【特集】65年の歴史に幕 新潟駅前スイッチバック式の万代口バスターミナル 最後の日《新潟》
3月30日に廃止となった新潟駅前の万代口バスターミナル。昭和、平成、令和と時代が移り変わる中で長年愛されてきました。この場所に関わる人たちの思いと、最後の日を取材しました。
最後の日、3月30日午後10時
3月30日午後10時の新潟駅前、多くの市民がこのバスターミナルにカメラを向けていました。
女性
「最後って聞いたのでちょっと見納めってことでバスターミナルの写真を撮っていました。駅から帰る時は絶対ここから乗っていたので、変わるのがちょっと寂しいなって思います」
男性
「私が生まれたころからずっとあるターミナル。この風景が普通のありふれたものだったので、ちょっと(なくなる)実感がわかない」
持ってきたカメラ3台
バスターミナルの真横で熱心に写真を撮る男性。自家用車で十日町市から駆けつけた高橋純さんです。バスターミナルの最後の瞬間を収めるため持ってきたカメラはハンディカメラ、タブレット端末、一眼レフカメラのなんと3台。
高橋 純さん
「このバスターミナルが今日限りだということで、私も新潟県に住むものとしてやっぱり最後を見届けたいなという気持ちがありまして。やっぱり歴史を重ねてきた場所でもありますし、寂しいけれども本当にお疲れ様という気持ちです」
1日約1000台が発着
どこか懐かしい香りがする新潟駅前万代口バスターミナル。
2番線から13番線まであるため横に長い屋根が目印になっており、1日あたり約1000台が発着・1万5000人が利用してきました。
1958年に完成
1958年6月5日、新潟駅の移転に伴い造られたこのバスターミナル。
鉄骨式の丈夫な造りで、完成の6年後に発生した新潟地震にも耐えました。
65年間、変わらぬ姿
メンテナンスを繰り返し利用されてきたバスターミナルは、今も昔も変わらないその姿で65年間、市民の足を支え続けてきました。
スイッチバック式
またこのバスターミナルは笛の音を合図にバスを後退させ、ターミナルに入庫するスイッチバックという方式が採用されています。
「名物だと思われている」
新潟交通 運営センター係員 木村 雅弘さん
「笛の吹き方に決まりがあるんですよ。あるんですけども、だんだん皆さん長い間やっているうちにアドリブがちょっとずつ入って、それが名物だって思っている人もいるんじゃないですかね」
木村雅弘さん、運転手を経てこのバスターミナルで15年間、誘導係員として活躍 してきました。
新潟交通 運営センター係員 木村 雅弘さん
「フロントタイヤが切れている時はこの感じだといけるなとか、もうギリギリだけどフロントタイヤが前を向いているとぶつかっちゃうなとか、その時はストップかけます。自分の昔の経験でわかるので」
様々な行き先へ向かうバス。そして大勢の人が行き交うこの場所での仕事は一筋縄ではいかず、幅広い仕事があると言います。
道案内をしたり、忘れ物を探したり
新潟交通 運営センター係員 木村 雅弘さん
「誘導係員なりたての頃は本当に笛を吹くことだけを考えていたが、やってみたらいろいろやることがあった。お客さんに道を案内したり、忘れ物を探したり、バスが遅れてきたときにはお客様に放送でご案内したり。やっぱり思っていたのと、やってみたのでは違いました。やっぱり不思議ですよね。私が生まれるずっと前からあって、自分の代でなくなるというのは」」
誘導係員を通して様々な経験を重ねた木村さん、今後は新しいバスターミナルの案内係として勤務します。
バス運転士に転身
バスターミナルで活躍する役割といえばもうひとつ、バス運転士も。
駒井麻生さんは、トラックドライバーからバス運転士に転身しました。
「1回で入庫できないと迷惑がかかる」
新潟交通 東部営業所 リーダードライバー 駒井 麻生さん
「新人の頃は特に朝のラッシュ時間帯ですから、入れ替わり立ち代わりバスが出入りしていますので、一発で決められないと他のバスにも迷惑がかかるみたいな。うまく自分も入れられるか緊張したのを思い出しますね」
今やこの道32年のベテランで運転士のトップ、リーダードライバーとして、現在は路線バスに加え高速バスも運転しています。
バスターミナルに“助けられた”
新潟交通 東部営業所 リーダードライバー 駒井 麻生さん
「一度仙台の帰りに雪の影響で高速道路が通行止めになりまして、新潟到着が大幅に遅れて午前2時頃になったことがありました。その際バスターミナルの屋根の下にバスを横付けして、始発電車が動くまでお客様に仮眠を取っていただいたっていうことがありました。天候が悪かった時期ですので、屋根の下にいるっていうだけで安心感がありましたね。入社以来長いこと親しんできたターミナルなので、新しいターミナルでは、あの笛の音は聞こえないので少し残念」
最後の日、3月30日夜11時
3月30日午後11時。
最終バスを見納めに、駅前には歩道から溢れんばかりの人が集まりました。
バスターミナルをねぎらう電光表示
バスで埋まるターミナル。
電光表示にはバスターミナルの65年間を労う言葉たちが。
新潟交通 乗合バス部 渡辺 健 部長
「65年間、新潟駅万代口バスターミナルをご利用いただきまして誠にありがとうございました」
昭和、平成、令和と長い時間を市民と共に過ごしたバスターミナル。
最後の仕事
新しいバスターミナルはバスを後退させる必要がないため、笛吹きと呼ばれ親しまれていたバスの誘導係員も役目を終えようとしていました。
誘導係員人生の集大成として木村さんも最後の仕事を全うします。
最後のバスが発車
そして、最後の時…。
最後のバスが発車していきます。
「終わっちゃった」
新潟交通 運営センター係員 木村 雅弘さん
「あっという間で本当にびっくりしますね。名残惜しいというよりも『あー終わっちゃった』みたいな。本当にほっとしている。無事終わって良かったです。シンプルに無事終わって良かったと思っております」
さよなら万代口バスターミナル
最後の役目を果たした新潟駅前万代口バスターミナル。
65年間の歴史に幕を下ろしました。
夜が明けて新しい朝を迎えた新潟駅。
また、ここから新しい歴史が始まります。
2024年4月12日「夕方ワイド新潟一番」放送より