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【特集】「お前は、ばかか」 担任の発言がいじめ認定・・・言われた生徒は不登校に 学校・教育委員会の対応は 《新潟》

2024年3月23日 17:01
【特集】「お前は、ばかか」 担任の発言がいじめ認定・・・言われた生徒は不登校に 学校・教育委員会の対応は 《新潟》

田上町の中学校で担任が1人の生徒に発した「お前はばかか」という発言がいじめ行為の1つとして認定されました。第三者委員会の報告書ではその一言が生徒間のからかいを助長させた可能性も指摘。教員の言葉がクラス全体に与える影響とは・・・。

16歳の息子が学校へ行かなくなる

16歳の息子がいる田上町に住む夫婦です。2021年、当時、田上中学校の2年生だった息子は体の不調を訴えて学校に行かなくなりました。

男子生徒の父
「夜寝れないとか言い出して、あとは過呼吸になったりとか。2年生の夏休み明けから学校にほとんど行かなくなってしまって」

いじめではないか・・・。

学校に訴え続けた保護者が第三者委員会の調査報告書を受け取ったのは2月のことでした。学年を対象に行われたアンケート調査をまとめ、「いじめはあった」と結論付けられた報告書。その行為の1つとして認定されたのが・・・。

教員の一言

「お前は、ばかか」

報告書によると、これは「教員」が男子生徒に発した一言だといいます。中学1年生の時でした。

男子生徒の父
「担任として英語のテストの(クラスの平均の)点数をあげようとしてミニテストをしてその時のテストの点数がうちの子が悪くて、それで同じクラスの他の生徒たちの面前で『お前は、ばかか』って。普段泣きながら帰ってくることはないので私たち2人ともよく覚えている」

助長させた可能性

報告書では、担任の発言のほか別の生徒が運動が苦手な男子生徒に対し「そんなこともできないのか」と言ったことなどがいじめとして認定されています。

ただ、教員の心ない言動がいじめを行った生徒を助長させた可能性も指摘されています。

中学2年生の夏ごろから不登校となった男子生徒は、つらい経験がフラッシュバックして自宅の壁を殴って穴をあけたことも・・・。

人と会うのを恐れる

その後、再び学校に通うことができないまま2023年、中学校を卒業しました。

現在はフリースクールに通っていますが通学は週1回のみ。人に会うことを恐れて外出もままならない状態だと言います。

男子生徒の母
「本音を出していくことが難しくなっているときもあって、すごく深いところまで(心の傷が)入っていますので、なかなか回復するのにも時間がかかるんだろうなって。」

教員による発言について・・・。上越教育大学でいじめや生徒指導の研究に取り組む高橋知己教授は、子どもたちは教員に影響されて同じような言動をとることがあると指摘します。

「子どもたちは教員に影響される」

上越教育大学・高橋知己 教授
「先生方に気をつけていただきたいのは、1人の子どもに対する発言であったとしても1クラスの子どもたちがその先生と個人とのやりとりを見ているという事実を忘れてほしくない。先生はあの子に対して厳しくしている。だったら僕らも厳しくしても構わないんじゃないかということを助長する懸念は抱きながら日々の学級経営はしていただきたい」

一方、高橋教授は学校や教育委員会の対応の遅さも問題点だといいます。

上越教育大学・高橋知己 教授
「保護者の方が学校に訴え出られて、学校はその後調査をしたと。そのあとしばらく時間が空いてしまったというところが問題をさらに悪化させてしまった、複雑化させてしまったという最大のポイントなのかなと思う」

「対応の遅さも問題点」

田上中学校であった「いじめ」。

報告書や保護者の話によると、担任の発言など男子生徒に対するいじめが始まったのは中学1年生の5月頃。2年生の8月頃から男子生徒が学校へ行かなくなり、保護者がいじめの可能性を訴えたのが10月ごろでした。

その後、学校は同級生数人に聞き取り調査を行い12月に報告書を田上町の教育委員会に提出。しかしその後、具体的な対応はとられず1年以上が経過・・・。保護者の要望を受けて学校が無記名のアンケートを行ったのが卒業式が終わった3年生の3月。第三者委員会が設置され本格的な調査が始まったのは年度が明けた7月でした。

男子生徒の父
「校長先生はほかの子たちの受験とかが控えているのでということを言って、そういった理由でなかなか調査が進みませんでした」

30日以上の欠席で「重大事態」

いじめ防止対策推進法では、「いじめにより児童・生徒が30日以上学校を欠席すること」などを「重大事態」として、公立学校の場合は附属機関を設けて調査を行い、報告することなどが定められています。

男子生徒の不登校の期間は30日をはるかに超えていました。

田上町教育委員会は

第三者委員会の報告書では、「保護者から訴えがあった時点で重大事案の可能性を考え即座に教育委員会へ相談すべきだった」などとしています。また、田上町教育委員会は取材に対し「報告書を真摯に受け止める」としながら、いじめの有無などについてはコメントしませんでした。

いじめや生徒指導を研究する高橋教授。校内でのやり取りを「いじり」や「からかい」と軽くとらえることが対応の遅れにつながっていくとしています。

上越教育大学・高橋知己 教授
「子どもたち同士のからかいなんだ、いじめじゃないんだという認識を持ってしまうとこういう事案があった場合に見過ごされてしまうというのが1番危惧しているところ。不登校の原因を探って苦しんでいる子どもたちをどうやって救ったらいいのか、どういう支援が必要なのかを学校や教育委員会ぐるみで考えていくということが求められると思います」

絵を描くのが好きな男子生徒

いじめの影響で自宅の壁を殴ったり、人生を悲観するメモを書いたりしていたという男子生徒・・・。

この絵は男子生徒が好きなキャラクターを描いたもの。本来は絵を描くのが好きで社交的な笑顔の多い少年だったといいます。

男子生徒の父
「重大事態が発生した時の調査の手続きを定めているようなものを徹底して守ってもらいたいなと思いますし、いじめの被害者がどういう症状を出すのか、そのへんをしっかり把握しておいてほしい」

教員による心ない発言に加え学校などの対応の遅れも課題となったとされる今回の「いじめ」。
子どもたちのSOSにどう向きうのか。社会として考えていく必要がありそうです。


2024年3月20日「夕方ワイド新潟一番」放送より