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【独自解説】外交と国防を担うトップが相次いで解任、習近平政権に今何が⁉日中首脳会談では、習主席のホテルに小走りで駆け付ける岸田首相の姿が…中国の思惑とは?

2023年11月22日 16:00
【独自解説】外交と国防を担うトップが相次いで解任、習近平政権に今何が⁉日中首脳会談では、習主席のホテルに小走りで駆け付ける岸田首相の姿が…中国の思惑とは?
“安全重視”習近平政権に何が?

 今、中国で、習近平国家主席の“お気に入り”とされた閣僚らが次々解任されています。その裏には、実質ナンバー2とされる「習近平 代理人」の存在が…。さらに、日中首脳会談では岸田首相が異例の“小走り移動”。中国が演出したかったものとは?そして、悪化する中国経済に習国家主席が打った一手とは?講談社「現代ビジネス」・近藤大介編集次長の解説です。

揺れ動く中国国内…相次ぐ閣僚“謎の解任”

 今、中国で閣僚の解任が相次いでいます。まずは、習近平国家主席のお気に入りだったという秦剛(しんごう)氏(57)。2022年12月に外相就任、2023年3月に国務委員に就任しましたが、7月に外相を、10月には国務委員を解任されました。外務省報道官や式典を取り仕切る儀典局長、駐米大使などを歴任し、「(午前)2時の秦剛」というあだ名がありました。

Q.「午前2時の秦剛」とは?
(講談社「現代ビジネス」・近藤大介編集次長)
「儀典局長をしていたとき、彼自身が習国家主席の格好をして、他の職員にバイデン米・大統領役になってもらい、米中首脳会談などの練習をしていました。どのように発言するか、どのようにお茶を出すか、どの部屋で誰がどう動くかなどをセッティングする責任者で、予行練習を本番さながらにやっていたといいます。まるで映画のセットのようにやって、それが午前2時までかかってしまうので、『午前2時の秦剛』と呼ばれ、皆に恐れられていたということです」

Q.そういうところが、習国家主席のお気に入りだったのですか?
(近藤氏)
「その通りです。習国家主席からすると、大変そつがなく物事が進むので非常に気に入って、次の外務大臣にしたいということで、その前に箔をつけさせるため若くしてアメリカ大使にして、2022年12月に外務大臣に就任させました」

 そんな秦剛氏に「愛人報道」が出ました。お相手は香港フェニックスTVキャスター・傅曉田(でんぎょうでん)さん(40)で、北京語言大学・北京大学を卒業し、ケンブリッジ大学で修士号を取得するなど正にエリートです。2022年11月には、父親不明の男児を出産。2023年3月19日、傅さんとみられるSNSに誕生日を祝うメッセージが載せられていましたが、その日は秦剛氏の誕生日でした。現在は消息不明ということです。

Q.「傅さんがアメリカと繋がっているのではないか」という話があるのですか?
(近藤氏)
「そうです。彼女には一度会ったことがあるのですが、重慶出身で上昇志向が強く、ジャーナリストにはあまりない強い香水をつけていたのが印象に残っています。また、2022年11月に産んだ男児の顔が写真で出ているのですが、秦剛氏にそっくりですので、父親が秦剛氏だという可能性が高いと思います。さらに、彼女が英・ケンブリッジに留学していたとき、ケンブリッジ大学に彼女の名前がついた庭ができたり、アメリカでは豪邸を提供されたりしています。そういったことから、米英のスパイなんじゃないかという噂がずっとつきまとっていた方で、秦剛氏がそんな方と愛人関係になって男児も誕生したとなれば、中国の最高機密が米英に漏れるんじゃないかと疑われ、取り調べに入ったということではないか、というのが最も有力な説です」

 さらに10月、革命指導者の子息「紅二代」で、習国家主席の信任が厚いとされていた李尚福氏(65)も国務委員・国防相を解任されました。長年装備関係の仕事に就き、中国航空宇宙分野の専門家です。海外メディアによると、「汚職がらみ」で当局が調査しているということです。

 「ロケット軍」関係者にスパイ疑惑報道があり、李尚福氏が責任を取らされたとみられています。2023年7月、「ロケット軍」の前司令官が突如交代となりましたが、アメリカ留学中の息子にスパイ疑惑が。さらに、「ロケット軍」の初代司令官も消息がわかっておらず、李氏が2022年まで務めていた「装備開発部」の高官8人も調査対象になったということです。

Q.軍の機密だから、より重い罪ということですか?
(近藤氏)
「そう言われていたのですが、最近は説が変わってきています。『ロケット軍』前司令官の場合は確かに情報がアメリカに洩れていて、いわゆるスパイ容疑がかかっています。しかし、李尚福氏の場合は、3月20日に習国家主席がモスクワでプーチン大統領と会談した際、プーチン大統領から『以前、中国とロシアの軍備品の大掛かりなビジネスのときに、中国側で大きな腐敗があって、ロシアが大変な目に遭った』と文句を言われ、習国家主席はそのことを知らなかったので徹底的に調べさせたら、プーチン大統領が言った通り大掛かりな不正・汚職が出てきて、その時の責任者が後方支援部隊の副司令員をしていた李尚福氏でした。一説によると習国家主席の幼馴染という話もありますが、彼が責任者だったので、このまま黙認できないと降ろされたという説が出ています」

 相次ぐ高官らの解任の裏に、習国家主席の「代理人」がいるのではといわれています。それは、党中央政治局常務委員・党中央弁公庁主任という異例の兼任をする蔡奇氏(67)です。党・政府の高官や秘書を取りまとめる立場で、党内序列は5位ですが、近藤氏によると「実質ナンバー2」。これまで福建省・浙江省などで要職を歴任してきた習国家主席を、その両方で部下として支えました。近藤氏によると、習国家主席が最も信頼を置く部下で、高官を監視する「習近平 代理人」だということです。

Q.一般的には習国家主席の次は李強首相だと思うのですが、蔡奇氏が実質ナンバー2ということで、根底には「権力争い」のようなものもあるのでしょうか?
(近藤氏)
「3月、3期目の習近平政権が発足したときに、習国家主席が短いスピーチをしました。そこで『安全を第一にやっていく』と宣言しています。『安全』というのは、“自身の政権の安全”という意味です。その責任者に蔡奇氏を置いているので、あらゆる分野で『安全』を徹底的に最重要視していくという姿勢です。李強首相は経済問題の責任を負っていますが、その上に蔡奇氏が担っている『国家の安全』『自分の政権の安全』が来ます」

Q.粛清されたと思われる人たち・消息不明の人たちは、どこに連れて行かれて、どんなことになっているのですか?
(近藤氏)
「中国は、そのあたりの法律はきっちりしていて、拘束されて起訴・逮捕されてから取り調べを受けて、判決を受けて刑が決まります。二審制ですが、幹部の場合は一審の判決をほとんどの方が受け入れ、大体は10年~15年の刑期になります。ただ、高官の場合や額が大きかったりすると、『無期懲役』や『執行猶予付き死刑』というのもあります」

相手国首脳を自分のホテルに来させる“皇帝”習主席「『上司と部下の関係』だと見せている」

 日本時間11月17日、岸田文雄首相が日中首脳会談に向かう際、交通渋滞で遅れが発生し、車を降りて「異例の小走り移動」になりました。近藤氏によると、「会談場所は、習国家主席の宿泊ホテル。第三国の国際会議の場において、多くの場合、相手国の首脳を自分のホテルに来させて、首脳会談を行う」といいます。

 約1年ぶりの日中首脳会談でしたが、「戦略的互恵関係」を再確認したものの、中国は日本側からの要求には具体的な答えを出しませんでした。また、近藤氏が気になったのは、「中国メディアは、会談中にメモを取る岸田首相の姿を報道した」ということです。

Q.自分の泊まっているホテルに呼びつける、メモを取る岸田首相の写真を大きく報じるということは、「中国が日本に頼まれて会談してあげた」「中国のほうが格上だ」という演出ですか?
(近藤氏)
「それもあると思いますし、習国家主席は現代の“皇帝様”ということになっていますから、皇帝様は動かず、外国の使節団が挨拶に来るわけです。握手の際も自分は動かず、相手の首脳に歩いて来させるのは、そのようなところを見せる意図があります。また、“メモする姿”に関してですが、中国では習国家主席が何かを話すと、それは『重要講話』と呼ばれ、周りの人は全員メモを取らなければいけません。それを外国の首脳にもさせることによって、『上司と部下の関係』だと見せているのだと思います」

 一方で「米中首脳会談」は、習国家主席が6年ぶりに訪米し、1対1で散歩も交え約4時間行われました。米中両軍の軍同士の対話の再開などを合意し、習国家主席は「米中は、ライバルよりもパートナーになるべきだ」と話しました。

 しかし、米中首脳会談後の記者会見で、バイデン大統領は質問に答える形で「共産主義国家を運営する人物という意味で、彼は独裁者だ」と発言。これに対し中国・外務省の報道官は、「このような発言は極めて間違っており、無責任な政治操作であり、中国は断固反対する」と批判しました。

 そんな習国家主席が強く希望したのが、「約600万円の夕食会」でした。アメリカのビジネスリーダーと習国家主席との夕食会が開かれ、習国家主席と同じテーブルだと、参加費は4万ドル(約600万円)だったということです。そこには「アップル」ティム・クック氏、航空機メーカー「ボーイング」スタンリー・ディール氏、半導体メーカー「ブロードコム」ホック・タン氏らの名前が挙がっています。

(近藤氏)
「企業経営者としては、習国家主席の発言によって自社の株価が上がったり下がったりするものですから、『600万円なんて安いものだ』と思ったと思います。その一言、どういう方向で行くのか、そこが知りたいわけですから、トップと話さなければ意味がないと。習国家主席としては、中国経済が本当に悪く、これ以上アメリカの投資が減ると中国経済は底をつくため、アメリカが中国から逃げると世界も逃げていきますが、逆にアメリカが戻ってくると世界も戻ってくると、そういう発想だったと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年11月21日放送)

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