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挑戦③盛岡の老舗しょう油店 県産木材活用し新たな食品づくり 

2024年12月19日 18:33
挑戦③盛岡の老舗しょう油店 県産木材活用し新たな食品づくり 

 今月のシリーズ「挑戦」。3回目は老舗のしょう油店が、新たに取り組んでいる県産の木材を活用した食品づくりです。木のフレーバーやシロップを使ったドリンクなどを取材しました。

浅沼さん「今 こうじ菌の胞子がたくさん、います」

 顕微鏡を覗いているのは、浅沼 宏一さん。創業から110年の老舗、『浅沼醤油店』の 4代目です。しょう油造りには、昔ながらの「木の桶」を使っています。

浅沼さん
「木の中に、微生物も住み着きますし、そこから作られる味の奥行きみたいなものは、やっぱりすごく、扱っていても難しくもあり、楽しいなという風に思う部分でもあります。だから先ず、FRPのタンクの中で、落ち着くまで発酵させてから、木の桶に移すと、いう風な形で、ウチではしょう油を作っています」

 工場にある、研究室。しょう油に関わる研究を続けてきた浅沼さんは、今年9月、農学の博士号を 取得しました。

浅沼さん
「しょう油を作る課程で発酵させるんですけれども、その技術を応用しながら、しょう油の発酵に必要な乳酸菌や酵母、こうじ菌の管理などを行っています。ここではあの、発酵食品を中心に新しい食品の開発を、いろいろ手掛けています」

 浅沼さんが新たに取り組んでいるのは、県産の木材を使った食品作り。そのきっかけは、2年前に遡ります。

 「県工業技術センター」から、岩手の木のフレーバーを活用した食品開発を依頼されたのです。「食品技術部」では、原材料や試作品を分析してデータ化します。

県工業技術センター 晴山聖一さん
「木の香りを付けるというのは、お酒ではよく使われる技術なんですけれども、食品に使っても面白そうだなって事で、浅沼社長に紹介したのが、始まりになります。社長が、いろんな樹種を持ってくるので、これも?っていうのも持ってくるので、浅沼社長と一緒にできれば、岩手の木をアピールした商品として、全国に売っていければなとは思っております」

 杉の木を「焙煎機」に入れて、加熱します。時間が経つごとに、杉の木の香りがどんどん変化してゆきます。加熱した木材は、その種類によって様々な香りを醸し出します。

浅沼さん
「焙煎して出てくるものは甘い香りだったり、苦みが出てきたり、そういうものを使う用途に合わせて、シロップに移し込んで、それを食品に利用していくという風な形になっています」

 築250年の元の自宅を2023年9月、全て県産材でリノベーションした直営店。
『浅沼醤油店』の醤油はもちろん、自社で作った様々な商品が並びます。中には、木から香りを抽出した"森の恵み"も。

 甘い香りの「イタヤカエデ」のシロップは、パンケーキや お料理に。
「プリン」にすると、まるで バニラのような香りが口の中に広がります。
天然由来の甘い香りは、ドリンクでも楽しめます。

 盛岡駅前にある『ベアレンビール』の 直営店。ここでは、『浅沼醤油店』が作った「イタヤカエデ」と「アカマツ」のシロップを使ったドリンクを提供しています。
県産の「イタヤカエデ」と「コナラ」から抽出したシロップは、ほんのりレモンの香りも漂います。
もう1つは、「アカマツ」から抽出した液に、ショウガ、香辛料などを加えた「ジンジャーエール」です。

 この日 初めて、県産材を使ったドリンクを口にするお客さん。お味は、いかがでしょう?

お客さん
「ちょっと辛みもある生姜の香りが美味しいです」「甘い感じなんですけど、スッキリした感じですね」「ちょっと木から…っていうのは。私たちが普段食べてるジンジャーよりも、木の方が、もっとジンジャーをこう訴えてくるような感じ?します」「いくらでも飲める感じ」

 浅沼さんは、新たな商品も手掛けました。「イタヤカエデ」の香りと「白樺」の樹液、そして安比高原のミルクで作った、「白樺プリン」です。

浅沼さん
「白樺とかも、雪のような高原の綺麗な木肌。安比のイメージに凄くよく合っているし、本当に木からとった甘い香りで作ったような、焼き菓子とか、そういったものが広がっていくと、地域の香りを残した特産品というものが、世の中に広がっていくんじゃないかなと思います」

 岩手の豊かな森林資源を活かした食品づくり。いつの日か、全国に伝える、地域の お土産に。「浅沼」さんの挑戦は、続きます。

「白樺プリン」は、21日から販売開始予定です。また来年2月には、「東京インターナショナル・ギフト・ショー」に木の香りを使った製品を出品するということです。

最終更新日:2024年12月19日 18:33