実は若いドライバーはそちらを重視しているので、物流の認識が変わる機運があるのはありがたい」
物流の効率化の動きは、陸だけではなく空にも。
新千歳空港に、おなじみのマークを背負った飛行機の姿が。
宅配大手が4月から運航を始めた、貨物の専用機です。
(阿部記者)「ヤマトホールディングスの貨物専用機には、10トントラック5から6台分の貨物を運ぶことができるということです」
背景には増加一途の宅配便の需要がー
ネットショッピングなどの浸透で、年間の宅配便はいまや50億個に上ります。
長距離輸送トラックの代替手段としても、飛行機の強みを活かしたい考えです。
(ヤマトホールディングス 栗栖利蔵副社長)「一気に目的地に運べるということのニーズは非常に高い。2024年問題も含めてお客さまのニーズにもしっかりと応えられる」
宅配を巡ってはもうひとつ、ドライバーに負担がかかる大きな課題があります。
「再配達」の増加です。
そこで…旭川市の住宅街に構えたこの施設。
看板には「マトメル」と書かれています。
(金澤記者)「マトメル旭川では、様々な通販会社や運送会社の荷物をまとめて受け取ることができます」
棚にはおなじみの通販サイトなど各社から届いた荷物が並びます。
物流大手の「セイノー・ホールディングス」が運営し、登録さえすれば各社の荷物を「まとめて」無料で受け取れます。
こちらの利用者は、2つの通販サイトから届いた荷物をまとめて受け取りました。
(利用者)「日中仕事をしているので、帰りにここで受け取った方が楽なのと、1か月くらい預かってもらえるので利用しています」
(セイノーホールディングス 村木範行課長)「例えば、100個の荷物を配達に行ったドライバーはだいたい10個は持ち帰るというデータになっている。我々や物流各社にとってマイナス。そういったところが解消できればいいなと思っています」
運送会社の垣根を超えた「マトメル旭川」は、去年8月に実証実験としてスタートしました。
リピーターも増え、会員数は100人まで伸びました。
荷物を受け取るだけじゃなく、地元の飲食店で人気の杏仁豆腐や、地場の新鮮な野菜セットを限定価格で販売するなど、目指すは「地域に密着した物流拠点」です。
(セイノーホールディングス 村木範行課長)「これから増える荷物の打ち手のひとつとしてこの場所があったらいいと思いますし、ニーズがもしあれば北海道から全国に広げていく、そんな絵も描けたらなと思っています」
地域物流に詳しい北海商科大学・相浦教授によりますと、残業規制による人手不足の影響が大きく出てくるのは、ドライバーの残業時間の調整が始まる9月~10月ごろとみられます。
この時期は農作物の運搬が盛んになることもあり、継続的かつ速やかな物流の効率化が求められるということです。
「物流の2024年問題」、荷物が届くという“当たり前”を維持するため、物流のプロたちの試行錯誤はきょうも続いています。