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【交通・乗り物NEWS】被災から2年 運休が続くJR米坂線の未来は 廃線となった県外の路線を通じて考える 《新潟》

2024年6月30日 17:20
【交通・乗り物NEWS】被災から2年 運休が続くJR米坂線の未来は 廃線となった県外の路線を通じて考える 《新潟》

おととしの豪雨で被災し、一部区間で運休が続くJR米坂線。
JRは「単独での復旧」は難しいとの考えを示しました。復旧後も利用者の増加が見込めない厳しい現実があります。

赤字路線が全国で課題となる中、廃線となった路線を通じて米坂線の将来を考えます。

被災から2年

新潟県の北部を襲ったおととし8月の豪雨。新潟と山形を結ぶJR米坂線は、一部が今も土を被ったままです。

坂町~今泉間で運休が続く

坂町駅(新潟県村上市)~今泉駅(山形県)の区間で運休が続き、沿線の住民たちは早期復旧を望んでいます。

関川村の村民
「私たちもみんな利用した路線。あの線路の姿を見ると悲しくなります」
「(車は)時間が正確じゃないし(バスは)本数も少ない。電車はあったほうがいい」

「JR単独での復旧は難しい」

5月29日に行われた米坂線の復旧検討会議。JRが一石を投じました。

JR東日本新潟支社 三島大輔企画総務部長(当時)
「当社の運営を前提とした復旧は民間企業として持続可能性の観点から難しい」

年間18億円の赤字

利用者の少なさから年間18億円の赤字を生んでいた米坂線。

JRは復旧費用を86億円と試算。
仮に復旧したとしても利用者の大幅な増加は見込めません。

沿線自治体はJR単独での復旧・運営を求める

一方の沿線自治体は、あくまでJR単独での復旧・運営を求めています。

関川村 加藤弘村長
「赤字路線は切り捨てて、もうかるところに経営資源を投入というのは、一般の民間企業ならありうるかもしれないが、鉄道事業者としてはそれでいいのか」

JRが示した運営パターン4案

JRは米坂線の今後の運営パターンとして、4つの案を示しています。

被災前と同様にJR単独での運営。

運営主体と維持管理を分ける上下分離方式。

第3セクターによる運営。

バスへの転換、つまり廃線です。

災害をきっかけに廃線

災害をきっかけとして、廃線となった路線が岩手県にあります。

かつての駅舎は解体され、そこは草原となりました。

草に覆われた線路が、ここに列車が走っていたことを伝えます。

JR岩手大川駅の跡地です。

「兵どもが夢のあと」

近くで暮らす石井良二さんが、かつての駅を懐かしみます。

「ここに駅舎があったんだ。本当に、兵どもが夢のあと」

岩手県を走っていた岩泉線

ここは岩手県岩泉町。人口はおよそ8000人です。

総延長38.4kmの「岩泉線」が山の中を走り、隣の宮古市と結んでいました。

土砂崩れで脱線事故

2010年に土砂崩れによる脱線事故が発生。

その後の調査で、100か所以上で岩盤の崩壊と落石のおそれがあることがわかりました。

2014年に廃線

130億円に上る復旧費用。さらに翌年には東日本大震災に襲われました。

JRは復旧を断念し、2014年に岩泉線は廃線となりました。東日本管内で初めての廃線です。

利用者数が最下位

廃線前、岩泉線の利用者数は東日本管内に67ある在来線のうち最下位。平均利用者は46人(1日1㎞あたり)。赤字路線でした。

岩泉町の石井良二さん
「うちらにしても新潟にしても収益にならないところは(JRは)割愛したい。(JRの気持ちは)わからないでもない」

町の中心にある岩泉駅は町有の施設として、切符売り場もそのままの姿で残されています。

岩泉町役場に務める應家義政さん
「(事故後)JRの資金で道路のトンネルを作ったんですけれど、前後(の道路)が直っていないので、まだ通院の高齢者たちがきついんです」

「秘境路線」とも言われ、その風景が乗る人を楽しませた岩泉線。

観光客
「自分が乗っていた鉄道が廃線になったら悲しい」

住民の思い

住民
「線路がつながっていれば日本全国つながっていたわけですから。1本でも(線路を)取れてしまえば断ち切れてしまう」

石井良二さん
「やっぱり寂しいわね。地元の唯一の交通手段だったしね」

「公共の足がなくていい、という話は出ていない」

JR東日本は2023年11月、平均利用者数(1日1㎞当たり)が2000人未満の区間を発表しました。
県内では羽越線など7路線10区間が該当。人口が減り続ける地方にとって鉄道の存続は大きな課題となっています。

米坂線をめぐり、JRは「バス転換という選択肢を取った場合には鉄道を並行して存続させることはない」としています。

JR東日本 白山弘子 新潟支社長
「(米坂線沿線は)自家用車の利用がかなり進んだ地域であると我々は考えております。いわば鉄道離れが進んでいるということはひとつ言えるかなと感じておりました。地域の公共の足がなくていいという話は全く出ていないです。最終的なゴールがどうなるにしても前に向けて建設的な議論をしていきたいと思っています」

利用促進運動を展開へ

公共交通としてJR単独での復旧・運営を求める沿線自治体。今後、利用促進に向けた運動を展開していく考えです。

花角知事
「国においても、もう一段、鉄道事業者(JR)が復旧しやすい制度にしてもらいたいというお願いをしています」

関川村 加藤弘村長
「鉄路によるJRの運営を我々は望んでいるわけで、どういう形で折り合いをつけるかは県とも相談したいと思っています」

地域の住民も早期復旧を求める署名を集め、JRなどに提出しています。

住民有志 野田尚道さん
「地元がこれだけ復旧を待ち望んでいることを伝えたい」

運休から間もなく2年。岐路に立つJR米坂線。

公共交通をどう維持していくのか。本格的な議論がこれから始まります。


2024年6月20日「夕方ワイド新潟一番」放送より