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【衆院選ルポ】“保守分裂”の和歌山2区 裏金問題・世襲・くら替え・野党も乱立…混迷の選挙戦始まる

2024年10月15日 13:33
【衆院選ルポ】“保守分裂”の和歌山2区 裏金問題・世襲・くら替え・野党も乱立…混迷の選挙戦始まる
 10月27日に投開票が行われる衆議院選挙が15日公示されました。自民党の二階俊博元幹事長が長年議席を守ってきた今回の和歌山2区には、二階氏の息子である新人と、自民党を離党した参院議員による“保守分裂”に加え、立憲民主党と共産党、諸派の新人3人が挑む、まれに見る“混迷”の選挙戦となります。

 今回の衆院選では「10増10減」の選挙区調整で、和歌山県の選挙区は1減となり、長年にわたって二階俊博元幹事長が守ってきた旧和歌山3区は、和歌山市など北部の3市を除いた全市町村を選挙区とする新たな和歌山2区に再編されました。

 和歌山2区に立候補したのは届け出順で、日本共産党の新人・楠本文郎氏(70)、立憲民主党の新人・新古祐子氏(52)、自由民主党の新人・二階伸康氏(46)、諸派で政治団体代表の高橋秀彰氏(42)、無所属で参院議員だった世耕弘成氏(61)の5人。

■世耕氏「離党して裸一貫」二階氏「議席守らせて」

 内閣官房副大臣、経済産業大臣、自民党参院幹事長を歴任し、“安倍派5人衆”の一人だった世耕弘成氏は、裏金問題で「離党」し、無所属でくら替え選挙を決意しての出馬となります。世耕氏は15日、集まった支援者を前に第一声で、「私は政治的責任の最も重い『離党』を、一言も文句も言わずに受け入れた。離党して裸一貫の私ではあるが、和歌山県民の皆様から与えていただいた26年の政治経験がある」と強調しました。

 一方、二階元幹事長の後継として出馬した三男の二階伸康氏の出陣式には、自民党の国会議員や県議らが駆け付けました。二階氏は第一声で「私と相手候補(世耕氏)のポスターが同じ家の軒先に張られている。本当に申し訳ない思いです」と頭を下げた上で、「一極集中を止めて、地方に元気や活力が戻る政治をなしたい。自公を中心とする議席を守らせてください。切にお願いします」と声を張り上げました。

 裏金問題で不出馬となった現職の“世襲”候補と参院の実力者の“くら替え”出馬により、和歌山2区は異例の“保守分裂”選挙となりました。

■新古氏「裏金ブラザーズに挑む」楠本氏「有権者が審判を」高橋氏「本当の保守といえない」

 “裏金問題”に端を発する注目の選挙選に、野党候補はいずれも厳しく糾弾し、「保守王国・和歌山」の牙城を崩そうと選挙戦に挑んでいます。

 立憲民主党から出馬する新人の新古祐子氏は、JR海南駅で第一声をあげました。新古氏は、「二大巨頭と言われる“裏金ブラザーズ”に対して、私一人で戦いを挑むような形になっているが、本当に和歌山の今を変えていきたい。和歌山を変えなければ日本は変わらない」と立候補の理由を述べました。その上で新古氏は、「防災・減災に取り組み、 女性が活躍する社会にしていきたい」と決意を語りました。

 共産党から出馬する楠本文郎氏は御坊市で街頭に立ちました。楠本氏は裏金問題について、「(刑事裁判では)会計責任者に禁錮3年という刑を課しながら執行猶予をつけた。執行猶予の理由は、派閥の長や幹部の指示に基づいてやらなければならない立場にあったからだ。裁判所では認定できなかったが、(衆院選は)有権者が審判を下す場ではないか」と訴え、「政治献金を企業・団体から頂かない共産党に力を貸してほしい」と語りました。

 諸派で政治団体代表の高橋秀彰氏は、「自民党政権は、日米安保ができた後、アメリカの出先機関のような振る舞いをずっとしてきたように思います。国防の観点から言っても、アメリカの言うことを丸呑みしてしまうような政権に日本のこれからを託すことはできるのか」と現政権の体制を批判しました。高橋氏は農業の自給率向上や自然との共生を訴え、「他の候補者は、私からすれば本当の保守とは言えないのではないか」と語りました。

 12日間という短期決戦の火ぶたが切られ、投開票は27日に行われます。