【特集】佐渡観光を「3時間から3日間へ」まちをあげた誘客とは 《新潟》
2024年夏の世界遺産登録を目指す「佐渡島の金山」
今後、観光客の増加が見込まれますが佐渡の魅力をどう伝えるのか……
島全体でどう連携するのかなど課題は少なくありません。
「3時間から3日間へ」観光客の滞在時間を延ばすため、まちをあげた準備を取材してきました。
壮大な採掘の跡が残る佐渡金山。
2024年も見事なサクラが咲きました。
金山のおひざ元・相川地区です。
山と海に囲まれ、江戸の時代、金銀山の繁栄と共にまちが形作られてきました。
この相川で地元住民を中心にまちづくりに励む団体「相川車座」
社長の雨宮隆三さんは観光客が佐渡に長く滞在する仕組みが必要だと話します。
〈相川車座 雨宮 隆三 社長〉
「3時間から3日間の観光地に。いま金山と北沢浮遊選鉱場だと正味3時間なんですけど、そこが2泊3日、3日間滞在する観光地にしていきたいな。そういう人達が再度佐渡に来て、3回訪れる観光地になって、結果的にそれが移住につながればと考えている」
2024年夏の世界遺産登録を目指す「佐渡島の金山」佐渡市は世界遺産に登録された場合、観光客が例年の1.2倍、年間約50万人になると予想しています。
宿泊者はそのうちの8割、8月のピーク時の宿泊者は1日2500人の見込みです
相川地区にある佐渡金山と北沢浮遊選鉱場跡。
周辺にはかつて鉱山の関係者が暮らしたという「京町エリア」や港まちの趣が残る「下町エリア」が広がり、古民家が多く残されています。
相川車座は歴史の息遣いが残るまち全体を堪能してほしいと考えています。
その一つが空き家となった古民家を改装した宿泊施設。
2024年夏にオープン予定で相川での暮らしそのものを体感してもらおうというものです。
さらに宿泊客には夕食時間にあえてまちに繰り出して、地域の飲食店も一緒に楽しんでもらおうと考えています。
商店街には個性豊かな飲食店が・・
〈相川車座 雨宮 隆三 社長〉
「ここが、おけさバーブンゾー、あ、ちょうどいた!店主がちょうどいました」
相川車座のメンバーが経営するバーです。
〈OKESA BAR BUNZO岩崎元吉士さん〉
「(お客さんは)ここで地元の人と仲良くなって帰るという感じで。佐渡おけさ(の練習)もやってるんで自由参加で」
こちらでは毎週水曜日の営業時間中に「佐渡おけさ」の練習が行われていて観光客も自由に参加できるといいます。
〈相川車座 雨宮 隆三 社長〉
「お酒利きながら佐渡おけさのライブを見るとか、音楽のライブを見る所ってあると思うんですけど、佐渡おけさの練習を見ながらお酒を飲むってないでしょ?これがおもしろいなと思ってて」
この日その古民家の宿泊施設が完成したというので棟梁に案内してもらうことに……。
古さが際立っていた空間が、もとの素材を生かしつつモダンな雰囲気に生まれかわりました。
こちらの古民家「清水家」は焼き物を生業にしていたため、ここで焼かれ保管されていたレンガを入口の床に敷き詰めてあります。
中でも特徴的だという部屋がこちら……建物の中に重厚な石造りの扉が……。
階段を上がり蔵を抜けると、そこには梁と土壁を生かした広々とした部屋が現れました。
もともとは作業場や物置として使われていたといいます。
観光客に佐渡に長く滞在したいと思ってもらうために宿泊施設は重要です。
〈相川車座 雨宮 隆三 社長〉
「我々が今回作っている施設って古民家4棟で客室は7室しかないので、これ自体で数をカバーできるものではないので、量より質で満足できる方、コアなファンを増やしていくような取り組みができていけばいいなと」
佐渡市の試算では世界遺産に登録された場合8月のピーク時の宿泊者は1日2500人……
昨年度の調査では客を迎える宿泊施設について島全体で1日4000人の宿泊が可能として、ピーク時でも受け入れに余裕があるといいますが、雪国の離島ならではの悩みも……
〈相川車座 雨宮 隆三 社長〉
「実際に現状、相川で起こっていることは、ピークのシーズンになるとなかなか宿泊施設が取れないとか。一方で増やしすぎてもなかなか冬場はそこまで稼働しないとなると維持するのが難しいですよね。その辺をどれくらいバランスを取ってやるのかがポイントになると思う」
そして、もう一つ……
観光客の滞在時間が延びれば島内を移動する交通手段、2次交通も必要です。
島を1周するには最短でも車で7時間。
主な移動手段はレンタカーとバスです。
今後レンタカーの需要は高まることが予想されます。
そこで市内のレンタカー店では……
〈佐渡汽船レンタカー〉
「2024年も何台か増車して100台を超える形で保有台数は増やす予定ですし、来年再来年と計画を立てて増やしていきたいと思っています」
〈トキレンタカー〉
「世界遺産になることを見据えて2年前ぐらいから軽自動車や小型車も取り扱うようになりました。」
市によると観光客向けにレンタカーを扱う事業者数はコロナ禍前の2019年は17軒でしたが、2023年は22軒に増えました。
全体の車の保有台数は繁忙期で500台余りだといいます。
一方で、不安も……
〈トキレンタカー〉
「冬場はまったく出なくなるので、経費も掛かるので、たくさん抱えればいいというわけではない」
〈ニコニコレンタカー〉
「この場所だと限度があってお店の中の広さや駐車場など。それでこれ以上増やすことが難しくなっている」
いま、島内の路線バスは運転士不足の影響などから減便傾向に……
新潟交通佐渡によると4月から、休日は11路線中7路線が予約があった時だけの運行となっています。
そこで佐渡市は今年度、国の補助事業を活用し両津港と相川をつなぐライナーバスの運行と相川地区内の周遊バスの運行を予定しています。
世界遺産登録それに伴う観光客の受け入れへ……
地元では急ピッチで準備を進めています。
〈相川車座 雨宮隆三 社長〉
「(登録されれば)新潟県にとって初の世界遺産だと思いますから、佐渡島民はもちろん、相川住民はもちろん、新潟県民にとっても誇りとなるような佐渡島・佐渡金山というふうになっていったらなと個人的には思います」
2024年の夏にも「佐渡島の金山」に「サクラサク」のか……
2024年7月にインドで開かれるユネスコの世界遺産委員会で登録の可否が示される見通しです。