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【速報】“ALS患者嘱託殺人”医師の控訴審始まる「患者の願い叶えるため」二審でも改めて無罪主張 尊厳死・安楽死に「適法に実現できる仕組みが提示されていないことが問題」

2024年10月2日 10:41
【速報】“ALS患者嘱託殺人”医師の控訴審始まる「患者の願い叶えるため」二審でも改めて無罪主張 尊厳死・安楽死に「適法に実現できる仕組みが提示されていないことが問題」
大久保愉一被告

 難病のALSを患う女性に依頼され殺害した罪などに問われ、一審の京都地裁で懲役18年を言い渡された医師の男の控訴審が、2日午前10時から大阪高裁で行われ、弁護側は「一審は(個人の尊厳と幸福追求権を保障する)憲法13条の適用の仕方が根本的に間違っている」などとして、改めて無罪を主張しました。検察側は控訴の棄却を求め、裁判は即日結審しました。

 医師の大久保愉一被告(46)は、知人の元医師・山本直樹被告(47)とともに、2019年、全身の筋肉が衰える難病・ALSを患う林優里さん(当時51)から依頼を受け、薬物を投与して殺害した嘱託殺人の罪のほか、2011年には山本被告の父親・靖さん(当時77)を殺害した罪などにも問われています。

 京都地裁で開かれた一審で、大久保被告は、林さんの嘱託殺人について起訴内容を認める一方、「林さんの願いを叶えるために行ったこと。目の前で困っている林さんを放っておくことができなかった」などと述べ、弁護側は「林さんの選択・決定を否定し、個人の尊厳と自己決定を保障する憲法13条に違反する」などとして無罪を主張。山本被告の父親の殺人についても「やっていない」と主張し、全面的に争っていました。

 これに対し、京都地裁は今年3月、林さんへの嘱託殺人について、「社会的相当性は到底認められず、真に被害者のためを思って犯行に及んだとは考え難く、利益を求めた犯行」と指摘。山本被告の父親の殺害についても、診断書を偽造していることや山本被告とのメールのやり取りなどから、山本被告らと共謀して殺害したと認定した上で「生命軽視の姿勢は顕著で強い非難に値する」として、大久保被告に対し懲役18年の実刑判決を言い渡しました。

 その後、大久保被告は判決を不服として大阪高裁に控訴していました。

■尊厳死・安楽死に弁護側「適法に実現できる仕組みが提示されていないことが問題だ」

 2日、大阪高裁で始まった控訴審にスーツ姿で法廷に姿を現れた大久保被告。

 弁護側は、嘱託殺人について「自らの生き方の決定を考えるときに生の終わり方と切り離して考えることはできず、一審判決は憲法13条の適用の仕方が根本的に誤っている。また、林さんが主治医や近親者に伝えて自らの希望を実現することが困難な中で、大久保被告らに依頼したのであって、適法に実現できる仕組みが提示されていないことが問題だ」などと述べ無罪を主張しました。

 また、山本被告の父親を殺害した罪についても「山本被告と違って大久保被告には動機がなく、具体的な殺害方法についても共有されていなかった」などと無罪を主張しました。

 大久保被告は弁護人が控訴趣意書を読み上げる間、かけていた眼鏡を外してうつむきながら目を強く閉じ、時折目元をハンカチで拭く仕草を見せました。

 一方、検察側は大久保被告側の控訴を退けるよう求め、裁判は即日結審しました。判決は11月25日に言い渡される予定です。

 共犯とされる山本被告は、父親を殺害した罪について、一審の京都地裁で懲役13年を言い渡され控訴・上告していましたが、ともに退けられて刑が確定しているほか、林さんへの嘱託殺人の罪について、一審で懲役2年6か月を言い渡され、大阪高裁に控訴しています。