【独自】中国とロシアが狙う、ドルに代わる“新たな世界”…課題山積で経済が低迷している中国、今後の頼みは日本の補助金?国内で抱える深刻な問題を徹底解説
3月5日に開幕した中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)。李強首相は「中国国民はいかなる困難や障壁も乗り越える能力がある。中国の発展は必ず勢いを増し、未来は希望にあふれている」と、先行きに楽観的な見方を示したものの、今年の経済成長率の目標は去年と同じ5パーセント前後に据え置き、「目標を達成するのは容易ではない」とも述べました。経済が低迷するなど、中国国内には深刻な問題が山積みに…。世界が注目する中国の動向を「読売テレビ」特別解説委員・高岡達之が徹底解説します。
“海外脱出”が続出⁉中国の不動産不況が、日本・タイ・アメリカに影響を…
(「読売テレビ」特別解説委員・高岡達之)
「中国は、3月5日から日本で言うところの国会の本会議にあたる、全人代(全国人民代表大会)が開かれていて、習近平政権の強権的な姿勢が垣間見られるような政策が次々と発表されています。この間も春節がありましたが、中国は最近なかなか『以前のように“爆買い”しない』とか、『景気が悪い』とか、『トランプ前大統領の返り咲きを怖がっている』だとか諸説ありますが、人口が多い巨大な国だけに、一つ問題を抱えると我が国にもすぐに影響があるわけです。そこで、今回は中国が“今”抱えている問題を整理しながら、日本にどういう影響が来るのか?ということを探りたいと思います。結構、日本も“あて”にされているみたいですよ」
(高岡)
「中国の景気が悪いというのは、不動産、日本と違って建物の売買ということになりますが、それがなかなか上向かないことが理由だと言われています。簡単に言うと中国の不動産不況は『売れない』『買えない』『借りられない』の3つです。最後の『借りられない』は不動産の『賃貸が借りられない』ではありません。日本と違って中国では、不動産を担保にお金を借りて株を買うなどの投資をして、そのお金で海外旅行などに行くのですが、不動産の値打ちがないので『お金を借りることもできない』結果、金融が滞っているということです」
(高岡)
「中国政府は手を打っていまして、2月20日、住宅ローンの金利を下げました。それでも、不動産が一番売れる春節の間でも、なかなか売れるようにはなっていません。中国は、国内でお金が動かないということになると、人が海外に出て行ってしまうんです。これが、1年間に100万人を超えているといわれています。14億人中の100万人だから少ないということではなくて、その100万人の中には大金持ちがたくさんいます。中国の不動産は値上がりしないんですが、実はタイの不動産は中国の人が買って、すごく上がっています。東京はすでに上がり尽くしました」
(高岡)
「そしてこちらの写真は、アメリカのメキシコとの国境の写真です。ボートに乗っているのは中国人です。トランプ前大統領がメキシコとの国境に大きな壁を作って、中南米からの移民を入れないというニュースが、以前数多く報道されていましたが、今その主役は、中国の人になっています。入国許可証を求められない中国と親しい中南米の国に、あまりお金持ちではない人が一旦入国して、そこから現地のアメリカを目指す人たちと一緒に移動して、無理やり壁をよじ登ってアメリカに入ろうとしている中国人がものすごく増えているそうです。中国は、一人っ子政策も長くて教育費も高い、生活も厳しいとなると、アメリカに憧れるんですよね。しかし、お金持ちの様に行けるわけでもない。特殊な技術を持っているわけでもないとなると、中南米の人と一緒に国境の柵に殺到するということで、アメリカで問題になっています」
もう一つの問題「少子高齢化」対策を巡り、人民大反発 日本企業にも影響
(高岡)
「さらに中国では、日本でも問題になっている“少子高齢化”の波が一気にきました。日本以上の強烈なスピードで少子化も高齢化も進んでいます。60歳以上の高齢者が一気に3億人に迫っています。ということは、働き手がいなくなるということになります」
(高岡)
「そんな中国が求めた解決策の一つが、高齢者が転倒してもケガをしないように『エアバッグの付いた服』です。高齢者がけがをしなければ病院が助かるわけです。他にも介護用のロボットなど、ロボットを導入して人手不足を補おうとしています。そこで注目されているのが“日本製ロボット”です。日本製は性能が良いので、中国は介護用だけではなく産業用ロボットを多く買おうとしていますが、問題はその先で、技術が盗まれないだろうかという心配があります」
(高岡)
「また、日本と同じように『定年延長』の制度を導入しようとしていますが、中国ではそう簡単にはいきません。中国の定年の年齢は、男性は60歳ですが、女性は職種によって50歳と55歳です。今、中国のほとんどの家庭が共働きをしているのですが、それはなぜかというと教育費が高いからです。中国政府は塾を廃止したんですが、それでも教育費がかかります。その共働きの両親に代わって、祖父・祖母が子どもの“送り迎え”や食事の準備ということをするために、伝統的に事務職の女性は55歳、工場勤務の女性は50歳で定年という制度が決まっていたんです。これを政府としては65歳まで定年延長したかったのですが、『早めに年金をもらって、元気なうちに孫の面倒を見ようと思っていたのに、なんだ国は』と多くの人が大反対しました。しかし、ついに中国政府は、来年(2025年)から65歳に一気に持っていくことになりそうです」
(高岡)
「そうすると、日本企業の中国に事業所を構えているところにも影響が出てきます。今までは、60歳で定年なので、入れ替えて若い人をどんどん雇いました。今後は、定年が延長になるので、その分働かせなければいけませんので、新しい戦力が入ってこない、雇いづらい、ということも日本企業にとっては一つのリスクになっています」
中国期待の電気自動車も、弱点発覚で販売低迷 頼みは「日本の補助金」⁉
(高岡)
「中国は、電気自動車で儲けていると言われていますが、春節のときに、皆さんものすごく懲りました。『冬の電気自動車はあてにならない』ということです。中国は補助金で国中の人が電気自動車をいっぱい買いました。ところが、まだまだ、今の中国の技術のバッテリーだと冬に弱いんです。さらに春節ということで、節約のために家族で1台の車に乗って帰省したのですが、何億人も車で一斉に帰省したので、充電スタンドが大変なことになってしまいました。中国のSNSには「6回充電するのに8時間位かかった」とか「バッテリー切れで帰られない」などと書き込みも。そこで、『電気自動車をなんとか日本に買ってもらいましょう』となったのですが、日本には優秀な自動車メーカーがあるのでなかなか買ってもらえない。なので、配達用だとか商用車として売り込んでいます。これらは、日中使用するので夜間にゆっくり充電できます。ところが、買ってくれる企業はみんな東京です。というのも、日本でも電気自動車はなかなか普及していませんので、充電スタンドもほとんど東京にしかないからです。そういう事情もあり普及はこれからということになるのですが…実はちょっと首をかしげざるを得ない状況になっています」
(高岡)
「ヨーロッパでは中国製の電気自動車は輸入できませんし、アメリカでも国内製造の車しか売ることができませんが、日本では中国製の電気自動車でも『補助金』を出すんです、中国の会社に。1台当たり約70万円が中国の企業に行くんです」
ドルに代わる“新しい世界”?ロシアと手を組み、狙う不況脱却 その切り札は“デジタル人民元”
(高岡)
「中国政府は、何とか経済の打開策を探っています。それがロシアです。前は仲が悪かったのに新たなお客さんです。ロシアは、ウクライナの戦争で経済制裁を受けています。しかし中国はロシアの石油をバンバン買います。中国は、欧米が買ってくれないガソリン車を、西側から車を売ってもらえないロシアに輸出しています。電化製品も中国からロシアにいっています。場合によっては、ロシアはそれを分解して半導体を兵器に転用しているともいわれています。そういう意味でこの二つの国はとても関係が良い状態です」
(高岡)
「一方で、中国とロシアはアメリカと仲が良くない。まだ、ドルが世界の貿易の中心だからです。そこで中露が今後を見据えるのは、『人民元のデジタル化』です。『財布いらない、銀行いらない、国際的なお金のやり取りも手数料なしでできますよ』という技術は中国の方が一歩先んじています。そこで、中国とロシアはドルを使わずに人民元で取引しているようです。今、ロシアのルーブルは弱いですから。そうなると、ドルを使わない“新しい経済圏”ができるかもしれません」
(高岡)
「そして、日本も気を付けないといけないのは、中国方式だとすべてをスマホでコントロールするということです。スマホには、銀行口座や信用情報、秘密などが全部入っています。それが国に全部見られてしまいます。そういう“新しい世界”が皆さんは良いですか?」
(「かんさい情報ネットten.」2024年3月5日放送)