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【特集】伝統手芸の「刺し子」に新感性 震災の避難所生活で誕生「大槌刺し子」岩手・大槌町

2024年7月11日 18:51
【特集】伝統手芸の「刺し子」に新感性 震災の避難所生活で誕生「大槌刺し子」岩手・大槌町

 特集です。岩手県大槌町で「刺し子」と呼ばれる日本の伝統手芸を手掛けている女性たちがいます。震災後に始まった刺し子の取り組みが、新たな感性でいま、生まれ変わっています。

 世界的な評価を受けている、アパレルブランドのファッションショー。ジャケットに施してあるのは、「刺し子」と呼ばれる伝統手芸です。

黒澤さん
「四角く切った古布を当ててパッチワークっていう感じで、この縁をチクチクする」
佐々木さん
「古かったものを刺し子で手直しして、それが新たにこういう形になるわけじゃないですか。ジャケットだったり帽子だったり。それを見た時はすごい所に関われてるなと誇りになりますよね」

大槌町にあるアパートの一室。刺し子を手掛けているのは、元気いっぱいの地元の女性たち。「大槌刺し子」と名付け、2011年に誕生しました。佐々木さんと黒澤さんは、刺し子職人の傍ら、プロジェクトの運営を担っています。

女性たち
「すごく刺し子のおかげで、色んなこともできるし、嬉しいです」「刺し子というのは昔からあるもので、それが今はファッションの方に行ってるっていうのはちょっと想像できなかったですね」

黒澤さん
「一番最初に避難所から始まったのは、これですね。かもめ布巾ですね。この刺し子というのは大槌で根付いていたものではないので。震災後に一人の男性がボランティアで避難所に入ったんですけど、男性は外に行って仕事がある。けど女性の方は肩身の狭い思いをしてるとういうことで、針と布さえあれば静かにお仕事ができる。刺し子がいいんじゃないかということで、それが始まりです」

 2011年5月、一日中避難所で過ごす女性たちのために大槌刺し子は誕生しました。その後技術が評価され、大手企業とのコラボ商品も制作。さらに、ファッションブランド「KUON」を手掛ける藤原新(あらた)さんが大槌刺し子に可能性を感じ、アパレル制作を依頼するようになりました。

 大槌刺し子のメンバー大澤美恵さん。プロジェクト発足当初から携わっている一人です。

大澤さん
「頼もしいとは思ってましたよ。どこまで伸びていくのかなという感じはありましたけどね。じゃあ次やってみればどういうものができるのかなという楽しみもあるし。だからそういうのがあるから続けて来れたのかなと思いますけどね。若い人たちがこうやってやるかって言われればね、どうなんだろう?やってほしいとは思いますよ」

 発足から13年。最盛期は30人いたメンバーも、現在はおよそ15人に。プロジェクトの継承が課題となり、新型コロナの影響で仕事も減少する中で転機が訪れました。

佐々木さん
「大槌刺し子がちょっと、売上とかお仕事の数とか減ったりとか。その時の様子をすごく心配してくれた藤原さんが、何とか自分がどうにかして盛り上げたいということで 企画の中でブランドとして『サシコギャルズ』っていうものが立ち上がりました」

 今年新たに誕生した「サシコギャルズ」というブランド。共にアパレル製品を作ってきた藤原さんの主導で、新たな可能性に着手。その第一弾としてスニーカーに刺し子を施し、先月、佐々木さんと黒澤さんが韓国でデモンストレーションを行いました。

黒澤さん
「靴が欲しくて来ましたという日本の観光客の方も来て、すごく感動しました」♪佐々木「オシャレな方たちがすごく出入りが多かったんで、そこでどうアピールしたらいいのかなって不安でいたんですけど、意外とフレンドリーに寄ってきてくれて見てくれたりとか、すごく嬉しくて、すごく楽しかったです」

 釜石市にある「釜石商工高校」。実はここで、今年5月から大槌刺し子が課題授業の選択コースになり、佐々木さんと黒澤さんが講師として生徒を指導しています。

佐々木さん
「今ね、クッションのカバー。当てる色だったり生地の柄だったり、思ってもいない使い方っていうか『あ~こういう使い方あるんだ』と思いますよ。参考になる部分はありますよ」

 専攻しているのは、総合情報科の3年生8名。およそ半年間の授業の中で、刺し子の技術やファッションなどを学んでいきます。

生徒
「刺繍が施されているスニーカーをあまり見たことがなかったのですごくオシャレだなと。自分が思いつかないデザインとか見た時に、自分もここに携われたらきっと楽しいんだろうなと思って」

Q「もともと大槌刺し子というものは知ってたんですか?」
生徒「おばあちゃんのお手伝いをしていて、知ってました。ずっと前からカモメのコースターとかがすごくかわいくて、手伝っているうちに自分もやってみたいなと思って。大人になってまたやることになったら、少しでも力になれれば やってみたいなって」

黒澤さん
「やっぱりみんなに広めるには若い人たちの力が必要だと思って」
佐々木さん
「次はこの子たちに、下の世代に託したいですね。講師として一緒に参加してもらわなきゃだめだね。まずは自分たちの周りから元気になれるように続けていけたらいいけど」

 様々な支えがあり、歩み続けてきた13年。大槌刺し子は新たな感性で、次の世代へとそのバトンをつないでいきます。