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【特集】“銭湯承継” 休業が相次ぐ銭湯を事業承継した2人の男性 法改正で復活する銭湯も 《新潟》

2024年3月16日 19:31
【特集】“銭湯承継” 休業が相次ぐ銭湯を事業承継した2人の男性 法改正で復活する銭湯も 《新潟》
新潟市で休業が相次ぐ銭湯

後継者不足や燃料費の高騰により、公衆浴場、いわゆる銭湯の休業や廃業が相次いでいます。
そうしたなか、去年12月に法改正が行われ、親族以外にも事業を譲渡しやすくなりました。
これを活用して、いま新潟市内で2つの銭湯が復活しようとしています。

新潟市江南区の「小松湯」復活へ

大きな湯船と温かいお湯で疲れを癒す、銭湯。
しかしいま、休業や廃業が相次いでいます。

新潟市江南区で唯一の銭湯、小松湯もそのひとつ。
前のオーナーが亡くなったことで、おととし8月から休業が続いてきました。

そんな小松湯が、いま再開に向けて動き始めています。

森山章さん。
ことし5月の再オープンに向けて、準備を進めています。

森山章さん
「東区の銭湯のオーナーが自分の友人。
今後継ぐ方がいないお店が沢山あると聞いたので、自分が何か来ないかなと思った」

森山さんは、土地や建物などを前のオーナーの親族から購入。
務めていた飲食店も辞め、銭湯を継ぐことを決めました。

これから改修工事が始まりますが、小松湯の名物だった薪で沸かすお湯は守るため、ボイラーは再開後も使うつもりです。

さらに銭湯だけではなく、飲食店に勤めていた経験を生かし、焼き鳥のテイクアウトや、空いたスペースを活用してジョギングランナーの休憩所を作るなど、新しい銭湯の形を思い描いています。

森山章さん
「近所の方にも『いつやるんですか』とかお言葉をいただく。早く皆さんのためにできることを」

燃料価格高騰や後継者不足・・・ 銭湯の休業が相次ぐ新潟

小松湯のように、いま県内では銭湯の休業や廃業が相次いでいます。
新潟浴場組合によりますと、おととしの夏以降、創業70年以上の老舗3軒が相次いで休業を決めました。

新潟浴場組合理事長・千鳥湯(新潟市中央区)
熊谷孝さん
「燃料高騰が完全に引き金になりました。冬場はいくら開けても赤字」

燃料費の高騰やコロナ禍で銭湯の経営が厳しくなり、さらに後継者不足が休業に追い打ちをかけたといいます。

新潟浴場組合理事長・千鳥湯(新潟市中央区)
熊谷孝さん
「後継者がいないのが、老舗の一番の問題点だった。
新規にやろうとなると、本当にハードルが高くて、第三者というのは難しい。親族に限られていたんです」

法改正によって第三者の事業承継がしやすく

これまでの公衆浴場法では、相続人以外が銭湯を継ぐ場合は一度、廃業してから事業を譲渡し、保健所から新たな許可を得る必要がありました。
しかし銭湯の開業は審査が厳しく、実質、事業承継は行われて来ませんでした。

そうしたなか、国は旅館や飲食店などの後継者不足の解消のため、去年12月に法改正を行いました。
法改正によって廃業と新規の許可が必要無くなり、第三者に譲渡しやすくなりました。

新潟市西区の旭湯も復活へ 老朽化した建物に苦悩

いま事業承継により、再開を目指す銭湯が新潟市にもうひとつあります。
西区内野地区の「旭湯」

前のオーナーが高齢ということもあり、去年1月から休業しています。

旭湯を事業承継 稲森光太郎さん
「脱衣所が番台のおばあちゃんから丸見えの状態だった。
昔ながらの銭湯はそういう作りになっているんですけど、今回はロビーみたいに中央に
壁を作って」

この銭湯を継ぐことを決めた、稲森光太郎さんです。
週の半分ほどは、銭湯や温泉を巡っていたという稲森さん。
旭湯にも何度も足を運んでいました。

旭湯を事業承継 稲森光太郎さん
「元々週に2,3くらい温泉か銭湯に行っていて、旭湯も通ってた銭湯のひとつ。
正月明け、ちょうど1年前に行ったら休業の張り紙が張ってあった」

「ノウハウがなかった」

新潟大学の学生も多く住む、内野地区。
旭湯は学生をはじめ、多くの人に愛されてきました。

なんとか営業を再開できないか。

そこで手を挙げたのが、建築業に携わる稲森さんでした。

旭湯を事業承継 稲森光太郎さん
「大規模修繕の現場管理から、お客さんとの打ち合わせも、全部最初から最後まで
やる」

その稲森さんの目から見ても、旭湯の再開は決して楽なものではありませんでした。
老朽化した浴槽や、長年の湿気で傷んだ建物。

さらに県内では長年、銭湯の新規開業はなく、ノウハウがなかったといいます。

旭湯を事業承継 稲森光太郎さん
「60年以上、銭湯の大規模修繕工事とか新しい銭湯が作られたりとか無かった。技術がないんです、どう作るのか。材料の技術は60年で最新になっているのに、その施行の要領や手順が全く無いので、そこを考えながら、新しい技術と古い構造を合わせて作っていくというのは、難しいけど面白い」

旭湯の看板娘 91歳の前オーナーも期待

この日、工事の様子を見に来た人がいます。
前のオーナーの朝妻キヨさん、91歳。

この銭湯の看板娘でした。

前オーナー 朝妻キヨさん
「行くよって(常連の)皆が言ってるんだけど、私は番台に上がられるか、上がれないかなとは言ったんだけど、1時間ぐらいだったら」

6月のオープンを目指している、旭湯。
稲森さんは、人と人が交わる銭湯にしたいと話します。

旭湯を事業承継 稲森光太郎さん
「僕は小さい頃から銭湯に行って、隣の知らない大人の人に体を洗って入るとか、当たり前のことを教えてもらった。
そういう文化の教育がされていく場所になってほしいと思います」

新潟市で再開を目指す、2つの銭湯。
後継者不足に悩む銭湯に、新たな道を示す試金石となりそうです。