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【独自解説】“悲劇の夫”から一転、被告人に…元長野県議“妻殺害”初公判 新たに検察が矛盾・不倫・借金を主張…争点となる“4つのポイント”と無罪主張する「被告の“犯人性”」は―

2024年10月21日 20:00
【独自解説】“悲劇の夫”から一転、被告人に…元長野県議“妻殺害”初公判 新たに検察が矛盾・不倫・借金を主張…争点となる“4つのポイント”と無罪主張する「被告の“犯人性”」は―
元長野県議会議員・丸山大輔被告

 2021年、長野・塩尻市で妻を殺害したとして、殺人罪に問われている元長野県議会議員・丸山大輔被告。妻を亡くした“悲劇の夫”から一転、容疑者となった丸山被告。初公判では「妻を殺害したのは私ではありません」と無罪を主張し、起訴内容を否認。裁判の争点になる“4つのテーマ”とは?そして無罪主張する「被告の“犯人性”」とは?元検事・亀井正貴弁護士の解説です。

■「何があったか知りたい」“悲劇の夫”が一転、被告に…事件のあった夜、一体何が―

 裁判は4つのテーマで審理されます。1つ目は『所在・移動の状況』です。

 2021年9月29日午前6時45分、長野・塩尻市の丸山被告の自宅兼酒造会社の事務所で、妻・希美さんが倒れているのが発見されました。当初、丸山被告は「事件前日の夜は長野市の議員会館に宿泊していた」と説明。しかし、捜査関係者によると、丸山被告の車が塩尻市にある自宅に戻っていたことが、防犯カメラの映像などから判明しました。

 丸山被告は「妻の死亡の連絡を受け自宅に帰った」と主張していましたが、捜査関係者によると、車での移動が防犯カメラなどに映らないように、幹線道路などを避けて迂回していた可能性もあったといいます。

 妻・希美さんの最後の姿を、家族が事件当日の午前0時に確認しており、検察は、午前1時44分~午前3時4分の間に、丸山被告が希美さんを殺害したとみています。

■部屋は大きく荒らされた様子はなかったが…妻が倒れていた付近には土足で歩いた後も

 2つ目のテーマは『現場の状況・痕跡』です。

 当時、丸山被告は「長野市内にある議員会館に宿泊していた」と説明しており、自宅にいたのは希美さんと2人の子どもだけだったとのこと。希美さんが倒れていたのは金庫の近くで、部屋は大きく荒らされた様子はなかったものの、土足で歩いた跡があり、何者かが侵入した可能性もあるとみられています。

Q .例えば、自宅に取り引き先の方たちが、不特定多数出入りしているということになれば、複数の足跡があるということですよね?
(元検事・亀井正貴弁護士)
「そうですね。指紋も一応検証して、色んな指紋が出てきていると思います」

■不倫、借金…明らかになった被告と妻と妻の家族との関係「不倫を続けるなら議員を辞めろ」

 3つ目のテーマは『動機』です。

 検察側は冒頭陳述で、丸山被告が妻の実家から、約4000万円の借金があり、それとは別で県議会議員選挙の際に数百万円の支援も受けていたと指摘。いずれも返済はしていないとのことです。

 また、県議会議員に初当選した直後の2015年ごろから、Aさんという女性と不倫関係にあったことも明らかになりました。この不倫については妻や妻の両親に知られていて、資金援助をしている妻の父から「不倫を続けるなら議員を辞めろ」 と迫られていたといいます。

 検察側は、丸山被告の心境として、「不倫相手・Aさんとの結婚を望んでおり、関係は続けたいが妻と離婚すると、妻の実家から借金の返済を求められたり、次の選挙で支援を受けられなくなるため、離婚できる状況ではなかった。妻を殺害する以外に道はなかったのではないか」と主張しました。

 一方、弁護側は不倫の事実は認めるも、「Aさんには、すでに別の男性と交際していたという事実もあり、女性問題発覚後も夫婦間に特段のトラブルはなかった。借金を巡り妻の実家と揉めることもなく、そもそも動機はない」と主張しました。

■事件1年後のインタビューでは「あまり何も変わりない」被告の言動が大きな争点に?

 4 つ目のテーマは『事件前後の丸山被告の言動』です。

 事件から1年後の2022年9月、逮捕前のインタビューで丸山被告は、「今の気持ち…?うーん、そうですね。皆さん1年って言いますけど、なんて言うんでしょうね。あまり何も変わりなくといいますか」と語り、妻・希美さんについては「不思議で仕方ない。思い当たることがなさ過ぎて、(希美さんは)恨みを買うようなタイプでもないし、何があったか知りたいという気持ち」と語っていました。

■「“犯人っぽいな”だけではダメ」直接証拠がない中、検察側に求められる“犯人性”の立証

 そして、2024年10月16日、長野地裁で初公判。裁判長から「起訴内容について間違いはないか」と問われた丸山被告は、「妻を殺害したのは私ではありません」と起訴内容を否認しました。弁護人も、「丸山被告に殺害は困難。犯行の時間帯、被告は議員会館にいてアリバイがあるため被告は無罪である」と主張しています。

 裁判について、元検事・亀井正貴弁護士は「争点は、丸山被告の“犯人性”。被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実を、検察が立証できるかがポイント」だと話しています。

Q.被告が「妻の死亡の連絡を受け帰宅した」と言っている一方、被告の車が自宅に戻っていることが判明しているなど、矛盾がありますが、これだけでは証拠としては弱いですか?
(亀井弁護士)
「弱いです。これによって『犯人ではないのか』と大概の人は思いますが、これは民事事件ではないので、民事事件と刑事事件の立証責任は違います。合理的な疑いを入れない程度に立証する必要がありますから、“犯人っぽいな”だけではダメです」

Q.『妻の実家から借金』や『不倫関係』も、殺害動機としては弱いですか?
(亀井弁護士)
「“動機として推認し得る”ということです。事件が起きたのは深夜なので、第三者である犯人がそこにいたと証明しなければいけません。『偽装工作によって、その場に被告人がいたのではないか』というところまではいけますが、他の可能性を消す必要があります。他の家族ではないとか、恐らく恨みの関係はなかっただろうということで、消去されていくとは思いますが、物盗りの可能性は消しきれません。抵抗がないといっても色んなやり方がありますので。『間違いない』という所まで証拠があるかどうかです」

Q.証人が相当出てくるという話がありますが、もし丸山被告が犯人であるとするならば、強力な証人とはどういう人でしょうか?
(亀井弁護士)
「丸山被告から犯行前後の供述などを聞いた人がいれば、強力な証人になります。ただ、決定的な人は恐らくいないと思います」

 丸山被告が無罪を主張し直接証拠がない中、検察側は今後どのように丸山被告の犯行を立証するのか―。判決は、2024年12月23日に言い渡されます。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年10月16日放送)

最終更新日:2024年10月21日 20:00