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20年以上メダカ保護の活動 庄内町のNPO法人 子どもたちと命のバトンつなげる

2025年1月7日 17:37
20年以上メダカ保護の活動 庄内町のNPO法人 子どもたちと命のバトンつなげる

山形新聞・山形放送が輝かしい功績をあげた個人や団体をたたえる「山新3P賞」。3回にわたりことしの受賞者の横顔を紹介します。1回目は「平和賞」に輝いた庄内町のNPO法人「家根合生態系保全活動センター」です。

家根合生態系保全活動センター大井庄一理事長「この田んぼで小学生が田植えと稲刈り。そしてメダカを池から捕まえて放して、増えた個体を水路に流して。またその水路でメダカを捕まえてメダカ池に持っていって増やすようにしている」

庄内町家根合地区のNPO法人「家根合生態系保全活動センター」は、地区の豊かな生態系を未来に残そうと子どもたちと田植えや稲刈りなどの農業体験や、魚の学習会などを行っています。
2013年10月にYBCニュースで放送した「魚の学習会」の様子です。

参加した子どもは「とても大きいのがいた。小さいのもみんな取っていてもう1回来てみたいと思った」

農業用の水を貯めた池で、ともに絶滅危惧Ⅱ類の「ウケクチウグイ」や「カワヤツメ」が見つかりました。
生態系保全活動センターが発足したのは、22年前の2003年5月。立ち上げたのは前の理事長だった佐藤昭一さん(86)です。

佐藤昭一さん「これが学校に最初に行ったときに子どもたちが自分たちの思いを語ってくれた時のメモ」

きっかけは、1996年に家根合地区で始まったより効率の良い田んぼを作る圃場整備事業でした。自然に近い小さな水路は失われ、メダカなど水辺の生き物にとっては住処が奪われる事態に。
そこで立ち上がったのは余目第一小学校の子どもたち。当時、総合学習の中で地域に生息する魚などの絶滅危惧種について学んでいました。そして、1999年、地区の大人たちも巻き込んで貴重なクロメダカなどを捕獲し、別の池に移す「メダカSOS救出作戦」に乗り出したのです。

佐藤昭一さん「池がちょうどできた時に八幡地域でも圃場整備やっていた。田んぼからあの辺は山手に近いものだからいろいろな石がどっさり出てきた。それで県は、『もし使うのなら運んで来るからあげるよ』とそれで池を整備したんです」

造園土木の資格を持つ佐藤さんが設計し、自ら石を組み上げ、2003年、水辺の生き物の生態を守る通称・メダカ池が完成しました。
それから20年ー。佐藤さんは毎年、子どもたちと農業体験やメダカの保護活動などを続けてきました。おととしには理事長の職を地元で農業を営む、大井庄一さん(68)にバトンタッチしました。

家根合生態系保全活動センター大井庄一理事長「こういう活動ができるのも小学校やいろいろな団体の協力があってできる。協力していただきながら活動を続けていきたい」

子どもたちが田植えをしてメダカと共に育った「はえぬき」の稲は、みんなで手刈りした後、杭に掛けて自然乾燥させます。こうして出来上がるのが農薬を減らすなどして育てた特別栽培米「めだか米」。さらには地元で100年以上続く老舗の酒蔵で、純米酒「メダカライス」として販売され、いずれも人気を呼んでいます。

佐藤佐治右衛門杜氏遠田嘉人さん「甘みと香りがいつもより高いようなお酒に仕上がっていると思う。県外の人にも知ってもらい全国の皆さんにも飲んでもらいたい」

佐藤昭一さん「子どもたちの夢がつないでくれるので絶やすことはできない。そんな思いで地域の方々も全員協力してくれるのは大変ありがたいことだと思います。」

降りしきる雪の中でじっと春の訪れを待つ絶滅危惧種・クロメダカなどの水辺の生き物たち。住民の取り組みによって豊かな環境を維持する家根合地区の「メダカ池」は命のバトンをつなげています。

最終更新日:2025年1月7日 19:16