【つなぐ】鋳物のまちで半世紀親しまれたスナック喫茶店を事業承継 地域おこし協力隊の女性奮闘 岩手・奥州市
10月のシリーズ「つなぐ」です。最終回は、奥州市水沢で半世紀親しまれたスナック喫茶を引き継いだ女性の奮闘に密着しました。
太田和美さん
「変なお店ですかね。だってスナック喫茶なのに、もつ煮がでるんですよ?」
奥州市水沢に9月オープンした「鐵(てつ)喫茶アウン」。お店を切り盛りするのは、太田和美さんです。宮城県仙台市出身の太田さんは、奥州市出身のご主人の縁もあり、南部鉄器を普及させる地域おこし協力隊として2023年、水沢に移住しました。
太田さん
「羽田地区唯一のカフェがあったんですけれども、そこの店主の方が閉店するんだっていう話をされたので、(店が)無くなることっていうのはとても町の機能としてもすごい危機感を感じたので、ママからももしやってみるんだったらっていう言葉を頂いて事業承継をさせていただく流れになりました」
以前のお店「スナック喫茶チロル」。開業以来、地域住民や鋳物職人の憩いの場として長年愛されてきました。その50年もの歴史に幕を閉じると聞き、太田さんは事業承継する決心をしました。
太田さん
「私の代からはちょっとカフェ要素を多めに、女性一人でも入りやすい雰囲気になったらいいかなっていうので結構明るめに。ここの町のみなさんに安心して日常使いしていただくって言うのは、まずベースとしてあるんですけど、若い職人さんたちとかも増えてきているのでそういう多世代の職人さんの交流の場だったり」
アウンでは南部鉄器を使って調理、提供しています。おすすめはこの「もつ煮」チロル時代にオーナーが出していた味を引き継ぎ、名物料理として提供されています。
太田さん
「常連の方がみなさんママのおいしい料理を食べてきているので、とても舌が肥えているというか。そういう方にはその都度『味どうです?』とか『近づきました?』とか聞いたりとか地元の方と味を調えていけるという環境が今あるので、それもやっぱりありがたいなと思ってます」
ナポリタンやフレンチトーストなどカフェらしいメニューも並びます。こちらの男性は、受け継がれる味、「もつ煮丼」を注文。
お客さん
「うまいですよ。これ。もつ煮丼なんて初めて食べました。結構かまなきゃいけないのかなと思ったんですけど、本当にさらさらいける。けっこう飲み込むからヤバイかもしれないです」
太田さんは店や味だけでなく、元のつながりも継承し、地域に愛されるお店作りを目指しています。中にはこんなお客さんも。
太田さんとお客さん
「2000円?1900円だっけ。ずっとまっすぐ行けばいいのだから」
Q、常連さんからいろんな頼まれごともあるんですか?
「水沢競馬場に馬券を買いに行けないので代わりに行ったりとか、前のママの時からの通常業務です」
9月オープンしたばかりの「アウン」ですが、少しずつ地域になじみ始めているようです。
10月20日、金ケ崎で「オーワングランプリ」が開催されました。今年11回目となるこのイベントは金ケ崎町の飲食店を中心に24店舗が軒を連ね、おいしかったお店に投票、グランプリを決めるというもの。
太田さんのブースもありました。が、そこにいたのは。
太田さん
Q(お疲れ様です。太田さんですよね?)「太田です」
Q(なんでこんな格好してるんですか?)「南部鉄器の地域おこし協力隊に着任するにあたってせっかくずっとパフォーマンスしてきたので何か一個キャラクターになるようなものをパフォーマンスでできたらいいなって思って考えました」
太田さんは、元々、芸術に精通しており、自身の身体を使った表現を学んでいました。その知識と表現力を生かし、「鉄瓶婆(てつびんばばあ)」として白湯を無料で配り、南部鉄器の普及活動を続けています。
太田さん
「ちょっと奇抜で怖いけど、インパクトはかなりあると思うので、いい客寄せパンダになれればいいかなと思いました」
地域のために伝統と文化をその身一つで普及させようと奮闘する太田さん。受け継ぎ、そして、その先に伝えるための活動はこれからも続きます。
太田さん「白湯のまいん」
太田さんは事業承継するにあたり、飲食の免許も今年取得。おばあちゃんになるまで続けたいと意気込んでいます。「鉄瓶婆」歴1年と少し、徐々に認知され始めてきました。水曜・日曜定休日、スナックの形態も残っているので、お酒もいただけます。